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守護神・上原の懸念が的中。フル充電のカブスに、朝帰りのレッドソックスが2安打完封負けした月曜日。

一村順子フリーランス・スポーツライター
遠投でコンディショニングに務めるレッドソックス 上原浩治

屈辱のノーヒットノーランは阻止したものの…

レッドソックスは30日(日本時間7月1日)本拠地フェンウェイパークでカブスとの交流戦3試合をスタートした。初戦のこの日は、相手先発のアリエッタに八回二死まで無安打に抑えられ、ノーヒットノーラン達成まであと「4アウト」となった所でドルーが右前打を放って、一矢報いたが、実はこの対決、両軍のコンディショニングには雲泥の差があった。

「まあ、でも(ボストンには)朝3時か4時につくだろうからねぇ。カブスはきょう休みなんでしょ。うーん、何とも言えないですね」

これは、前日午後8時から全米スポーツネット「ESPN」でテレビ中継されたヤンキースとのナイターを終えたレッドソックスの上原浩治投手(39)のコメントだ。自身は連夜の好セーブで今季18セーブ目を挙げ、宿敵に勝ち越したチームは上昇気流。報道陣から「いい形で本拠地に帰れますね」と振られた後に出たのが上述の反応。守護神はコンディションの違いに一抹の不安を指摘していたのだ。

1990年から始まったESPNの「サンデーナイトベースボール」は全米どの場所にいても、東時間の午後8時に試合が始まる。西海岸では午後5時だが、東海岸では通常より試合時間が1時間遅く、超遅出の試合となる。試合後、チームのチャーター便がボストンに到着したのは午前3時。選手が眠りについたのは明け方だった。このテレビ中継試合は1球団最大シーズンに最大6試合入ることが可能だが、ヤンキースやレッドソックスなど人気球団は例年全枠埋まるのに比べ、視聴率の取れないチームはまずほとんど入らない。レ軍はこの日、試合前の練習でも、投手ストレッチの開始を通常より1時間遅くし、打者は室内ケージで打っただけ、という軽めの調整だった。

82年ぶりに日曜日の休日を満喫したカブス

一方で、ボストンで異例の“日曜オフ”を満喫したのはカブスだ。

「日曜日に試合がないなんて初めての経験。気分も体もゆっくり休めたよ」と前日試合がなかったカブスのヒンスキーは休養十分だ。球団は2月に日曜日のナショナルズ戦を前日土曜日のダブルヘダーに前倒しすることを発表した。毎年恒例、6月最終日曜日は世界各地で同性愛者など性的少数者の文化を称えてプライド・パレードが開催される。カブスの本拠地リグレーフィールド周辺は人出が多く、混雑が懸念されたのがその理由だ。カブスがシーズン中の日曜日に試合をしなかったのは1932年6月19日以来、実に82年ぶり。チームは土曜日のダブルヘダー後、ボストン入り。遠征地で丸一日の休養日を過ごし、打倒・レ軍に英気を養っていたのだった。

主砲オルティスも嘆き節

「今年の日程はマジ、キツいよ。メジャー18年間でこれ程、タフなスケジュールはないね」と首を振るのは、主砲のオルティス。優勝した翌年となる今年は開幕からホワイトハウスへのオバマ大統領訪問など、記念行事も多かった。試合後のファレル監督は、相手先発に敬意を払いつつも、「せっかく東地区のゲーム差が縮まって、上昇ムードを掴んでいたのに、流れに乗り切れなかったのが残念だ」と苦しい表情だった。

せっかく2日連続で東地区上位3チームが連敗した中、レッドソックスはヤンキースに連勝。さぁ、これからという時に、ナ・リーグ中地区最下位のカブスに水を差された完封負け。日程を敗戦の言い訳にはできないし、移動という点では東地区より西地区のマリナーズの方が厳しいという意見もあろう。とはいえ、「サンデーナイト」が、特に開始時間が遅くなる東海岸のチームにとっては、コンディショニングの上で選手に大きな負担となっているのは事実だろう。アリエッテの高速スライダーに翻弄され10三振を喫したレ軍打線。相手の球威に押されっぱなしのバットスイングをみていると、疲労の色は否めない。残念ながら、上原の悪い予感が的中する形となってしまった。

フリーランス・スポーツライター

89年産經新聞社入社。サンケイスポーツ運動部に所属。五輪種目、テニス、ラグビーなど一般スポーツを担当後、96年から大リーグ、プロ野球を担当する。日本人大リーガーや阪神、オリックスなどを取材。2001年から拠点を米国に移し、05年フリーランスに転向。ボストン近郊在住。メジャーリーグの現場から、徒然なるままにホットな話題をお届けします。

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