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PTAの違法・強制から保護者を守る! 教育委員会のお助け「通知」を一挙公開

大塚玲子ライター
せっかく出された「通知」を保護者もうまく活用したい(ペイレスイメージズ/アフロ)

 秋になり、来年度の「本部役員」探しが本格化したPTAも多いでしょう。本部役員とは、PTA全体を取りまとめる「会長・副会長・書記・会計」といった役職の保護者たちです(名称はPTAにより異なります)。

 本部役員は仕事量が多いため、なり手が見つかりづらい傾向があります。そのため、じゃんけんやくじびきが横行する春の「クラス役員(委員)決め」と同様に、おそろしい選出方法を聞くことがあります。

 たとえば、全家庭に用紙を配って役員の立候補や推薦を募る際、「記入や提出がなければ、本人が立候補したとみなす」ルール。推薦を受けたら否応なく決まった日時に召集され、クジをひくルール。まるで懲罰です。

 PTA以外の団体では当然、そんな選出方法を聞くことはありません。

 本来PTAの加入は任意で、強制は違法であることについても、マスコミではときどき報じられますが、現場への浸透はまだまだです。そのためPTAを退会しようとした保護者が、「PTA=義務」と信じる他の保護者から、「子どもに不利益が及んでもいいのか」などと圧や脅しを受けることもあります。

 逆に、せっかく役員の人たちが「ちゃんと入会届を配って、加入意思を確認しよう」と決めたのに「校長に反対されて頓挫した」などといったケースも「あるある」でよく聞きます。訴訟が起きたとき矢面に立たされるのは保護者なのに、ひどい話です。

 ため息をついていてもPTAは変わりません。放置すればいつまででもこのまま、悲しい思いをする保護者が出続けるでしょう。

 状況を変えるためには、いち保護者である我々自身が動く必要があります。その際、助けとなってくれる強力ツールを、今回は紹介したいと思います。

教育委員会発行の最強通知

 PTAの強制や違法な運営をなくしたいと思ったら、是非PTA会長や校長に見せてほしいのが、以下に紹介する自治体(教育委員会)発行の通知です。

 筆者が把握する限り、これまでに埼玉県、さいたま市、大津市(滋賀県)の教育委員会(*)や、熊本市(*)や杵築市(大分県)(*)の教育長が、PTAを正しく運営するよう、学校管理職に向けて通知を出しています。(*印の3通知も記事のラストに掲載しています)

 該当する地域の保護者はもちろん、それ以外の地域の保護者も、「こういった通知が出ている」と校長や会長に示せば、PTAの改善を働きかけやすくなります。また校長や会長の側も、こういった通知があることで、動きやすくなる場合があります。

 たとえばこちらは、先月(2018年9月)さいたま市教育委員会が出した「PTA活動の円滑な実施に向けて」という通知です。

※画像を大きく掲載するため90度回転させています
※画像を大きく掲載するため90度回転させています

 通知はチェックリスト式になっており、以下の5項目が挙げられています。

1 PTA会長等から入会は任意であること及び入会・退会の方法について周知されている

2 学校において、PTAへの個人情報の提供について、保護者の同意を得ている

3 学校とPTAの会計の管理が明確に区分され、PTA会費の徴収方法について周知されている

4 学校において、PTA会員でない保護者の児童生徒が不利益を被ることや差別を受けることのないよう教育的配慮をしている

5 PTA会長等からPTA役員等の選出について事前に説明がなされ、各保護者の事情に十分配慮した上で選出されている

 加入や活動(役員選出)を無理強いしないことや、学校が保有する保護者の個人情報を無断でPTA活動(会費徴収等)に利用しないこと、加入しない選択をしても子どもに不利益が及ばないことなど、大切なポイントが網羅されています。

 さいたま市教育委員会によると、同通知は「学校にとってのPTA活動の重要性を改めて認識し、魅力を発信してもらうため」に、管理職向けに発行したものだということです。

 この通知の内容が守られれば、多くの保護者が抱くPTAに対する嫌悪感は薄れ、自分からかかわってみたいと思う人が増えることでしょう。

 通知が「実際に役立った」という声も聞いています。

 埼玉県教育委員会は昨年(2017年)1月、他の自治体に先立って管理職向けにチェックリスト(「PTA活動を円滑に推進するための留意事項について」)を出しており、同県内のある中学校のPTA会長は「任意加入の説明や加入届の整備を進める際、学校とスムーズに話し合いができて助かりました」と話していました。

 ほかにも、都内のある小学校のPTA役員からは、「P連(PTAの連絡会)と教育委員会が連名で発行した文書に、PTAの正しい運営方法がきちんと示されていたため、入会意思確認がしやすくなった」というお話を聞きました。

違法をやめさせる指導はおかしくない

 なおこういった通知に対して、「PTAは社会教育関係団体(公の支配に属しないもの)なので、教育委員会が指導するのはおかしい」という声も一部にあるようですが、これには少々反論したいと思います。

 いま現在多くのPTAは、違法と言わざるを得ない状態で運営され、辛い思いをする保護者が少なからず出ています。このまま放置するほうが、よほどおかしいのではないでしょうか。

 たしかに、教委の通知がなくても、保護者たちが自らの力でPTAの運営を適法化できれば理想的だとは思います。ですが、そもそも戦後、各学校にPTAをつくらせて法的根拠のない強制加入を可能にしてきたのは文部省(文科省)や教育委員会、学校なのですから(学校のもつ個人情報の無断流用による)、いまこうして間違ったやり方を改めるべく指導するのは、決しておかしなことではないでしょう。

 PTAの社会教育関係団体としての「活動内容」に教育委員会が口をはさんだら問題ですが、「違法な運営を改める指導」に、間違いもへったくれもないと思います。

 だからといって、保護者のほうも「PTAの問題はオカミのせい」と決め込むのは違うでしょう。戦後70年、このやり方を見過ごしてきた保護者たちにも、十分責任はあります。

 実際のところ、通知が出ただけで変わるほどPTAは簡単なものではありません。もしPTAが正しく運用されていない場合には、改善を求めて校長や会長に働きかける責任が、保護者の側にもあるはずです。

 「上からの通知」と、保護者からの草の根の働きかけ。その両方があって、PTA問題は改善が進んでいくのではないでしょうか。

熊本市・大津市・杵築市の通知

 先に書いた通り、さいたま市のほかにも、各地の教育長や教育委員会がPTA運営を適法化するため、通知を発行しています。以下に実物を掲載しますので、こちらも是非、活用していただけたらと思います。

<熊本市教育長通知 2018年3月>

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<大津市教育委員会通知 2018年3月>

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<杵築市教育長通知 2014年7月>

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ライター

主なテーマは「保護者と学校の関係(PTA等)」と「いろんな形の家族」。著書は『さよなら、理不尽PTA!』『ルポ 定形外家族』『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』ほか。共著は『子どもの人権をまもるために』など。ひとり親。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。ohj@ニフティドットコム

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