子どもへの愛情があれば叩いてもいい?お尻ならいい?叩かれる痛みをわからせるためには叩くのもアリ?
次のような話を聞いたことがあると思います。「愛情があれば叩いてもいい」「お尻なら叩いてもいい」「子どものためなら多少は許される」「子どもも納得しているなら叩いてもいい」「口で言ってわからないなら体罰もある程度やむを得ない」「叩かれる痛みをわからせるためには叩くのもアリ」「叩いても後でハグするなどのフォローをすれば大丈夫」
日本には未だにこのように考えている親、先生、スポーツや部活の指導者がけっこういます。そして、こういう考えが児童虐待や体罰肯定の温床になっています。でも、こういう考えは心理学や脳科学の研究で完全に否定されました。叩くことには次のような深刻な弊害があることがわかったからです。
1:
叩かれた子は、「自分は親に叩かれるような程度の存在に過ぎない。大切な存在ではない」と感じます。そして、自尊感情が傷つき「自分は存在する価値がない。生きている価値がない」という強い自己否定感にとらわれて苦しみます。「お尻なら叩いていい」などの場所の問題ではないのです。
2:
叩かれたり暴言を受けたりすると、子どもの脳自体が萎縮したり変形したりすることがわかっています。福井大学の友田医師の研究によると、叩かれることで前頭前野が萎縮し、暴言によって聴覚野が変形するとのことです。
前頭前野は人間らしい精神活動を行う部位であり、思考・判断・創造・自己抑制・コミュニケーションなどを司っています。聴覚野音や声を知覚する部位です。
3:
叩かれて育った子は、モデリング効果によって自分も叩くようになることがわかっています。叩かれた子は暴力や恐怖で支配することの効果と方法を身をもって学び、自分も兄弟や友達に同じことをするようになるのです。つまり、「子どもは親の言うことは聞かないがすることはまねする」という諺の通りのことが起こるわけです。
4:
子どもは叩く親への不信感と恐怖心を持ちます。当然、親子関係は悪化します。親子関係は子どもにとって一番最初の人間関係です。そこで不信を土台にした人間関係を経験すると、その後の人間関係も不信を土台にしてつくるようになってしまいます。
つまり、兄弟関係、友達関係、それ以降の様々な人間関係の土台が不信になってしまうのです。人間不信とか他者信頼といわれる状態であり、良好な人間関係をつくるのが難しくなります。
5:
叩かれている子は常に恐怖心を抱いて生活するようになります。恐怖心の反動は攻撃性であり、恐怖心が強いと攻撃的になることが心理学の研究でわかっています。つまり、恐怖心が強いと「自分を守らなければならない」という潜在意識に支配され、自分を守るために必要以上に攻撃的になってしまうのです。
まとめ
叩くことや暴言で子どもを従わせれば、一時的には親にとって望ましい状態になるかもしれません。だから、ついやってしまうのです。でも、それは一時的かつ表面的なものであり本当の効果ではありません。必ず深刻な弊害が出てくるということを肝に銘じておきましょう。
なお今回は詳しく触れませんでしたが、『地獄の絵本』や『鬼からの電話』で脅してしつけるなどの行為も同様です。とにかく、恐怖をもとにしたしつけや教育は全て有害です。