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夜の街の新型コロナ被害は?

木曽崇国際カジノ研究所・所長
(写真:アフロ)

さて、新型コロナの影響で夜の街が悲鳴を挙げているなどという情報が廻って来まして、先日あわてて歌舞伎町を訪れ、レポート動画を作成いたしました。以下、私のYouTubeチャンネルから。

歌舞伎町には主に以下の様なプロファイルを持つ顧客層が混在しているワケですが、動画内でもご紹介している通り、いずれの客層もかなり厳しい状況にありまそうです。

1. 訪日グループ客

訪日グループ客は通常アジア圏からの顧客が多いのですが、今回の新型コロナの蔓延がアジア圏から始まったこともあり、その様なグループ客はほぼ街中では見かけませんでした。

2. 訪日個人客

訪日個人客に関しても、アジア圏の国々から来ている顧客はやはり殆どおらず、チラホラ見かけるのは欧米系と思われる個人客。お店の人や、同席した客などから聞いてみた感じだと、欧米系といってもヨーロッパやアメリカから来ている客は少なく、オーストラリアなどオセアニア系の個人客が何とか少しばかり残っている程度だそうです。

3. 日本人グループ客

で、客足が減っているのは訪日外国人だけではありませんで、実は最も夜の街の経済に影響を与えているのは日本人グループ客が減っている事。現在、政府が「不要不急のイベントは控えるように」との要請を公式に行っており、本来今の時期から5月にかけて歓送迎会シーズンとなるのですが、その種の顧客がほぼ街から消えている状況。そりゃまあ大学の卒業式等が縮小されている中で、先輩を送り出す「追い出しコンパ」なんて開催する人は居ませんわな。

4. 日本人個人客

唯一まだ相対的にまともに経済が廻っていると思われるのが、日本人の常連客を中心に客を集めているお店。まあこういうお店は、基本的に小型の店舗ですから不特定多数から病気を移されれる心配も少なく「まだマシ」程度には客足を保てているのでしょう。

5. 地元商業客

そして、以上のような街の状況から、上記の様な街の商業者を相手にしているお店も打撃を受けている模様。そもそも夜の街を訪れる客足そのものが減っていますから、それを迎える従業員の数を減らしたり、店舗によっては最初から閉店を選択しているお店もチラホラみられました。結果として、そういう地元の商業者を相手にしている商業者も営業が痛んでいる様が見て取れました。

ということで夜の街の新型コロナの被害は甚大であるワケですが、政府にお願いしたいのは現在の終わりの見えない「自粛」ムードの中で、こういう商業者の方々の存続を助ける施策を早急に打って頂きたいということ。この種のいわゆる「水商売」と言われる業種の方々は、文字通り「今日売り上げたお金を明日の支払いに充てる」ことで成り立っている業態で、具体的にいえば今月の売上がなければ、来月の家賃の支払いが出来ない状況に直ぐに陥ってしまいます。他の業態に比べると驚くほど簡単に廃業に至ってしまうのが実態。

今回の新型コロナ被害においては、本来「書き入れ時」の一つである春節(中国の旧正月)を逃してしまうところから始まり、本来これから始まる歓送迎会需要を既に逃し始めている状況。そしてその後、4月末からの大型連休シーズンが続くワケですが、今の状況がもしゴールデンウィークにまで続くとなると流石に多くの業者は身が持ちません。

コロナ被害が明けた後の経済刺激策を考えることは勿論必要なのですが、この問題の終わりが見えないのであればある程、寧ろそういう事業者の「現時点での存続」を助ける施策が合わせて必要。そうでなければ、コロナ被害から明けて「すわ経済対策を」となった時には、既に経済対策の対象となる事業者が既に誰も居なくなっている状態になりかねない。新型コロナによる国民の健康被害を防ぐことは勿論必要でありますが、同時に経済被害に対しても同じくらいの緊急度をもってあたって頂きたいと思うところです。

国際カジノ研究所・所長

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。9月26日に新刊「日本版カジノのすべて」を発売。

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