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オートバイのあれこれ『1985年—ヤマハの傑作車豊作年—(後編)』

Rotti.モトエンスー(moto enthusiast)

全国1,000万人のバイクファンへ送るこのコーナー。

今日は『1985年—ヤマハの傑作車豊作年—(後編)』をテーマにお送りします。

個性豊かなオートバイが数多く生み出された1980年代。

空前のバイクブーム期だったこの10年の間には、後に「名車」として語り継がれることになるモデルが毎年現れてきました。

日本のオートバイ史において、80年代はどの1年を切り取っても話題が尽きないのですが、私(筆者)個人として、85年(昭和60年)はその中でもとくに興味深い1年だとつくづく思います。

どういうことかと言うと、私は85年を「ヤマハ傑作車の豊作イヤー」だと定義したいのです。

というわけで、今回は85年にデビューを果たしたヤマハの傑作バイク(個人的見解)を2つピックアップしましょう。

(前回のVMAX・SRX編も合わせてご覧ください!)

◆FZ250 PHAZER

85年は、クウォーター(250cc)クラスにもヤマハの傑作モデルがラインナップされた年でした。

まず一つが、『FZ250フェーザー』です。

フェーザーが名車たるゆえんはやはり、そのパワーユニット。

新開発されたDOHC4バルブの水冷並列4気筒エンジンは、なんとレブリミットが18,000rpmという四輪のF1用エンジンかのごとく超高回転型となっていました。

20,000rpm近くまで回る4気筒エンジンの咆哮は、「ジェットサウンド」「戦闘機の音」などと評判になり、これがフェーザーならではの魅力の一つとなりました。

また、フェーザーについてはその外観も見逃せません。

ヤマハはフェーザーをレーサーレプリカモデルとはっきり差別化するため、個性的な形状のフロントカウルを開発。

その前面はヘッドライトとウインカーをビルトインしたデザインで、側面は燃料タンクを覆っており、ヘッドライトからタンクまでが一体化しているように見える造形となっていました。

そしてそれがテールカウルと組み合わさって、ひと繋がりのシルエットを形成。

車体の上半分はカウルでフルカバードされる一方、下半分はエンジンやフレームが露出しており、このスタイリングが独特の雰囲気を放っていました。

前回ピックアップした『VMAX』『SRX』もヤマハのセンスが光る独特の外観をしていましたが、このフェーザーのルックスもそれらに引けを取らないオリジナリティに富んだものだったと言えるでしょう。

高揚感あるエンジンサウンド、レプリカモデルには無い洗練された佇まいという独自の魅力に加え、フェーザーはボディサイズもコンパクトだったことから、初心者ライダーや女性ライダーから支持を集めることにも成功し、一躍人気モデルとなったのでした。

◆TZR250

フェーザーに続き、85年生まれのもう一つの傑作クウォーターが『TZR250』です。

TZRに関しては、当時のレプリカブームを牽引したモデルの一つですから、よくご存知の方も多いことでしょう。

83年にスズキから『RG250ガンマ』が現れたことを機に、ヤマハもGPマシンさながらのフルカウルスタイルでTZRを開発。

市販レーサー『TZ250』と並行して作られたTZRはガンマにも劣らない本格派の作り込みで、峠やサーキットにおいて猛威を振るいました。

アルミ製の『デルタボックス』フレーム、クランクケースリードバルブ等、見どころの多いTZRでしたが、“ならではの部分”として特に注目したいのがホイール径です。

ガンマもそうでしたが、当時のスポーツバイクには前16インチ/後ろ18インチという具合に前後異径サイズを用いるのが流行っていました。

しかしヤマハは、ニュートラルかつナチュラルなハンドリングを目指してTZRに前後17インチを採用。

これは、ヤマハとともに世界グランプリを席巻したケニー・ロバーツ氏の助言によるものだと言われています。

そしてこの前後17インチホイールは功を奏し、TZRはライバルモデルには無い抜群の扱いやすさを獲得。

ライダーの意志・感覚にピッタリ寄り添うハンドリングにより、TZRは「乗りやすい」レプリカに仕上がっていました。

後の時代(90年代以降)にオンロードスポーツモデルのほぼ全てが前後17インチホイールになったことを考えると、TZRの設計は時代を先取りしていたと言って差し支えないでしょう。

レプリカという先鋭的なモデルではありつつも、扱いやすさが織り込まれていたTZRは、間違いなくヤマハらしさに溢れた傑作車だったと言えます。

画像引用元:ヤマハ発動機

モトエンスー(moto enthusiast)

バイクを楽しむライター。バイク歴15年で乗り継いだ愛車は10台以上。ツーリング/モータースポーツ、オンロード/オフロード、最新バイク/絶版バイク問わず、バイクにまつわることは全部好き。

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