2040年の社会保障負担問題-社会保障負担52兆円超、現役世帯150万円の負担増をどうするのか?-
2040年の社会保障負担問題まとめ
【ファクト】
1.生産年齢人口は-16.0%減少、後期高齢者は+11.0%増加
2.社会保障負担は52.3兆円増加
3.現役世代1世帯当たり148.9万円(企業負担分含む)の負担増
4.社会保障負担増はGDP増加の3分の2ほどに相当
5.政府の社会保障負担(給付)に関する将来見込みは過少推計
【解決策】
ア.現役世帯の社会保険料負担を増やす
イ.金融資産を多く持つ高齢世帯の負担を増やす
ウ.消費税増税で全国民の負担を増やす
エ.法人税増税で企業の負担を増やす
オ.社会保障給付を効率化する
石破茂自由民主党新総裁は、本日、10月1日に召集される臨時国会で第102代内閣総理大臣に指名された後、諸条件が整えば、衆議院を解散し、15日公示、27日投開票で選挙を行うと報道されています。
自民 石破総裁 衆院選 10月27日投開票の方針表明(2024年9月30日15時57分(参照) NHK)
与党第一党の自民党総裁とは言うものの、総理就任前に解散時期に言及するのは極めて異例ではありますが、来たるべき次期衆議院総選挙で必ず争点にすべき課題に、自民党総裁選でも、立憲民主党代表選でもほとんど争点にならなかった2040年の社会保障負担問題があります。
なぜなら、2023年から2040年にかけて、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来人口推計」によれば、生産年齢人口は2023年7,396万人から2040年6,213万人とー1,182万人減少(-16.0%減少)する一方、高齢者人口は3,622万人から3,928万人と+306万人増加(+8.5%増加)、特に後期高齢者に限って言えば2,008万人から2,227万人と+220万人増加(+11.0%増加)となり、生産年齢人口が減る中で「高齢者の高齢化」が一層進行するからです(四捨五入の関係で数値が合わない場合があります)。
要するに、現在、主に負担は現役世代、給付は高齢世代という世代間の扶け合いで社会保障が営まれている訳ですが、その仕組みを今後も維持できるのか、維持するのが妥当なのかが問われる局面にあると考えるからです。
あるいは高齢化が進んで社会保障費が増えることを自然増と呼ぶのが日本の習わしですが、現役世代の減少に合わせて社会保障負担を減らす自然減ではなぜいけないのか?と言い換えることもできるでしょう。
少々古くなりますが、2018年5月21日に、内閣官房・内閣府・財務省・厚生労働省が「2040年を見据えた社会保障の将来見通し(議論の素材)」を出しましたが、その中で、2040年の社会保障負担の見通し(経済:ベースラインケース)は187.3兆円(計画ベース)と見積もっています(なお、ここでの社会保障負担は社会保険料負担と公費(税・赤字国債)負担を指します)。
足元の社会保障負担は2024年度の当初予算ベースの数値では135.0兆円となっています。
したがって、2024年度から2040年度の今後十数年の間に、社会保障負担は52.3兆円増加する見込みとなります。なお、増加する社会保障負担52.3兆円のうち26.7兆円は社会保険料負担(労使込み)、25.6兆円は税・赤字国債となります。
ただし、実績値をみますと、2022年度では141.5兆円(社会保険料77.3兆円、税・赤字国債64.2兆円)、対名目GDP比24.9%(社会保険料13.6%、税・赤字国債11.3%)と、政府の2025年度の推計値を金額でも名目GDP比でも既に上回っている(名目GDP比では2040年度の推計も上回っている)ことが確認できます。つまり、2018年時点での政府の社会保障負担(給付)に関する将来見込みは過少推計である可能性が高い訳です。
一方で、社会保障を支えるGDPに関しては、内閣府「経済見通しと経済財政運営の基本的態度(内閣府年央試算)」及び内閣府「中長期の経済財政に関する試算」を使って機械的に試算すると、2024年度から2040年度では名目GDPは80.9兆円増加すると推計されました。
名目GDPが80.9兆円増加する一方、社会保障負担は52.3兆円増加するので、社会保障負担増はマクロの所得が増えたうちの64.6%、実に3分の2弱に相当することが分かります。
さらに、総務省統計局「家計調査」から、社会保険料と消費税の現役世代と高齢世代(65歳以上世帯)の負担割合を一定の前提のもとで機械的に試算し求めると、社会保険料では現役世代が全体の93.1%、税・赤字国債では現役世代が88.8%負担していることになります。
したがって、現状の制度のままだとすれば、2040年に2024年より増加する52.3兆円のうち、社会保険料では24.9兆円、税・赤字国債では22.7兆円、現役世代が負担することになるのです。
これを機械的に現役世帯1世帯当たりの金額に換算すれば、現役世代1世帯当たり148.9万円の負担増(社会保険料は企業負担分も含む)となります(なお、企業負担分を除けば112.0万円の負担増となります)。
2040年の社会保障負担問題、要するに、社会保障負担総額52兆円超もの負担増、現役世代1世帯あたり148.9万円もの負担増を、(1)現行のまま現役世帯の社会保険料負担を増やし続けるのか、あるいは(2)金融資産を多く持つ高齢世帯に資産課税などで負担させるのか、それとも(3)負担増は消費税に振り替えることで全国民で負担すべきなのか、(4)法人税を増税することで企業に負担させるのか(企業の人件費負担増)、(5)社会保障負担増の原因であり、表裏一体の関係にある社会保障給付を効率化することで現役世代と高齢世代の負担を軽減するのか、要するに、誰がどのように負担するのが適切なのかについて、政治家もメディアも誰も口にしたがりませんが、来たるべき次期衆議院総選挙で必ず争点にすべき課題だと筆者は思います。
選挙を通じて民意が如何なる解決策を選択することになるかは分かりませんし、必ずしも筆者と見解が同じになるとはゆめゆめ思いもしませんが、2040年の社会保障負担問題が来るべき衆院選で、与野党から一切取り上げられることもなく、なぁなぁで決められていくよりは、選択肢を与えられた上で、一票を投じ意思表示する機会が与えられることを期待したいと思います。
読者のみなさまはいかがお考えでしょうか?
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