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BE:FIRSTとセガの成功に学ぶ、ファンの「推し活」の先にある未来

徳力基彦noteプロデューサー/ブロガー
(出典:BMSG)

7人組ダンス&ボーカルグループ BE:FIRSTが、デビューから2年目を迎えてその活動の幅をさらに拡げているようです。

昨年末にデビューから1年での紅白出場を果たすと、2月13日には約5か月ぶりとなる新曲「Boom Boom Back」を配信開始。

2月22日づけの「Billboard JAPAN」総合ソング・チャート「Japan Hot 100」にて初登場1位を記録し、通算4作目の1位獲得になったようです。

参考:BE:FIRST、新曲“Boom Boom Back”が「Billboard JAPAN」総合ソング・チャート「Japan Hot 100」1位獲得

また2月24日には、「BE:FIRST TV Season2」が、日本テレビで4月5日からスタートすることが発表。

さらに、3月1日には4月にリリースするニューシングル「Smile Again」が「ANESSA Global Campaign Song」に採用されたことが発表されるなど、毎週のように様々な形で話題となっています。

そんなBE:FIRSTですが、実はゲーム会社のセガとも様々なコラボをしていることをご存じでしょうか?

BE:FIRSTの人気の源泉でもあるBESTY

BE:FIRSTの活動で興味深いのは、オーディションから選抜されたメンバーの才能や音楽性の高さもさることながら、彼らを応援するBESTYと呼ばれるファンの熱量が非常に高い点でしょう。

BE:FIRSTは、デビュー直後からBESTYによって多数の応援ツイートがされ、頻繁に関連キーワードがトレンド入りしています。

最も象徴的だったのは、グローバルのビルボードチャートの「Hot Trending Songs」で世界1位になったことです。

参考:BE:FIRSTはツイッター経由で、世界への扉を開くことができるか

そうしたファンの熱量の高さは、オンラインの投稿だけでなく実際のファンの日常の行動にも大きな影響をもたらしていたようです。

その象徴と言えるのが、BE:FIRSTが昨年から実施していたセガとのコラボにおいて生み出された成果です。

セガのプライズは他商品の10倍の売り上げに

セガとBE:FIRSTは、BE:FIRSTメンバーのくまのぬいぐるみというプライズやプリクラ、UFOキャッチャー向けアプリのキャンペーンなど、複数の取り組みを実施。

(出典:株式会社セガ)
(出典:株式会社セガ)

ぬいぐるみのプライズは他の景品と比較して1000%を超える圧倒的な売上になったり、キャンペーンの初週でキャンペーングッズの在庫が切れる店舗が出たりという成果につながったそうです。

店舗によっては整理券が配布されたり、2時間以上の待ち時間になった店舗もあると聞きます。

筆者は幸運なことに、BE:FIRSTが所属するBMSGの日高社長と、セガの杉野社長のセッションのモデレーターを担当させて頂いた際に、詳しいお話を聞くことができました。

参考:SKY-HI日高光啓氏とセガ杉野社長が語る「SNS時代のファンとのコミュニケーション」

その際、特に印象的だったのが、BE:FIRSTとコラボしたセガの端末が設置されている店舗において、BESTY同士の店舗での交流が生まれたという話でした。

セガの端末設置店でファン同士の交流も

ゲームセンターは従来であれば、どちらかといえば男性が多く通っている印象の強い場所でした。

ただ現在では家庭用ゲーム機器の高性能化の影響や、プリクラやUFOキャッチャーなどのアミューズメント機器が増えたこともあり、かなり状況が変わっています。

そんなゲームセンターに、BE:FIRSTのコラボグッズが入手できる端末が設置されたことで、BE:FIRSTのファンであるBESTYが開店前からゲームセンターに行列するような現象が起こったそうです。

そうすると、行列に並んでいるのは全員BE:FIRSTのファンと言うこともあり、列の前後の方と待ち時間に会話が弾み、さながら推し活の「オフ会」のような状況になっていたんだとか。

アーティストのグッズと言えば、当然オンライン等で直販した方がアーティスト側の利益率は高くなります。

ただ、BMSGの日高社長としては、短期的な利益を目的にするのではなく、既に多くのファンがいて「信頼と実績」があるセガと提携し、全国にBE:FIRSTの端末が設置されることのメリットが大きいと判断したそうです。

