改訂版:日本の少子化対策30年を採点しよう
少子化関連予算は単年度で比較して11兆円増えたにもかかわらず、出生数は51万人強減少し、合計特殊出生率も1.20いまで低下。結局、少子化に歯止めがかからず、かえって加速しているので、エンゼルプランに始まる日本のこの30年の少子化対策は落第。
「子ども・子育て支援法等改正案」が6月5日に参議院本会議で可決・成立しました。
日本の少子化対策が本格的に開始されたのは1990年のいわゆる1.57ショック(1990年に公表されたひとりの女性が生涯に生む子供数の理論値を示す合計特殊出生率が、それまでの最低値である丙午だった1966年の1.58を下回って1989年に1.57まで下がったことを指す)を契機とし、1994年に文部・厚生・労働・建設各大臣(当時)で合意され、1995年から実施された「子育て支援のための総合計画(通称エンゼルプラン)」を嚆矢としています。
エンゼルプラン以降、数多の少子化対策が実行されてきましたが、実は、その政策効果が検証されたことは今まで一度もありません。
これまでの少子化対策の効果を検証することなく、財源を逐次投入して従前の少子化対策の拡充を機械的に行ってきただけだったので、結局は、出生数72万7,277人、合計特殊出生率1.20という過去最低の結果に終わったわけです。
本記事では、6月5日の厚生労働省「人口動態統計」の公表を受けて、1994年のエンゼルプラン合意以降の30年にわたる政府の少子化対策の成績表を改訂しました(元記事はこちら)。
成績は下表の通りとなります。
出生数はこの30年間で51万人強減少しています。合計特殊出生率は低出生率の罠の目安とされる1.50を大きく下回って1.20となっています。この点だけを見ても、少子化には歯止めがかからず、もちろん反転もしていないのですから、控えめに言っても落第でしょう。しかもこの間、家族向け社会支出は2.2兆円から13.5兆円と6倍強にも増えているのですから、少子化対策の失敗は少子化対策につぎ込む金額の多寡ではないともいえるでしょう。
しかし、岸田内閣は、効果があったかも不確かなこれまでの少子化対策の延長線上でしかない施策に、新たに3.6兆円(しかもそのうち1兆円は子ども・子育て支援金の新規負担増)の財源を確保してまで資源を投入しようとしている訳ですが、果たしてそんな余裕は、わが国にはあるのでしょうか?
これまでの少子化対策の効果検証を行うこともなく、しかもこれまで少子化を加速する「取って配る」少子化促進策を推進してきた官僚や有識者が中心となって、岸田内閣の下、新たな少子化対策を企画立案し、実行したとしても少子化に歯止めがかかるとは筆者には到底思えません。まぁ、実際に歯止めがかかってないわけですけどね。
少子化対策の拡充は進んできたにもかかわらず少子化が加速しているのですから、一歩立ち止まって「取って配る」少子化対策が失敗に終わったことを反省し、「取らずに残して自由に使わせる」少子化対策に転換すべきと筆者は考えます。
しかし、政治家や国民は、配るお金が足りないとまだまだ足りないから少子化が止まらないと判断している有様です。読者の皆さんはいかがお考えでしょうか?