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J2残留争いの救世主になり得る8人

河治良幸スポーツジャーナリスト
(写真 : アフロスポーツ)

Jリーグも終盤戦、J1の優勝争いやJ2、J3の昇格争いも注目されますが、クラブの行く末にも関わる残留争いは気になるところです。

J1編では「J1残留争いの救世主になり得る7人」と題して、残留争いの最中にある7クラブから終盤戦の注目選手をピックアップしましたが、J2でも8クラブから残留の鍵を握る選手たちを紹介します。

中野誠也(大宮アルディージャ)

ジュビロ磐田の下部組織から筑波大を経てプロ入りしたストライカー。昨シーズンは磐田で8得点を記録しましたが、昇格を目指す大宮に移籍。新天地でのさらなる飛躍が期待されましたが、コンディションの問題からか夏場はベンチ外が続き、復帰後も霜田正浩監督のもと、終盤からの出場が続いていました。

転機になったのが第33節の金沢戦で、それまでと同じく終盤に投入された中野は裏のボールをGKが弾いたこぼれ球に鋭く反応して、無人のゴールに流し込み、土壇場でシーズン5点目となる同点ゴールを決めました。

実に20試合ぶりのスタメンとなった千葉戦では左ウイングからクロスに飛び込んで合わせたり、カットインからチャンスを作るなど奮闘。結局ゴールが無くチームも敗れましたが、大宮でも一番乗れている選手であることを証明するゲームでした。しっかりと点に絡める選手は使い続ける霜田監督でもあるだけに、ここから2、3試合で目に見える結果を出せるかどうかはチームにとっても中野にとっても大事な時間になりそうです。

進昂平(ザスパクサツ群馬)

浦和レッズのアカデミー育ちですが、大卒でJ3のY.S.C.C.横浜で結果を残して、昨年J2の群馬に加入したアタッカーです。「進」という名前の通り、ピッチを見ればすぐに分かるエネルギッシュな走りでゴールに向かっていく姿勢はいかなる試合でもチームを活性化させる力を持っています。

もともと4ー4ー2のサイドハーフで主力として起用されていましたが、6ポイントゲームの北九州戦に欠場し、前前節の水戸戦はベンチ入りしたものの出番なし。前節の京都戦と同点で迎えた後半40分から短い時間で、2位の相手に対して守備面での貢献が目立つ試合となりました。

群馬はエースの大前元紀が好調ですが、ここからさらにマークが厳しくなってくると予想される中で、サイドから3人目のストライカーとしてフィニッシュに厚みと鋭さを加えられる進にかかる期待は大きいでしょう。

浮田健誠(レノファ山口)

昨シーズンは大卒ルーキーながら7ゴールを記録。順天堂大では旗手怜央(川崎フロンターレ)と名コンビを組んだ大型ストライカーにとって、今年は飛躍のシーズンになると期待されましたが、渡邉晋前監督のもとでは新しい戦術になかなかフィットできず、夏の補強やシステムの変更もあった中で、中盤戦はベンチから外れる試合が続きました。

名塚新監督のもと、再スタートを切った山口でも前線の競争は厳しいですが、往年のマンジュキッチを思わせるワイドなポジションから鋭くゴールに向かう迫力はライバルに無い武器であり、ピンポイントでなくても走り込みながら合わせられるフィニッシュは相手にとっても脅威になります。

日本サッカーでも希少な大型ウイングがこのまま尻すぼんでしまうのか、大きく羽ばたいていくのかは残り数試合の結果にかかる部分もあり、”残留以上”が目標となるチームを上に突き上げて、本気で昇格を目指す来シーズンにつなげられるか注目です。

平松昇(ツエーゲン金沢)

清水エスパルスの下部組織から立正大を経て、湘南ベルマーレに加入しましたが、開幕時をのぞいて出番が無いまま育成型期限付き移籍で金沢に加入しました。新天地で左サイドハーフのポジションを掴み、正確な左足を武器に、徐々に存在感を高めています。

