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新幹線の大幅減便の衝撃 ダイヤは苦心と工夫で成立、その内容は?

小林拓矢フリーライター
北海道新幹線も減便、ふだんより時間がかかる(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

 北へ向かうJR北海道・東日本・西日本の5月28日からの新幹線減便ダイヤが、13日に発表された。西へ向かう東海道・山陽新幹線は5月11日からすでに減便ダイヤが始まっている。北への東北新幹線や北陸新幹線はどうダイヤを組み替えるのか、大きな注目を集めていた。

 これらの新幹線は東海道新幹線のようにパターンが決まっているわけではなく、高頻度の運行が行われているわけでもない。しかしその代わり、利用する人は時間を決めて利用し、在来線との接続も確保しなくてはならないという課題もある

 単純に本数を減らした、というだけではなく、ダイヤの調整を細かく行い、利用者に不便がないようにということで減便ダイヤが成立した。

 ただしその代わり、犠牲を払わなければならないケースも見られた。

「かがやき」運休の北陸新幹線

 北陸新幹線は、東京から金沢を結ぶ「かがやき」を、全列車運休する。「かがやき」は速達タイプの列車であり、東京・上野・大宮に停車したあとは、長野・富山・金沢のみに停車し、東京圏と北陸圏を結ぶことに特化した列車である。一日に20本運行されていたものが、全列車運転を見合わせる。

 乗客減の状況下、優先的に速達タイプを運行する意義がない、という理由だろう。

 一方、東京~金沢間には「はくたか」という列車もある。この列車は、長野以遠をほぼ各駅に停車するというものであり、長野まででも主要駅に停車する。この列車に、金沢方面への主要駅への利用者も乗車させようということになったのだ。

 単純に「かがやき」のダイヤを運行させず、かつ「はくたか」をもとのダイヤで運行するというものではない。列車によっては、「かがやき」の東京発時刻のものを、「はくたか」の停車駅としたものがあり、長野を境にこの2種類の列車のダイヤが組み合わされたようなものになっている。また、長野までの「あさま」と「はくたか」のダイヤを組み合わせた列車もある。富山~金沢間の区間特急「つるぎ」も2本減便。おそらく関西・名古屋方面への列車が接続しないものを運行しないということになったのだろう。

 こういったダイヤにしないと、ある程度の乗車率は確保できないのだろう。「3密」は避けなければならないものの、もともとのダイヤだとスカスカだったということもいえる。

 一体となって運行系統を形成している上越新幹線のダイヤも見てみたい。

 上越新幹線は、新潟行きの「とき」が減便している。おもに本数を減らしているのは、上毛高原や浦佐といった、利用者が少ない駅を通過するタイプの「とき」である。運行を1時間に1本程度とし、熊谷や本庄早稲田に停車する列車は「はくたか」と分け合っている。またその関係で「たにがわ」は通勤時間帯にしか運行されなくなった。

 速達型の列車をなくし、そうではない列車も運行を集約してなるべく多くの駅に停車をするという方法で移動しなければならない人の権利を確保している。

 では、もっと長距離の移動をしなければならない東北新幹線などはどうなっているのだろうか。

東北・北海道新幹線「はやぶさ」の仙台以遠停車増

 東北・北海道新幹線では、「はやぶさ」の東京~新函館北斗間の列車が11本から8本になる。その一方で新函館北斗までの列車は大宮~盛岡間は原則的には仙台しか停車しなかったが、仙台~盛岡間で各駅に停車するようになっている。「はやぶさ」臨時列車のダイヤと「やまびこ」定期列車のダイヤを組み合わせたものもある。仙台~盛岡間各駅の停車は、この区間を各駅停車で運行する盛岡までの「はやぶさ」や「やまびこ」を補うためのものだろう。

 また、「はやぶさ」に併結されていた「こまち」は、盛岡~秋田間のダイヤに変更が必要のないものだけ残った、という感じだ。たとえば仙台~盛岡間各駅停車の「はやぶさ」は、前後の「はやぶさ」のダイヤを組み合わせて作ったものであり、ふだんの「はやぶさ」が盛岡につくような時間に設定されている。そこさえ外さなければ、東京~仙台間は1つ前の速達形列車のスジを利用しても問題はないのである。

「やまびこ」と「つばさ」の関係も同様だ。「やまびこ」の停車駅と時間を調整し、「つばさ」の福島~山形~新庄間のダイヤには手をつけない。そこで調整の利かない「つばさ」は、運休する。

「こまち」や「つばさ」の調整が難しいのは、線路を共用する在来線とのダイヤ調整には大きく手間がかかるということが挙げられる。

 また東京~仙台間で各駅に停車する「やまびこ」については、小山や那須塩原・新白河通過列車と、白石蔵王通過列車を統合しているものだ。そして「なすの」は通勤時間帯だけの運行となっている。

 東京から北へ向かう新幹線は、複数の新幹線ダイヤを組み合わせ、28日からの運行を行うことになる。速達性は失われるものの、新型コロナウイルスの状況の改善には時間がかかり、もとにもどるにも時間がかかりそうなので、こういった運行計画を立て当面は利用者の利便性を損なわないようにするということだろう。苦心と工夫が見られる運行計画である。少なくとも、東海道・山陽新幹線の11日からの新ダイヤより、細かく調整が行われていると考えてもいいだろう。

「緊急事態宣言」が多くの地域で解除されても、これらの新幹線の多くが目的地とする東京での解除はまだ先だ。乗客が戻るのも時間がかかる。そんな見通しが感じられた。

フリーライター

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学教育学部社会科社会科学専修卒。鉄道関連では「東洋経済オンライン」「マイナビニュース」などに執筆。単著に『関東の私鉄沿線格差』(KAWADE夢新書)、『JR中央本線 知らなかった凄い話』(KAWADE夢文庫)、『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。共著に『関西の鉄道 関東の鉄道 勝ちはどっち?』(新田浩之氏との共著、KAWADE夢文庫)、首都圏鉄道路線研究会『沿線格差』『駅格差』(SB新書)など。鉄道以外では時事社会メディア関連を執筆。ニュース時事能力検定1級。

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