オートバイのあれこれ『1985年—ヤマハの傑作車豊作年—(前編)』
全国1,000万人のバイクファンへ送るこのコーナー。
今日は『1985年—ヤマハの傑作車豊作年—(前編)』をテーマにお送りします。
個性豊かなオートバイが数多く生み出された1980年代。
空前のバイクブーム期だったこの10年の間には、後に「名車」として語り継がれることになるモデルが毎年現れてきました。
日本のオートバイ史において、80年代はどの1年を切り取っても話題が尽きないのですが、私(筆者)個人として、85年(昭和60年)はその中でもとくに興味深い1年だとつくづく思います。
どういうことかと言うと、私は85年を「ヤマハ傑作車の豊作イヤー」だと定義したいのです。
というわけで、今回は85年にデビューを果たしたヤマハの傑作バイク(個人的見解)を2つピックアップしましょう。
◆VMAX
ヤマハの名車として代表的な存在の一つが、『VMAX(ブイマックス)』でしょう。
唯一無二の存在感は、デビューから40年近くが経った現在でも色褪せていません。
VMAXは、ヤマハがアメリカ(北米)にてシェアを伸ばすために開発。
アメリカで人気のドラッグレース、そしてアメリカ伝統のV8マッスルカーをヒントに、VMAXは形作られました。
どっしり低く構えた車体に排気量1,200ccのV4エンジンを搭載し、他に類の無い佇まいで登場したVMAXは、アメリカはもとより日本においても人気を獲得。
「VMAXを乗るために限定解除する!」
という中免(中型二輪)ライダーも当時少なくなかったようです。
厚い支持のもとVMAXは2007年頃まで生産され、2008年からはフルモデルチェンジを果たした二代目にスイッチ。
二代目はなんと排気量が1,700ccとなり、その迫力にいっそう磨きがかけられていました。
◆SRX(SRX-6/SRX-4)
VMAXほどビッグネームではないかもしれませんが、『SRX』もヤマハの独創性がほとばしる傑作車だと思います。
このSRXも、85年にデビューしたモデルになります。
SRXを簡潔に言い表すと、「レーサーレプリカへのアンチテーゼ」。
80年代を迎えてから急速に沸いたレプリカブーム(≒スペック至上主義)へ反旗を翻すため、ヤマハが「シンプル」「質実」といったことをテーマに作り上げました。
お世辞にもハイスペックとは言えないSOHCの単気筒エンジン、華奢なフレーム、派手さが全く無い各部ディテール…。
「飾らないこと」をモットーに生み出されたSRXは、先進装備・高性能で固められたレプリカモデルとは完全に真逆をいく性質のバイクだったと言えます。
当のヤマハも、トレンドと乖離したSRXが売れるとは思っていなかったようですが、いざ発売してみると…想定外の好セールスを記録。
SRXに込められたヤマハのアンチ・レプリカ思想に賛同したバイクファンは想像以上に多く、SRXは当時の“一大勢力”に抗いながら着実に支持者を集めることができたのでした。
画像引用元:ヤマハ発動機