(出典;株式会社セガ)
(出典;株式会社セガ)

その結果、コロナ禍で思うようにライブを開催できない中で、BE:FIRSTのファンは各地のゲームセンターでミニオフ会を楽しむことができ、BE:FIRSTにもセガにも大きなメリットをもたらす取り組みとなったわけです。

まさに「三方良し」の取り組みだったと言えるでしょう。

ファンによるSNS投稿を促進

もちろん、これは単純にクレーンゲームやプリクラが、有名人とコラボをすれば同じ結果になるという話ではありません。

BE:FIRSTやBMSGは日本の中で、ある意味最もファンによるSNSへの投稿を許容し、促進しているグループであり事務所です。

参考:BE:FIRSTは日本の音楽業界のSNS活用に革命を起こすかもしれない

その結果、セガ側の視点から見ても、今回のコラボは、明らかにBE:FIRSTのプライズやプリクラを利用した顧客のSNS投稿が多かったそうです。

従来日本では肖像権保護の観点から、SNSへのファンのアーティストの写真投稿を禁止しているケースが普通でした。

そのため、多くのファンがアーティストの写真が掲載されているグッズのSNS投稿を躊躇するのが現状です。

しかし、BE:FIRSTは明確にファンの「応援」であればSNSに写真を投稿してもよいことが共有されており、他のアーティストに比べて圧倒的に多くのSNS投稿が生み出されるようです。

インターネット上にないものは存在しないのと同じ

これには、日高社長の「若い世代にとって、インターネット上にないものは存在しないのと同じになってしまう」という覚悟と信念が反映されていると言えるでしょう。

イベントの際にもセガの杉野社長が、そうした姿勢にはリスクもあるはずと日高社長の挑戦への敬意を示していたのが非常に印象的でした。

こうしたBE:FIRSTとBMSGの姿勢がファンに伝わった結果、ファンによる多数のSNS投稿が生まれ、さらに多くのBE:FIRSTのファンがゲームセンターに足を運ぶきっかけになったことは間違いないでしょう。

しかも、今回のコラボは、なんとセガの担当者がグループ結成前の最初のオーディション番組の放映を見てオファーしたと言います。

担当者自身も熱烈なファンだからこそ、BMSG側も本気でコラボを企画し、ファンが喜んでくれるグッズを一緒に企画することができたそうです。

だからこそ、ここまでの盛り上がりになったことは間違いありません。

「チーム」の中にいる仲間としてのファン

BMSGの日高社長が、ファンとの関係を語る上で印象的だったのは「アーティストがいてスタッフがいてプロデューサーがいて、その中にファンがいて、というチーム」と考えているという趣旨の言葉です。

BE:FIRSTとBMSGにとって、ファンは音楽を買って聞いてくれるだけの受け身の存在ではなく、アーティストと一緒にチームを運営している仲間やパートナーという存在。

だからこそ、BE:FIRSTは、ファンにアーティストの写真や動画のSNS投稿も積極的に許容し、ファンとSNSを通じた密なコミュニケーションを行っているとも言えるでしょう。

その結果、多くのファンがBE:FIRSTやBMSGのストーリーに共感し、セガの店舗にも足を運び、密に交流する結果になっているのは間違いありません。

「推し」と呼ばれるイチオシのキャラクターやアーティストを、さまざまな形で応援する活動のことを「推し活」と言いますが、まだまだファンの「推し活」をファンによる外部活動と考えている企業や組織が多いように思います。

ただ、今回BE:FIRSTとセガのコラボが見せてくれた未来は、そうしたファンによる「推し活」がアーティストや企業と連動した「チーム」としての活動になっていく世界観のように感じます。

これから、BE:FIRSTとセガがどんな新しいコラボの姿を見せてくれるのか、引き続き注目したいと思います。

noteプロデューサー/ブロガー

Yahoo!ニュースでは、日本の「エンタメ」の未来や世界展開を応援すべく、エンタメのデジタルやSNS活用、推し活の進化を感じるニュースを紹介。 普段はnoteで、ビジネスパーソンや企業におけるnoteやSNSの活用についての啓発やサポートを担当。著書に「普通の人のためのSNSの教科書」「デジタルワークスタイル」などがある。

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