こども予算で「特別会計」を創設!? 特別会計を設けて大丈夫か
岸田文雄首相が議長を務めたG7広島サミットが5月21日に閉幕した翌日、5月22日に首相官邸でこども未来戦略会議の第4回会合が開催され、こども予算倍増に向けた財源確保が議論された。
同会合で、こども予算の財源について、岸田首相は、「少子化対策財源確保のための消費税を含めた新たな税負担については考えておりません」と明言した。この岸田首相の発言は、この会合で構成員が意見を述べた後の締めくくりに述べたものだった。
この会合では、構成員からは、財源について社会保険料で賄うことを支持する意見が出る一方で、社会保険料だけでなく国民に税負担を求める意見も出ていたことが、構成員から出された意見書や報道等から伺える。
しかし、こうした構成員から意見陳述を受けた後での締めくくりの岸田首相の発言は、前述の通りだった。今般のこども予算の財源論議において、新たな税負担を求める可能性は、これでほぼ否定されたも同然といってよいだろう。
5月22日に開催されたこども未来戦略会議第4回会合の開催時間は60分。こども未来戦略会議の有識者構成員は19名。拙稿「『こども予算倍増』に必要な財源は、こども未来戦略会議でどう決まる」でも詳述したが、会合では、事務局からの資料説明の時間や岸田首相の締めくくり発言の時間も要るから、構成員が(一方的に)意見を述べるとしても数分間で、異なる意見を喧々諤々議論できる時間的余裕はない。
こうして、こども予算の財源は、拙稿「子ども予算を『ねずみ講』『消費税』以外で賄う解 現役世代の後期高齢者支援金を減らして回す」で予見したように、社会保険料に上乗せする形で賄うことが有力視されることとなった。首相の言葉は重い。
そんな中、こども予算のために特別会計を創設する案が浮上している。
特別会計といえば、既得権益の温床とも揶揄され、過去に大改革が行われてきた。
最も印象深いエピソードは、小泉純一郎内閣の塩川正十郎財務大臣(当時)が、特別会計のことを「離れ座敷ですき焼き」と比喩したことだ。
2003年2月25日に、塩川財務相が、衆議院財務金融委員会で、一般会計と特別会計の現状について、「母屋ではおかゆ食って、辛抱しようとけちけち節約しておる のに、離れ座敷で子供がすき焼き食っておる」と答弁した。一般会計が「母屋」で、特別会計が「離れ座敷」を意図している。
特別会計は、2001年には37会計あったが、小泉内閣と第2次安倍晋三内閣で整理統合が行われて、現在では13会計となっている。区分経理をする必要のない特別会計は、極力一般会計に統合することが進められた結果だった。
では、こども予算のために特別会計を創設するということは、どういうことなのか。それは、創設するというものの、
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