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電車が止まったら、振替輸送ルートはうまく使えるのか? 実証してみた

小林拓矢フリーライター
調布エリアの人たちの生活に京王電鉄は欠かせない(写真:イメージマート)

 都会を走る電車に何かあり、「振替輸送をご利用ください」というアナウンスが発せられることは時々ある。近年では鉄道各社のスマホアプリでも、振替輸送の案内が出てくる。

 しかし、実際に振替輸送で移動しようということになると、どうしたらいいのかわからないこともあるだろう。

 では、そうなったときに筆者はどうしたのか?

振替輸送のルートは、想定していないと見つからない

 筆者自宅の最寄り駅は京王電鉄京王線の調布駅である。調布駅は、京王電鉄では「京王ライナー」を除くすべての列車が停車し、運行上も重要な駅ではあるものの、他社路線と接続していない。

 調布市エリアの各方面への移動は、京王線と相模原線、そしてバスに依存している。鉄道で移動するには、京王電鉄でないとたどりつけないのである。

 4月7日、用事があり都心にいた。スマートフォンの京王電鉄のアプリに、京王線の信号設備故障のため、新宿~つつじヶ丘間で運転を見合わせているという案内が流れてきた。

 長くなる、と思った。新宿からどう帰るか、というのを頭の中で組み立ててみた。

 調布駅からはバスが他路線の駅まで運行している。そのバスに乗れば、調布駅までたどり着ける。

 主だったところでは、中央線ならば吉祥寺・三鷹・武蔵境・武蔵小金井、小田急線ならば狛江である。これらの駅までたどりつければ、調布駅までバスで行くことができる。また、つつじヶ丘より調布側は電車が走っていたので、立川まで行って南武線で分倍河原、そこから京王線という案もある。また、小田急で登戸、南武線で稲田堤、京王稲田堤から調布へというルートもあれば、小田急の多摩線経由で小田急永山・京王永山と乗り換えて調布に向かうことも可能だ。

 両者の合わせ技として、武蔵小金井もしくは国分寺まで中央線で行き、府中までバスに乗り電車で調布へ向かうという方法もある。この区間のバスはとにかく本数が多い。

 シンプルに吉祥寺からバスで、ということを考えたものの、吉祥寺から調布までは、バスの乗車時間が長い。また、同じ調布に向かうのにも、複数のバス路線があり乗り場が異なっているため、わかりにくいという問題がある。

吉祥寺経由で帰ってみる

 さまざまなルートを考えてみたものの、どうしても大回りになってしまうルートも多いため、結局は吉祥寺経由で帰ることにした。バスの乗車時間が長くて疲れるとは思うものの、こればかりはしかたがないとも考える。

 他のルートも検討はしたものの、思考実験の域を出られないルートもあり、現実的ではないと考えた。

 新宿から中央線快速に乗り吉祥寺へ。ここでは座ることができた。問題は、吉祥寺の改札を出てからである。

吉祥寺駅南口は混雑している
吉祥寺駅南口は混雑している写真:イメージマート

 吉祥寺は、とにかく人の多い街だ。南口のバスターミナルも、駅前にロータリーがあるなんてものではなく、路上に設置されている。調布駅へ向かう系統が3つあることは知っていたものの、どの系統に本数が多いのか、記憶にはなかった。

 いまから思うと、その場にてスマートフォンを使って検索してみればよかったものの、目の前にバスがあるような状態で乗るかどうかを瞬時に判断するほかなかった。

 吉祥寺からは調布に向かうバスは、吉06系統(神代植物公園前経由)、吉05系統(野ヶ谷経由)、吉14系統(航研前経由)の3系統がある。目の前に吉06系統(神代植物公園前経由)のバスが止まっていたので、判断する余裕なくそのバスに乗り込んだ。ほんとうは、離れた場所にある吉14系統(航研前経由)も検討すればよかったのだが、前者は1時間に5本、後者は1時間に3本と少なく、来たものに乗るしかないという判断だった。吉05系統(野ヶ谷経由)は、一日に数本。

 いったんは国分寺に行って、5分間隔で運行されている府中行きに乗って電車で調布に向かったほうがよかったとも後悔した。

 が、乗るしかない。当然ながら混雑している。しばらく立っている。十数分してやっと座れた。調布駅北口までたどりつくと、乗客には吉祥寺からずっと乗り続けていた人も多かった。調布駅前では、タクシーを待つ人が大勢いた。

運転見合わせ時の乗客側の対応はどうすべきか?

 まず、鉄道が長時間にわたり運転見合わせ、ということはときどきある。その際に備えて、別ルートを把握しておき、どこをどう通れば自宅最寄り駅にたどり着けるかを検討しておくことは、大事なことだ。

 ただ、実際に代替ルートを使用してみて、交通機関によっては輸送力に差があることもわかった。鉄道路線でも、10両編成の路線もあれば、数両しかない路線もある。また、バスも頻度が高い路線と、そうではない路線がある。

 場合によっては、短い距離の代替ルートを使用するよりも、遠回りだけど確実なルートを使用するほうが、楽に移動できるとも考えられる。代替ルートもまた、混雑している可能性は高いのだ。

 たまたま平日の昼間という時間帯だったからよかったものの、これが帰宅の時間帯だったら大変なことになっていた。

 振替輸送を、と呼びかけられたときの代替ルートは、なるべくしっかりとしたルートを選ぶようにしたい。近道になるバスも大事だが、遠回りの鉄道も比較検討の材料に入れるのもいいと考えられる。

 なお、4月7日の信号設備故障による京王線の運転見合わせは、代田橋~明大前間で10時59分ころに起こり、14時45分に運転を再開した。京王電鉄はホームページにお詫びを掲載した。

京王電鉄のお詫び(京王電鉄ホームページより)
京王電鉄のお詫び(京王電鉄ホームページより)

フリーライター

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学教育学部社会科社会科学専修卒。鉄道関連では「東洋経済オンライン」「マイナビニュース」などに執筆。単著に『関東の私鉄沿線格差』(KAWADE夢新書)、『JR中央本線 知らなかった凄い話』(KAWADE夢文庫)、『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。共著に『関西の鉄道 関東の鉄道 勝ちはどっち?』(新田浩之氏との共著、KAWADE夢文庫)、首都圏鉄道路線研究会『沿線格差』『駅格差』(SB新書)など。鉄道以外では時事社会メディア関連を執筆。ニュース時事能力検定1級。

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