川内原発を竜巻が襲ったら
早ければこの秋にも川内原発が再稼働するとの報道がなされましたが、地上最強の風を吹かせる竜巻が原発を襲ったらどうなるのでしょう。
原子力規制委員会の定例会合(7月16日)で、川内原発の安全対策が新基準に「適合している」との判断が下されました。
これを受けて、川内原発は秋にも再稼働するとの見通しのようですが、竜巻のような局地的な暴風に対してはどのような対策が立てられているのでしょう。
実はアメリカでは2011年の4月に、バージニア州のサリー原発近くを竜巻(トルネード)が通過し、原子炉2基が緊急停止したことがあります。
またその数日後に、今度はアラバマ州のブラウンズフェリー原発が、やはり竜巻のため非常用ディーゼル発電で冷温停止するという事態になりました。ただこれらの事態は想定内の出来事なので、これを「事故」とするかどうかは判断の分かれるところです。
竜巻はめったに起こらない現象ですが、いったん遭遇すると、その破壊的強風から信じられないような被害をもたらすことがあります。
また2011年の東日本大震災以来 、私たちは確率がどんなに低くても「起こるときには起こる」ということを学びました。
ところで原子力規制委員会では「原子力発電所の竜巻影響評価ガイド」という冊子で、竜巻が原発を襲った場合を想定しています。
それによりますと、川内原発の場合は最悪の場合、最大風速92メートル(藤田スケール3)の竜巻に襲われることが想定されているのです。
この数値は、日本最大級の竜巻を意味します。したがってこの竜巻に対応できれば、強風に関しては当然、台風や雷雨、ダウンバーストなどにも対応できるということになります。
そしてその対策ですが、竜巻防護ネットやワイヤーロープで 浮きやすいものを固定するのはもちろんですが、原子炉建屋や主要建物については飛来物の貫通評価までなされています。個人的には、この「竜巻影響評価」を読んで、「竜巻がきても大丈夫だな・・・」との感触を得ましたが、危惧を持たれている方の感覚とは少し違うのかも知れません。
ただ災害対策の場合、難しいのはコストとの兼ね合いです。ゼロリスクを求めると、あらゆる身の回りの出来事に過剰に反応しないといけなくなってしまいます。どうやってリスクとリターンの折り合いをつけるのかは、議論によって深めるしか方法が無いように思います。
「竜巻のふしぎ 」 共立出版