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なぜ今インフルエンザが流行するのか? インフルエンザワクチンはいつ接種すればよい?

倉原優呼吸器内科医
(写真:イメージマート)

インフルエンザの流行が例年より早く、一部の地域で「注意報」が発出されています。新型コロナの波の背景でじわじわとインフルエンザが増加し、両方がおさまらないまま新学期となり、学校を中心にしてインフルエンザが急増している状況です。インフルエンザのワクチン接種はいつから始まるのか、またいつ接種すればよいでしょうか。

なぜこの時期にインフルエンザが流行?

新型コロナの感染対策により、さまざまな感染症の流行が長らく抑えられていたため、前回の冬もインフルエンザは小波で終わりました。

そのため、インフルエンザウイルスに対して十分な免疫を持たない人が多くなっています。

このタイミングで、新型コロナの「5類感染症」への移行、感染対策の緩和、新学期の開始など、色々な条件が相加・相乗的に作用して、流行にいたったと考えられます。

9月22日に報告された定点医療機関あたりの感染者数を見ると、インフルエンザよりもまだ新型コロナのほうが実数としては多いものの(図1)、インフルエンザは「注意報」レベルの水準に到達した地域もあり図2)、このまま大流行につながらないか警戒されます。

図1.新型コロナの定点医療機関当たり報告数(9月22日報告分、参考資料1より引用)
図1.新型コロナの定点医療機関当たり報告数(9月22日報告分、参考資料1より引用)

図2. インフルエンザの定点医療機関当たり報告数(9月22日報告分、参考資料2より筆者作成)
図2. インフルエンザの定点医療機関当たり報告数(9月22日報告分、参考資料2より筆者作成)

また、新型コロナとインフルエンザの同時検査が普及したため、インフルエンザがこれまでよりも診断されやすくなりました。夏風邪で済ませていたものが、医療機関で新型コロナあるいはインフルエンザと診断される事例も多く、例年より「取りこぼし」が少なくなっています。

今後、インフルエンザが爆発的な波になるかどうかは分かりませんが、じわじわと増え続けて、さらに冬にもう一度新型コロナのダブル流行が来るのかと思うと、医療機関としてはあまり明るい見通しは持てません。

決して気を抜くつもりはありませんが、「そろそろ波の合間に一息つきたい」と思っている医療機関は多いはずです。

令和5年度のインフルエンザワクチン

さて、今年度のインフルエンザワクチンの供給はどうなっているでしょうか。

コロナ禍では立ち上がりが遅かった年もありましたが、今年は9月末時点で年度内の供給量の半数を上回る約1,660万本(成人換算で約3,320万回分)が出荷される予定となっています。

全体の供給予定量は、3,121万本(成人換算で約6,242万人分)が供給される見込みです。

十分量が確保されているものの、新型コロナのパンデミックが本格的になった令和2年度のように希望者が増えると、不足傾向になるかもしれません(図3)。

図3.インフルエンザワクチンの累積供給量(週次)(参考資料3より改変引用)
図3.インフルエンザワクチンの累積供給量(週次)(参考資料3より改変引用)

すでにインフルエンザワクチン接種の予約を始めている医療機関もあり、10月には多くの医療機関で接種され、11月中にすべてが供給されるという形になります。

例年は12月中旬頃までに接種したほうがよいとされていましたが、現在流行が止まらずに学級閉鎖の混乱を招いているので、高齢者、基礎疾患のある人、妊婦などは早めに接種することがすすめられます(図4)。

図4.インフルエンザワクチンの接種が特に推奨される方(筆者作成)
図4.インフルエンザワクチンの接種が特に推奨される方(筆者作成)

新型コロナワクチンと同時接種は可能?

単独で接種した場合と比較して、有効性や安全性が劣らないことから、新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンの同時接種が可能になっています。そのため、現在流行期にあるこの2つのワクチンについては、間隔を気にせずに接種していただいて問題ありません。

2つを同時接種しなければならないわけではなく、あくまで「間隔を空けなくても大丈夫」という意味です。

というのも、インフルエンザワクチン以外のワクチンについては、新型コロナワクチンと同時に接種できないためです。片方のワクチンを受けてから2週間後にもう片方のワクチンが接種できます。

ちなみに、あまり知られていませんが、新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンは、厳密には接種方法が異なります。新型コロナワクチンが筋肉注射、インフルエンザワクチンが皮下注射です。これにはいろいろな問題があり、背景などは以下の参考記事をご覧ください。

■参考記事:

・ワクチン同時接種による医療事故に注意 実は接種方法が違う新型コロナワクチンとインフルエンザワクチン(URL:https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/ee27413410a91080a3d99eb82be67a41fb02c2ab

・インフルエンザワクチン接種 世界では筋肉注射が勧められるが日本はいまだ皮下注射(URL:https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/1c496bc433a7f48b8b99a5993d6f5e4830194a37

なお、将来的には、インフルエンザと新型コロナの混合メッセンジャーRNAワクチンが登場すると予想されています。

(参考)

(1) 新型コロナウイルス感染症に関する報道発表資料(発生状況等)2023年6月~(URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00438.html

(2) インフルエンザに関する報道発表資料 2023/2024シーズン (URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou01/houdou_00014.html

(3) 2023/24シーズンのインフルエンザワクチンの供給等について(URL:https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/001138928.pdf

呼吸器内科医

国立病院機構近畿中央呼吸器センターの呼吸器内科医。「お医者さん」になることが小さい頃からの夢でした。難しい言葉を使わず、できるだけ分かりやすく説明することをモットーとしています。2006年滋賀医科大学医学部医学科卒業。日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医・代議員、日本感染症学会感染症専門医・指導医・評議員、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本結核・非結核性抗酸菌症学会結核・抗酸菌症認定医・指導医・代議員、インフェクションコントロールドクター。※発信内容は個人のものであり、所属施設とは無関係です。

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