新型コロナと豪雨の複合災害。自宅にいるか、避難所に行くかの分岐点は?
豪雨災害の季節を迎える日本
梅雨、豪雨、台風の季節を迎えた。特筆すべきは新型コロナ禍であること。新型コロナと豪雨という複合災害への対応を考えなくてはならない。
気象情報会社ウェザーニューズによると、今年は8月以降に台風発生域の対流活動が活発化し、9月をピークに接近・上陸の危険性が高まるという(「今年の台風は8月から増加、9月がピーク」)。
7月まではインド洋の海面水温が高いために、台風のたまごが発生する地域の対流活動はあまり活発ではなく、台風の発生件数は少ない。しかしながら8月からは太平洋熱帯域でラニーニャ現象が発生する可能性があり、台風発生域の対流活動が活発になる。
全国の自治体は、内閣府・消防庁・厚生労働省の指針を受け、避難場所・避難所の準備をはじめている。具体的には、感染を防止するため、避難場所・避難所の数を増やしたり、段ボールベッドと段ボールの仕切りでゾーニングをしたり、受付、消毒、換気などにも新たな工夫が求められている。
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危険な場所にいる人は避難が原則
そうした自治体の対応を認識しながら、私たちは自分の行動を決めていかなくてはならない。内閣府・消防庁は「新型コロナが収束しない中でも危険な場所にいる人は、避難が原則」と呼びかけるポスターを公開した。
ここには「避難行動判定フロー」が書かれている。
ハザードマップ上に自宅を書き込む
最初に行うのは、自分の住む自治体のハザードマップで、自分の家がどこにあるか確認し、印をつけること。
ハザードマップは、浸水や土砂災害が発生する恐れの高い区域を着色した地図。洪水浸水想定区域(想定し得る最大規模の降雨により河川において氾濫した場合に浸水が想定される区域)、内水浸水想定区域(想定し得る最大規模の降雨により下水道において氾濫が発生した場合に浸水が想定される区域)の浸水深度が色分けされている。
注意して欲しいのは、ハザードマップは随時更新されているので最新版を確認すること。かつては50年から100年に一度の大雨を想定して浸水する場所を示していたが、2015年に水防法が改正され、想定を1000年に一度の大雨と改めることになった。その結果、以前のマップでは浸水想定区域ではなかったが、最新のマップでは浸水想定区域になっていることがある。
ハザードマップで印をつけた場所に色が塗られていたら自宅外へ避難、色が塗られていなければ自宅で避難が基本だが、いくつかの例外がある。
【例外1】色が塗られていなくても周囲に比べて土地の低い場所、崖の側に住んでいる場合は、自宅外へ避難する。
【例外2】色が塗られていても、
- 洪水による家屋の倒壊や崩落の恐れがない
- ハザードマップで示されている浸水深度よりも高い場所に住んでいる(高層階など)
- 浸水しても水、食料などの備え、トイレや排水など衛生環境を確保ができる(何日分必要かは「洪水浸水想定区域図」に記された浸水継続時間を参考にする)
という3つの条件が揃っていれば、自宅での避難も可能。
ただし、例外1、例外2ともに、見極めることが難しいこともあるだろう。もし迷ったら「避難する」と決めておくべきだ。雨の様子を見ながら避難するかどうかを決めるという態度は、逃げ遅れにつながりやすく危険だ。
避難先と避難経路を自分で歩いて確認する
次に自分の避難先を決める。
前述したように、新型コロナの感染拡大を防ぐため、自治体の指定する避難場所・避難所の数は増えているケースがあるから、自治体のHPで確認する。
また、避難所ではなく、安全な場所(ハザードマップで色が塗られていない、かつ、周囲に比べて土地の低い場所、崖の側などではない)に住んでいる親戚や知り合いの家に避難する方法もある。その場合、あらかじめ「災害時には避難させて欲しい」と相談し、水や食糧などの備蓄品の購入や保管について相談しておくとよいだろう。
避難先が決まったら、家族で共有し、いっしょにそこまで歩いてみる。歩くときにはハザードマップを持参し、自宅から避難先までの道中に色が塗られている場所、低い場所、崩れやすい場所がないかを確認する。そのような場所は、実際に避難するときに、水や土砂で経路が塞がれている可能性があるから、別の避難先や避難経路を見つける。
避難するタイミング
避難するタイミングは避難先への距離、避難する人(あなたと同行者)が避難にどれくらい時間がかかるかで決まる。
内閣府・消防庁の「避難行動判定フロー」によると、避難に時間がかかる場合は「警戒レベル3」で、時間がかからない場合は「警戒レベル4」で避難することとしているが、想定浸水地域が広域に渡る場合には、避難場所・避難所が遠くになる可能性があり、より早めの避難が必要になる。そういう意味でも事前に自宅から避難先までの移動シミュレーションをしておくことが重要だ。
ハザードマップの重要性や避難場所・避難所の確認などは目新しいことではないが、豪雨災害のたびに反省点として上がっている。自治体と学校などが連動して、学校教育、社会教育として根付かせる必要があるだろう。小中高校の総合学習、夏休みの自由研究、地域での避難訓練などとして実施していくとよいだろう。