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PTAは「親の義務」でなく「実は任意加入」 入るかどうか決めるポイントは?

大塚玲子ライター
任意ですから、入るか入らないか自分で決められます(写真:アフロ)

 「親の義務」と思われてきたPTAですが、「実は任意加入」ということが最近だいぶ知られてきました。任意ということはつまり、入るかどうかを自分で決められるということです。入るべきか、入らざるべきか? 新学期を前に、考え中の人も多いかもしれません。

 おすすめしたいのは、まず子どもが通う学校のPTAがどんな運営を行っているかを確認することです。PTAというと「泣いてもわめいても役を強要されるおそろしいもの」をイメージするかもしれませんが、現実のPTAは、とてもいろいろです。

 改革を進め、誰も嫌な思いをしないように仕組みをととのえたPTAもあれば、いままさに改善途上のPTAもたくさんありますし、そのどちらでもないPTAもあるので、まずは自分がかかわるPTAの現状を確認してから、判断してはどうでしょうか。

 もしすぐ返事をもらうのが難しそうな場合は、いったん加入を保留してもよいでしょう。新学期は役員さんや先生たちも忙しく、なかなか回答できない場合もあります。入会届があるPTAなら、届出の用紙にその旨を書き添えて提出を。入会届がないPTAは、校長先生に「加入するかどうか検討中なので、決めるまではPTAに私の個人情報を渡さないでください」など、お手紙等で伝えておくことができます。(*1)

*役の強制の有無、会費の額や用途の確認を

 では、実際どんなことを確認すればいいのでしょうか。おそらく最も多くの人が知りたいのは、役(役員や委員、係)を無理にやらされることがあるか、という点かもしれません。つまり「やらない」「できない」といったときにも役をやるよう強要される可能性があるか、ということです。

 具体的にはたとえば、こんな質問が考えられます。

・委員などの人数が、あらかじめ決められているか?

・クジ引きやじゃんけんで、望まないのに役をやらされる可能性はあるか?

・役員決めを欠席したとき、望まないのに役をやらされる可能性はあるか?

・望まないのに役にあたった場合、後から断ることは可能か?

・役をやらないときに「できない理由」を言う必要はあるか?

 PTAではよく「各クラスまたは各学年から何人」というふうに委員の人数が決まっているのですが、するとどうしても、クジ引きやじゃんけんで望まない人が役をやらされることになりがちです(関連記事)。役にあたってから「できない」と言うと非難されやすいので(これを恐れて泣く人が出るのです)、役をやりたくない・できない場合は特に、この点を確認しておくとよいでしょう。

 もし会費がわからない場合は、これも確認を。会費はPTAによって額が異なり、筆者が調べたなかでは年額1000円前後~1万円超えまで、かなり幅がありました(関連記事)。会費の用途を確認するため、総会資料などを見せてもらうのもいいと思います。

 加入方法が不明な場合は、これも確認しておきたいところです。自動加入か、加入意思確認をしているか? 確認している場合はどんな方法か? 入会届はあるか? 加入継続の意思確認を毎年行っているか? などを聞いてみてもよいでしょう。ほかには、PTAの規約(会則)を見せてもらうのもいいと思います。

 さて、では確認する内容が決まったら、誰に訊けばいいのでしょうか。PTAの問い合わせ窓口が公開されている場合は、そこに問い合わせればいいと思いますが、窓口が不明な場合は校長先生宛てにするか、学校経由でPTAにお手紙を渡してもよいでしょう。

*加入しないとき子どもに不利益がないか

 それから、これはもっと後の段階で聞いてもいいと思いますが、「PTAに加入しない選択をした場合に、子どもに不利益がないか」という点も確認が必要かもしれません。

 最近はだいぶ減ってきたのですが、いまだにときどき非加入者に対し「子どもにお祝いのおまんじゅうをあげません」「子どもを登校班からはずします」などと告げるPTAや学校(校長)があるのを聞きます。

 このようなやり方が正しいとは考えられません。PTAはその学校に通うすべての子どものために活動する団体であり、会員限定サービスを行う互助会ではないからです。多くのPTAは長い間、全員強制加入だったため互助会のように思われてきましたが、もし互助会なら、学校はPTAに部屋を提供したり、配布物の配布や回収を先生が代行したりといった特別待遇はできないはずです。

 これまでに滋賀県大津市をはじめ、いくつかの自治体の教育委員会がPTA活動の手引きや通知を出していますが(大津市の手引き)(各教育委員会の通知)、そういったものにも「非加入者の子どもが不利益を受けないよう教育的配慮をすること」などが記されています。

 ですから近頃は子どもへの不利益など示されず、すんなり退会できることが多いのですが、でももし運悪く「お子さんに〇〇をあげません」などと言われてしまった場合は、どうすればいいでしょうか。

 選択肢はいくつかあります。

1・あきらめて入会する

2・気にせず、非加入を選択する

3・交渉して不利益をなくして、非加入を選択する

(非加入を選択して交渉を続ける)

 筆者の好みは2か3ですが、3については近々、実例(Dさんの体験談)を紹介しますので、是非参考にしてもらえたらと思います。

 最後に一つ筆者からお願いですが、もしPTAが残念な運営をしていたとしても、どうか役員さんを責めないでもらえたらと思います。役員さんもたまたま引き受けた人が多く、悪気があるわけではありません。役員さんのなかにも、現状の問題点を改善したいと思っている人はたくさんいます。でも周囲の役員さんや校長先生と考えが合わなくて変えられずにいる、ということもよくあります。

 ですからもしPTAのやり方が賛同しかねるものだったときは、非加入を選択すれば十分でしょう。非会員が存在することはおそらく、PTAが強制をやめ、問題点を改める方向への後押しにもなるはずです。

 ちょうど、こんな話を聞きました。関東地方に住むBさんは1年前、「PTAの活動内容に賛同できないので退会したい」と教頭先生に伝えたところ、「入会届の整備は前向きに検討している」などの話を聞いて、退会を思いとどまりました。しかし残念ながら、この春も入会届はつくられず、改善がなかったため退会することに。

 退会届を出した後、Bさん自身の希望でPTA会長と話をしたところ、実は会長も以前から入会届を整備しようとしており、しかしほかの役員さんたちの反対でかなわかなった、という経緯を知りました。会長は「Bさんが退会しても、子どもに不利益になるようなことは絶対にさせません」と約束してくれたということです。

 「私の退会が、組織が変わる良いきっかけになれば」とBさんは話していました。

  • *1 校長先生が、学校がもつ保護者の個人情報(名簿)を無断でPTAに使わせなければ、自動加入は起き得ません
ライター

主なテーマは「保護者と学校の関係(PTA等)」と「いろんな形の家族」。著書は『PTAでもPTAでなくてもいいんだけど、保護者と学校がこれから何をしたらいいか考えた』『ルポ 定形外家族』『さよなら、理不尽PTA!』『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』ほか。共著は『子どもの人権をまもるために』など。ひとり親。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。ohj@ニフティドットコム

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