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「ゾンビランドサガ」2期放送を前に1年7ヶ月ぶりのライブ 沈黙を破ったフランシュシュの佐賀への愛

河嶌太郎ジャーナリスト(アニメ聖地巡礼・地方創生・エンタメ)
「佐賀事変」を初披露した、ゆうぎり役の衣川里佳(エイベックス・ピクチャーズ提供)

 ゾンビとなった少女たちがアイドルとなって佐賀を救う――アニメと佐賀県のコラボが話題となった「ゾンビランドサガ」。2018年10月から12月にかけてアニメ1期が放送され、21年4月8日からは続編となる2期「ゾンビランドサガ リベンジ」のテレビ放送も控えています。

 そんな中、2月27日には「ゾンビランドサガ」に登場するアイドルグループ「フランシュシュ」によるライブ「ゾンビランドサガLIVE~フランシュシュ-LIVE-OF-THE-DEAD“R”~」が、東京都府中市のコンサートホール「府中の森芸術劇場どりーむホール」で開かれました。フランシュシュがライブをするのは、19年7月27日以来の実に1年7ヶ月ぶりとなります。

唐津駅に設置された「ゾンビランドサガ」のパネル(筆者撮影)
唐津駅に設置された「ゾンビランドサガ」のパネル(筆者撮影)

“佐賀を救う”アイドルグループ「フランシュシュ」

 「ゾンビランドサガ」は7人の少女たちがゾンビとなって蘇り、アイドルとなって「存在自体が風前の灯火」である佐賀を救うという物語です。原作名が「佐賀県広報広聴課」となっているほか、「企画協力」にも佐賀県の名前がクレジットされているのが特徴です。佐賀県全域が舞台となっており、1期の時点では、唐津市や佐賀市、嬉野市や鹿島市や伊万里市などが登場しています。

作中の主な舞台で、フランシュシュの本拠地である佐賀県唐津市の「旧三菱合資会社唐津支店本館」(筆者撮影)
作中の主な舞台で、フランシュシュの本拠地である佐賀県唐津市の「旧三菱合資会社唐津支店本館」(筆者撮影)

 県を中心にアニメを活用した施策も盛んに行われており、県内全体を巡るデジタルスタンプラリーも2020年10月30日から21年1月31日まで実施されていました。このほか、県庁の展望ホールを利用したプロジェクションマッピング「ゾンビナイトサガ」など、様々な企画が進められています。

ステージに立つフランシュシュ(エイベックス・ピクチャーズ提供)
ステージに立つフランシュシュ(エイベックス・ピクチャーズ提供)

 7人の主人公による佐賀ご当地アイドルグループは「フランシュシュ」と呼ばれ、演じる声優たちによる音楽展開もしています。東京でライブが開催されたほか、19年7月27日には舞台の中心となった唐津市で凱旋ライブが開かれ、1000人以上のファンが全国から集まりました。その活況ぶりは地元メディアを中心に大々的に報じられました。また同日、TVアニメ2期「ゾンビランドサガ リベンジ」の制作が発表されました。

コロナ禍で幕張メッセのライブが中止に

 その後も、フランシュシュは佐賀を背負うアイドルとしての音楽展開を続けます。19年11月27日には、アルバム「ゾンビランドサガ フランシュシュ The Best」を発売。佐賀市と福岡県大川市の間に架かる筑後川昇開橋など、アニメ1期では登場しなかった舞台を描いたミュージックビデオも特典として収録され、「聖地」をさらに増やし続けています。

 そして翌20年3月8日、千葉市にある幕張メッセで、1万2000人規模のライブが開かれる予定でした。ところが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で中止となってしまいます。

 ファンの間では、「メッセのライブでTVアニメ2期の放送時期に関する告知があるのではないか」などの憶測が流れていました。前回の19年7月の唐津のライブで2期制作が決まり、さらなる具体的な情報が出るには頃合いと考えられるタイミングだったからです。

 それがライブが中止となってしまったことで、ファンにとっては全く新情報がないまま、コロナ禍の日々を悶々と過ごすことになります。5月に緊急事態宣言が解除され、代替のライブをオンライン配信などで実施し、活動を再開する音楽グループが続々と相次ぐ中、フランシュシュは全くといって新しい活動も、情報すらほとんどありませんでした。まさに、この非常事態をゾンビとして臥薪嘗胆しているかのようでした。

