夏にもラニーニャ発生か きまぐれバーテンダーとラニーニャの共通点
温暖化をエスカレーターに例えるなら、エルニーニョやラニーニャはその上を飛び跳ねているようなもの。
アメリカの気象官がこのようなことを言いましたが、まさに言い当て妙で、エルニーニョやラニーニャは、温暖化というコンスタントな気温上昇に一時的なアップダウンをもたらします。
ものすごくシンプルにいれば、エルニーニョの時は世界気温が高く、逆にラニーニャの時は低くなりやすくなります。
現在起きているエルニーニョは、観測史上5本の指に入る強力なものだったと、世界気象機関が発表しました。そうした理由もあって、昨年2023年は世界のあちこちで高温記録が生まれ、世界気温は観測史上1位の高さになりました。
しかし、この高温記録を生み出す一因となったエルニーニョも、現在はピークを過ぎて終わりに向かおうとしています。そして夏にも、ラニーニャが姿を現すかもしれないようです。
エルニーニョとラニーニャ
そもそもエルニーニョとラニーニャとはどのような現象なのでしょうか。
太平洋ペルー沖の海水温が一定期間、例年よりも一定程度高いか低い状態をさします。平年よりも高かったらエルニーニョ、低かったらラニーニャです。この海域の水温の上がり下がりが、大気に作用して陸の気温にも影響を与えます。
何がエルニーニョを発生させるのでしょう。解明されていない点が多いのですが、太陽の黒点数や、巨大な山火事の煙との関係に着目する興味深い説も発表されています。
1週間で3度以上下がった
現在のペルー沖の海水温はどうなのでしょう。水温が急激に下がっているようです。
タイトルの2つの図は、海面水温の平年差を表しています。2月末頃の時点ではペルー沖の海水温が平年よりも高かった(オレンジ色)のに、およそ1週間で急に下がった(青色)ことが分かります。
また上図の1週間の海面水温の変化を見てみると、その差は3度以上だったことも分かります。
ラニーニャ発生の可能性
アメリカ海洋大気庁は、4月から6月ごろにはエルニーニョが終わり平常状態に戻り、夏にはラニーニャが始まる可能性があると予想しています。
ラニーニャになれば世界気温がやや下がる傾向にあるので、今年は観測史上もっとも暑かった2023年より気温が下がるかもしれないというホッとする予測も出ています。
ただしラニーニャとなれば、エルニーニョとはまた異なる極端な気象に悩まされる可能性も出てきます。
たとえば以前オーストラリアでは、エルニーニョで干ばつ、山火事となり凶作に見舞われました。その後ラニーニャが起きて大雨が降り、豊作になったのはいいのですが、今度はネズミが大量発生して、結局穀物はネズミにさんざん食い荒らされ、農家の人々は引き続き苦労を強いられました。
きまぐれなバーテンダー
ラニーニャが起きると日本の天候はどうなるのでしょう。一般に、夏は太平洋高気圧が張り出して猛暑、冬は西高東低の気圧配置が強まって寒くなる傾向があります。
ただし、エルニーニョやラニーニャは、予想通りの天候をもたらさないことも少なくありません。
先のアメリカの気象官は、これを「時おり期待していたものを持ってこないバーテンダー」に例えています。
もし、自分が行きつけのバーに行ったら、バーテンダーがいつものドリンクを用意してくれると想像するでしょう。ところがそんな予想に反して、ときどき突拍子もないドリンクを持ってくる、そんなバーテンダーがいるとします。
エルニーニョやラニーニャはまさにそのような感じで、予想に反して全く異なる天候が起きることもあるのです。
そもそも気象は様々な要因が絡んでいるので、ペルー沖の海水温の変化だけではなく、その他諸々の事情によって変わるというわけです。
想定外の天候となることもある。だからこそ、普段から身の回りで何が起こりうるかを考え、対策を講じておくことが重要だと思います。