カーリングは、いよいよ「4年に1度」の存在から卒業できるか
先週から開催されていた第39回全農日本カーリング選手権大会が、いよいよ本日決勝戦を迎えます。
特に女子の決勝は、北京オリンピック銀メダルチームのロコ・ソラーレが中部電力と対戦するということで、メディアでも注目されています。
なにしろ、ロコ・ソラーレが銀メダルを獲得したのは、つい3ヶ月前のことですから、あのプレーをまた観たいという方も多いはずです。
今回の日本選手権で注目されるのはもちろん試合の結果が一番ですが、あわせて注目頂きたいのが、選手達の活躍やカーリング協会のSNS活用などの貢献もあり、カーリング人気が日本で徐々に根付いてきているのではないかという点です。
「4年に1度起きるやつ」
実は、カーリングは日本ではどうしても「4年に1度」しか注目されないというのが業界関係者の悩みになってきているそうです。
象徴的なのは、2018年の平昌五輪の終盤でロコ・ソラーレ主将だった本橋麻里選手が取材の際に発言したこの言葉。
「カーリングが注目されている? 4年に一度起きるやつですよね」
参考:カーリングブーム「4年に一度のやつ…」今ならわかるマリリンの真意
冬季オリンピック期間中においては、カーリングは1試合の放送時間が長い上に、選手のアップや会話がフォーカスされることもあり、注目度が一気に高まることが繰り返されてきました。
ただ、その際の人気をなかなかオリンピック以外の期間につなげられないというのが関係者の共通の悩みだったそうです。
実際にGoogleトレンドで「カーリング」というキーワードの検索回数をグラフにしてみると、その傾向は一目瞭然。
4年ごとに検索回数が跳ね上がり、特にメダルを獲得した前回の平昌五輪と今回の北京五輪では大きなピークになっていることが分かります。
当然4年に1度のスポーツの祭典ですから、その際の検索数がピークになるのは当然ですが、例えばフィギュアスケートの検索結果を見てみると4年間の間にも小さな山が何度も存在するのが見て取れます。
こうしたオリンピック以外でも話題になるスポーツになれるかどうかが、ある意味カーリング関係者の悲願と言うことができるかもしれません。
実は、今回の北京五輪後の日本のカーリングには、この「4年に1度」をカーリングが払拭できるかもしれない兆しが見えてきているのです。
カーリング協会の積極的なSNS活用
まず、4年前に比べた大きな変化は、なんと言ってもカーリング協会のツイッターアカウントや、「カーリング沼」というYouTubeチャンネルのライブ中継をはじめとした、カーリング協会の積極的なSNS活用でしょう。
カーリング協会のツイッターアカウントは、2018年12月に開設され、先日の北京五輪でも大活躍していましたが、日本選手権でも細かい日程やスコアを丁寧にツイート。カーリングファンにきめ細かい情報提供を続けています。
さらに「カーリング沼」のYouTubeでのライブ中継は、北京五輪の前後になんと16回ものライブ配信を重ねていたのが印象的でしたが、その後も月に数回のペースでライブ配信を継続。
今回の日本選手権前にも選手解説を実施して、コアなカーリングファンとの関係をつないでいるのです。
参考:カーリング沼の成功に学ぶ、オリンピックの感動をつなぐSNSの使い方
こうした、カーリング協会による取り組みが、日本選手権の楽しみ方を拡げてくれているのは間違いありません。
ライバルチームの解説に協力する姿も
例えば、今回決勝を戦う中部電力は3月に開催されたカーリング女子世界選手権の出場チームなのですが、その際の予選振り返りのライブ中継には、実は今回対戦するロコ・ソラーレの吉田知那美選手と吉田夕梨花選手も登場。
1時間半近い動画にもかかわらず、動画の再生数は9万回を超えています。
さらに、今回日本選手権の予選でロコ・ソラーレに唯一勝利したフォルティウスのメンバーは、実は北京五輪開催中のカーリング沼に何度も登場し、自分達がオリンピックに出れなかった悔しさをこえてカーリングの啓発に協力されていた背景があります。
そういう事情を知っている上で、フォルティウスがロコ・ソラーレに勝利した試合を観戦すると、また違った視点で試合が見れたという方は、少なくないはずです。
SNS活用の拡がりはジュニアの選手にも
しかも、こうしたカーリング協会による取り組みは確実に、選手やOBにも拡がりを見せています。
実は日本選手権開幕直前には、カーリングのジュニア世界選手権が開催されており、そこでSC軽井沢クラブジュニアが、日本カーリング協会の初の世界一を獲得するという快挙を達成しました。
参考:初の世界一!世界ジュニアVのSC軽井沢クラブジュニアが喜びの声
実はこのSC軽井沢クラブジュニアのメンバーは、「カーリング沼」のライブ中継に影響されて「ジュニアカーリング沼へようこそ」というライブ中継を自分達で企画、選手権前に配信されているのです。
こうした取り組みの効果もあり、SC軽井沢クラブジュニアが優勝したタイミングでは、「カーリング」を含んだツイート数も大きく跳ね上がる結果となっています。
現在開催中の日本選手権が、一部の試合はNHKのBSチャンネルでも中継されているのに対して、ジュニアの世界選手権は専用の中継アプリでしか試合は観ることができませんでした。
そのハンデを超えてジュニアの世界選手権優勝のタイミングのツイート数がピークになっていることを考えると、間違いなくカーリング協会やSC軽井沢クラブジュニアのSNS上のコミュニケーションがこうした話題化に貢献したのは間違いないと言えるでしょう。
着実に底上げされているカーリング人気
こうした様々な活動の結果、「カーリング」の検索数も、直近は少しずつ山ができるようになっているように見えます。
当然、これらはSNSだけの影響ではなく、カーリングの試合結果がテレビのニュースでも取り上げられているのが貢献しているのは間違いありません。
ただ、カーリングの日本選手権の場合、実はNHKのBSで放映されない試合はYouTubeライブで、リアルタイムでもアーカイブでも視聴できるのが1つの大きな特徴と言えます。
実は、日本選手権のアーカイブ視聴は、数年前から実施されているもので、2年前のアーカイブで10万再生を超えている動画も存在しています。
ただ、今回はすでにロコ・ソラーレとフィロシーク青森の予選の対戦が11万視聴を超え、ロコ・ソラーレと北海道銀行のプレーオフにおいては16万視聴を超えるなど、着実に注目度が上がっていることが確認できます。
もちろん、今年はなんと言ってもオリンピックイヤーでしたし、ロコ・ソラーレが北京五輪で銀メダルを獲得するという快挙を成し遂げた余韻が残っているからこそ注目度が高まっているのは間違いありません。
ただ、その後のSC軽井沢クラブジュニアのジュニア世界選手権優勝の快挙や、中部電力の世界選手権での名勝負、さらには日本選手権でのロコ・ソラーレに対するフォルティウスや北海道銀行などの各チームの善戦を観れば、間違いなく日本のカーリングの裾野は広がっているのは誰の目にも明らかです。
現在は女子選手の活躍が目立ちますが、当然男子選手も今後この活躍に影響されて奮起してくれることでしょう。
そこにカーリング協会のSNS活用や、SC軽井沢クラブジュニアの「ジュニアカーリング沼へようこそ」のような選手自らの情報発信が組み合わされば、日本のカーリング界の未来は明るい、と感じるのは私だけではないはずです。
まずは、今日の日本選手権の決勝戦に注目したいと思います。