「ゾンビランドサガLIVE~フランシュシュ-LIVE-OF-THE-DEAD“R”~」のメインビジュアル
「ゾンビランドサガLIVE~フランシュシュ-LIVE-OF-THE-DEAD“R”~」のメインビジュアル

 転機となったのは20年も終わりの12月28日。主人公の巽幸太郎を演じる声優・宮野真守さんがYouTubeで発表された動画内に登場し、21年元旦に重大発表を行うと告知しました。そして21年1月1日、2期が4月から放送することが発表され、さらに翌2日には、20年3月に中止となった幕張メッセのライブの代替公演と言える“リベンジ”ライブ「ゾンビランドサガLIVE~フランシュシュ-LIVE-OF-THE-DEAD“R”~」を2月27日に実施すると宣言しました。

 こうして、1年近く事実上の活動休止となっていたフランシュシュは“復活”することとなったのです。

源さくらを演じる本渡楓(エイベックス・ピクチャーズ提供)
源さくらを演じる本渡楓(エイベックス・ピクチャーズ提供)

府中から叫ばれた佐賀への愛

 会場は幕張メッセから東京都府中市にある「府中の森芸術劇場どりーむホール」に移され、収容人数も1万2000人規模から2027席のホールで間隔をあけて1000人規模と、密にならない工夫がされました。1月2日の発表からさらに状況が悪化し、緊急事態再宣言下であるため、事実上のオンラインライブと言えるのかもしれません。

 そして2月27日、ライブは予定通り開催されました。筆者もオンラインでライブを鑑賞しましたが、これまで発表された楽曲の大半が演じられ、「佐賀事変」など19年11月に発売されたアルバムの新曲がライブで初披露されました。

 ライブを通じて新情報の告知もされ、4月放送開始となっていたアニメ2期の放送開始日が4月8日であること、そして放送局に関する情報などが明らかになりました。

 ライブの最後に、佐賀への郷土愛を叫ぶ場面もありました。源さくら役の声優・本渡楓さんが「ここが私たちの佐賀だー!!」と叫び、キャストとファンの心は常に佐賀と一心同体であると訴えました。

4月以降の展開に期待も

 既に「聖地」のあるアニメの2期が放送されると、新しい舞台が作中に登場する形で「聖地」の数が増えるという現象が見られます。特に「ゾンビランドサガ」は佐賀県全域と舞台が広く、県を挙げた新たな取り組みがあることでしょう。

 アニメのキャラクターだけでなく、声優を活用した地域振興策も考えられます。既にフランシュシュは、TVアニメ放送と同時期の18年10月に「佐賀県PR大使」に任命されていますが、2期でさらなる施策があるかもしれません。また、当面は難しいかもしれませんが、再び佐賀県内でフランシュシュのライブ開催を願う声も根強くあります。

 新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着き、再び大手を振るって佐賀に「聖地巡礼」できる日が一日も早く訪れることを祈ります。

「ゾンビランドサガ リベンジ」のメインビジュアル
「ゾンビランドサガ リベンジ」のメインビジュアル

TVアニメ「ゾンビランドサガ リベンジ」

<放送>

2021年4月8日よりTOKYO MX、AT-Xほかにて放送開始

<配信>

Amazon Prime Video、ABEMAにて地上波先行独占配信決定

TVアニメ「ゾンビランドサガ リベンジ」本PV

https://youtu.be/ZzLZetJVrl4

公式サイト:zombielandsaga.com

公式Twitter:@zombielandsaga

(C)ゾンビランドサガ製作委員会

(C)ゾンビランドサガ リベンジ製作委員会

ジャーナリスト(アニメ聖地巡礼・地方創生・エンタメ)

1984年生まれ。千葉県市川市出身。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。「聖地巡礼」と呼ばれる、アニメなどメディアコンテンツを用いた地域振興事例の研究に携わる。近年は「withnews」「AERA dot.」「週刊朝日」「ITmedia」「特選街Web」「乗りものニュース」「アニメ!アニメ!」などウェブ・雑誌で執筆。共著に「コンテンツツーリズム研究」(福村出版)など。コンテンツビジネスから地域振興、アニメ・ゲームなどのポップカルチャー、IT、鉄道など幅広いテーマを扱う。

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