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J1残留争いの救世主になり得る7人

河治良幸スポーツジャーナリスト
(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

Jリーグも終盤戦、J1の優勝争いやJ2、J3の昇格争いも注目されますが、クラブの行く末にも関わる残留争いは気になるところです。

J1は勝ち点39で12位のセレッソ 大阪、勝ち点37で13位の柏レイソルも残留が確定的とは言えませんが、現実的に残留争いの渦中にあるのは勝ち点34で14位のガンバ大阪から下位の7クラブでしょう。

筆者の評価と期待から、J1残留がかかるラスト6試合で救世主的な活躍が期待できる7人をピックアップしました。

※J2編:J2残留争いの救世主になり得る8人

福田湧矢(ガンバ大阪)

今シーズン大きな飛躍が期待されながら負傷で長期の離脱を強いられたサイドアタッカーですが、前節の浦和戦で後半途中から左サイドハーフとして出場し、躍動的な仕掛けや飛び出しで抜群の存在感を示しました。

シュートは決まらなかったものの彼の勢いが結果として浦和側の攻撃を限定させたこともあり、1−1の引き分けに貢献するとともに、今後の完全復活へ大きな期待を持たせる復帰戦でした。

試合後には「楽しかったですサッカー」と清々しい表情でコメントした福田にはガンバの沈滞ムードも一変させる心身の推進力を感じさせます。ポテンシャル的には代表レベルに達してもおかしくないタレントですが、まずはガンバを残留、さらに本来あるべき場所へ上昇させる力になれるか注目です。

中山克広(清水エスパルス)

新加入ながらロティーナ監督に右サイドハーフとして開幕スタメンで起用され、第2節には移籍後の初ゴールを記録するなど順風満帆に見えましたが、チームが良い結果につながらず。

第21節の大分戦と第22節の徳島戦ではベンチ入りしながら使われず、第24節のガンバ大阪戦で途中出場したのを最後にベンチから外れていました。前節の柏戦は久しぶりのベンチ入りで、後半15分から登場して高精度のクロスを前線のコロリに送るなど、さっそく存在感を示しました。

終盤には左サイドバックに移りましたが、やはり攻撃的なポジションで縦の突破力を生かすのがベストでしょう。戦術な適応力には問題がないと思われるだけに、ロティーナ監督がどう評価して起用して行くか。対戦相手から見れば怖い存在であることに間違いないでしょう。

一美和成(徳島ヴォルティス)

ガンバ大阪では停滞するチームの中で奮闘が目立ったものの、なかなかゴールに直結する仕事ができないまま夏に移籍しました。新天地の徳島では首位の川崎フロンターレとの試合で、セカンドボールから豪快なシュートを決めて能力の高さを示しました。

現在は4ー4ー2を採用している徳島で大型FWの垣田裕暉、身体能力の高いムシャガ・バケンガ、技巧的な宮代大聖といったタレントがいますが、ターゲットマンからシャドー的な働きまでできる一美は幅広くチャンスに絡めるタイプで、前からの精力的なディフェンス、ショートカウンターからのフィニッシュにも期待です。

平岡大陽(湘南ベルマーレ)

高卒ルーキーとしてこれまで4試合のリーグ戦に出場していますが、3ー5ー2の攻撃的なMFとして非凡なセンスを見せています。前節の鳥栖戦ではショートカウンターからスルーパスで町野修斗のゴールを演出しました。

中盤で相手を外す技術が高く、ハードワークや球際の強さをベースとする湘南でも異彩を放っていますが、大きな課題となっているのが2列目からシュートに持ち込むシーンの少なさ。そこからゴールを決めることも大事ですが、相手にとって怖い存在になって行くことで、周りの選手を自由にする役割も求められてきます。

リズムを作り、攻撃を活性化する仕事は目を見張りますが、救世主的な存在になるにはさらに決定的なシーンを作り出し、絡んでいけるかが鍵になりそうです。

渡邉新太(大分トリニータ)

前節の仙台戦でPKを含む2ゴールを挙げて、勝利のヒーローになりましたが、実に開幕戦以来のゴールでした。もちろん、新潟時代から彼を知るファンからすれば、こんなものじゃないという評価でしょう。

一人で仕掛けて決め切るタイプではないので、周囲との関係が生命線になりますが、2列目から1トップの伊佐耕平と2シャドーの相棒である町田也真人とうまく絡んでのフィニッシュワークが印象的でした。

長沢駿のようなオーソドックスなターゲットマントのコンビも魅力的ですが、相手のディフェンスに隙があれば狭いところでも入り込んで行けるフィニッシャーであり、徳島、福岡、ガンバと続く相手のディフェンスから抜け目なくゴールを奪えれば、ここ最近ロースコアの試合に勝てている大分にさらなる勝ち点をもたらせる可能性は高いでしょう。

渡邉千真(横浜FC)

ここ3試合で4得点を記録しているサウロ・ミネイロなど、ここに来て前線が充実してきている横浜FCですが、やはりボックス内で無類の勝負強さを発揮できる渡邉千真の働きなくして、上位との対戦も残す試合で残留に十分な勝ち点を稼ぐことは難しいかもしれません。

いわゆるツボを心得ている選手で、試合の流れに応じてクロスに飛び込んで合わせることも、ミドルレンジから技巧的なシュートを狙うこともできるのは心強い限り。おそらく途中出場が多くなりますが、味方も相手も全体的に間延びしたり、選手交代が多くなる中で、抜け目なくゴールネットを揺らす姿は容易にイメージできます。

横浜F・マリノス、FC東京、ヴィッセル神戸、ガンバ大阪、そして横浜FCと、J1で積み上げたゴール数は100を超える”カズマックス”。今回は救世主の候補をピックアップしていますが、昔ながらのファンからすれば期待というより信頼に近いものがあるかもしれません。

富樫敬真(ベガルタ仙台)

前節は残留争いのライバルである大分に完敗してしまったベガルタ。ここまで得点数が最も少ない24ですが、16位の徳島まで勝ち点6の差を考えると、勝ち点1を粘り強く積み重ねて行くだけでは届かないので、やはりゴールが必要になってきます。

夏に長崎から加入した富樫は手倉森監督の教え子でもあり、シンプルなクロスやラストパスも直接ゴールに押し込める能力は特筆に値します。また2トップの相棒を選ばず、誰と組んでもポストプレー、スペースメイク、フィニッシュと多様な仕事ができることも中盤のサポートが限られるベガルタでは頼りになります。

心配なのはゴールを記録した柏戦で負傷交代したこと。代表ウィーク中に練習復帰をしたという情報もありますが、前節はベンチ入りせず。1週間空いて迎える広島戦で、ここから救世主になり得る富樫が復帰できるかは大きな注目ポイントです。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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