裏路地に佇む隠れ家ラーメン店 豚骨に負けない「極上中華そば」とは?
裏路地に佇む隠れ家のようなラーメン店
多くの飲食店が立ち並ぶ福岡天神南の細い裏路地に、気づかなければ素通りしてしまうような小さなラーメン店がある。『中華そば つけ麺 永福』(福岡県福岡市中央区渡辺通5-24-38)は豚骨ラーメンばかりの福岡で、十年以上にわたり醤油味の中華そばで人気を集める店だ。
店内に入るとスープの優しい香りがふわっと広がり、にこやかな笑顔の店主、中園保宏さんが出迎えてくれる。中園さんはデザインの学校を卒業後に上京して都内の古着店に就職。その時に出会ったのが、永福町にある中華そばの老舗『大勝軒』だった。ラードが浮いた濃厚な煮干しの醤油スープが特徴の人気店だ。
音楽の夢がラーメンに形を変えた
福岡では食べたことのない中華そばに衝撃を受けた中園さんは、毎日のように永福町まで足を運ぶようになった。その後福岡に戻り、学生時代の仲間と古着店を立ち上げた。店は人気店となり仕事も順調だったが、そんな時福岡に『大勝軒』の系列店が出来た。中園さんはラーメン店をやりたい、という思いがどんどん強くなっていった。
「僕は元々レゲエが大好きで、音楽を仕事にしたかったんです。しかしその夢は果たすことは出来なかった。そんな時に大好きだった大勝軒と再会し、ラーメンで自分を表現してみたいと新たな夢が生まれました」(永福 店主 中園保宏さん)
福岡の土地に合わせたオリジナルの一杯
福岡に出来た『大勝軒』で修業をはじめ、その後豚骨ラーメン店でも経験を積んだ中園さんは、2013年福岡市南区長住に『えいふく』という店名で独立開業。その後、2017年に現在の場所へ移転する時に店名を『永福』と改めた。屋号はもちろん大好きな『大勝軒』のある東京永福町の地名から拝借した。
『永福』と名乗ってはいるが、中華そばは『大勝軒』と同じではなく中園さんのオリジナル。ベースとなる動物系のスープは、豚骨や鶏ガラなど動物系の出汁を濃く抽出することで、豚骨に慣れ親しんだ福岡の人たちの舌に合わせた。そこに煮干しや鰹節、昆布などの魚介系素材と香味野菜を合わせて旨味の層を作り出している。
「シンプルで昔ながらの雰囲気のある中華そば、というイメージは大切にして、あとは試行錯誤しながら自分の味を作り上げました。オープン以降もさらに改良を重ね続けています」(中園さん)
豚骨の街で敢えて中華そばで勝負する
今でこそ中華そばやつけ麺など豚骨ラーメン以外の味も増えている福岡だが、『永福』が開業した2013年頃は、まだ醤油ラーメンなどを出す店はほとんどなかった。豚骨ばかりの福岡の地で、中園さんは醤油味の中華そばとつけ麺をメニューに据えて勝負に挑んだのだ。
「やはり自分が好きな味を出したかったのが一番大きいですね。しかし不安は全くなくて、むしろ期待の方が大きかったんです。福岡にも豚骨は苦手な方がいますし、東京から仕事で来られている方もいますので、豚骨ラーメンではない中華そばにもチャンスはあると思いました」(中園さん)
地元の住民はもちろん近隣のオフィスワーカーや出張族や観光客など『永福』を訪れる客層は実に幅広い。そんな人たちのために中園さんは創業以来、毎日店に出てスープや具材を仕込んで営業に立っている。
「やっぱり休みたいと思うこともありますよ。遊びたいとも思いますけど、やはりお店に出ているのが一番好きなんですよ。毎日お客さんとラーメンや音楽の話をするのが楽しいので、このままずっとラーメンを作り続けていきたいですね」(中園さん)
中華そば つけ麺 永福
福岡県福岡市中央区渡辺通5-24-38
11:00〜15:00,16:30〜22:00
火曜定休
※写真は筆者によるものです。
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