上位の甲府との試合では1−2で敗れたものの、FKから庄司朋乃也のゴールをアシスト。生粋のチャンスメイカーであり、ゴールの起点になるプレーやクロスによるアシストに期待がかかる選手ですが、本当の意味でブレイクを果たすには丹羽詩温などFW陣を生かすプレーに加えて、自分からゴールを狙うシーンをもっと増やしていけるかが鍵になるかもしれません。

山瀬功治(愛媛FC)

琉球戦で起死回生のカウンターから決勝ゴールをあげた大ベテランは残りの試合でも救世主的な仕事をやり遂げる期待があります。技術的なベースもさることながら、時間でもチャンスを逃さない狙い目のあるプレーは接戦になるほど勝ち点に直結する可能性が高まります。

愛媛には藤本佳希という絶対的な10番がいますが、限られる攻撃時間の中で相手のマークが非常に厳しくなる傾向が強く、周りの選手たちがサポートし切れていない状況が続いています。愛媛が勝利するにはロースコアで終盤に持ち込むことが生命線になる中で、山瀬の働きは不可欠でしょう。

前川大河(ギラヴァンツ北九州)

もともと主力として期待されながら、前半戦はなかなか結果を出せないままチームも下降線になり、夏場からはベンチスタートが続いていました。しかし、久々のスタメンとなった第31節の松本山雅戦で相手GKからボールを奪ってゴールを記録するなど、敗戦の中でも存在感を示しました。

4試合ぶりの途中出場となった前節のヴェルディ戦は絶妙な浮き球のスルーパスで同点ゴールの起点になり、後半アディショナルタイムにはC Kからボールを押し込んで、勝ち越しゴールを奪いました。

結局、最後に追い付かれて勝ち点3を逃す結果となりましたが、いわゆる”ゼロトップ”的な役割から2列目まで幅広くこなしながら、ボール局面で違いを生み出せる前川は北九州でも異彩を放っており、救世主になりうる雰囲気を漂わせています。

前貴之(松本山雅)

上位が期待されながら降格圏に沈む松本は名波浩監督がチームの建て直しをしている最中ですが、終盤戦にあってチームの目がなかなか揃わない状況にあります。その大きな要因の1つが本来の主力である前貴之の離脱にあることは間違いなく、言い換えれば彼の復帰は非常に心強いものがあります。

3−0で完敗した前節の岡山戦でも、ボランチ経験のある選手らしく、右サイドからインアウトを使い分けたビルドアップ、さらに3バックの大野やボランチの平川などと絡んで、効果的なプレーを繰り出したことは収穫で、可変型のスタイルを機能させるには欠かせないピースになりそうです。

残りの試合数を考えても名波監督の理想像にチームが届く希望は薄い状況で、決定的なクロスやインサイドからのスルーパスなど、よりゴールに直結するプレーも求められてくるでしょう。しかしながら、何より自分にも味方にも厳しい要求こそがチームを浮上させるパワーになり得ます。

児玉駿斗(SC相模原)

”ファンタジスタ”が絶滅危惧種と言われる現代サッカーにあっても、ワンタッチで局面をガラリと変えられる選手は貴重であり、終盤戦の残留争いでは救世主になり得ます。名古屋グランパスではなかなか出番を得られなかった児玉ですが、狭いエリアからアクセントになり、決定的なパスも繰り出せる発想と技術は目を引きます。

昇格1年目の相模原は前監督のもと、守備を固めながら藤本淳吾などが少ないチャンスを生み出していましたが、高木琢也監督に代わり、組織的な守備はベースに置きながらも、よりクリエイティブな攻撃で厚みのあるフィニッシュに持ち込むことを主眼として清水から成岡輝瑠、ヴェルディから松橋優安と言った技巧的な若手選手が期限付き移籍で加わりました。

その”ラストピース”としてやってきたのが児玉駿斗ですが、まだ限られた時間の中で輝きの片鱗を見せているに過ぎません。ここからどう言ったプレーで勝ち点3をもたらすような働きができるのか。現時点で最も厳しいポジションにある相模原ですが、創造的なタレントがうまく噛み合えば、ジャンプアップの可能性も秘めています。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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