Yahoo!ニュース

植物成長の温かい雨 西~東日本は寒冷前線による雨と風、北日本は温暖前線による雨

饒村曜気象予報士
南から暖気が流入している予想天気図(4月6日9時の予想)

記録的に早いさくらの開花と満開

 令和5年(2023年)は、3月に入ると、最高気温が氷点下という真冬日を観測する地点はほとんどなくなり、最低気温が氷点下となる冬日を観測する地点も減り、逆に最高気温が25度以上の夏日が出始めました(図1)。

図1 夏日と冬日、真冬日の観測地点数の推移(令和5年1月1日~4月5日)
図1 夏日と冬日、真冬日の観測地点数の推移(令和5年1月1日~4月5日)

 これは、大陸からの寒気の影響を受けにくく、南から暖かい空気が流れ込みやすかったためです。

 3月の平均気温は北日本、東日本、西日本ともにかなり高く、昭和21年(1946年)の統計開始以降で北日本と東日本で1位、西日本で1位タイとなっています。

 また、東京など全国105地点で、月平均気温の高い方からの1位を更新しました。

 このため、さくらの開花や満開が記録的に早くなりました。

 東京では、3月14日に統計のある昭和28年(1953年)以降で、令和2年(2020年)、令和3年(2021年)と並んで、最早タイ記録でさくらが開花しました。沖縄・奄美のヒカンザクラの開花を除くと開花の一番乗りです。

 その後も、各地で記録的な早さでさくらが開花し、満開となっています。

 4月に入っても気温が高い日が多く、4月4日には秋田で開花し、これが全国8地点目の最早記録です。東京・横浜など12地点で最早タイ記録ですので、20地点が記録更新ということになります

 4月5日には、鹿児島と山形で桜が満開となりました。

 鹿児島では平年並みですが山形では記録的に早い満開で、仙台でもすでに満開となっています。さくらは、寒さにさらされると、その後の暖かさで、開花が早まるという休眠打破という現象があります。

 平年より寒い冬だった東北地方は休眠打破によって開花が加速し、平年並みの冬であった鹿児島では休眠打破が弱かったために開花が加速しなかったのが原因と考えられています。

 さくらが美しく一斉に咲くのは、厳しい寒さを乗り越えたからですので、地球温暖化によって厳しい寒さがなくなると、一斉に咲くという「さくらが持っている雰囲気」は崩れてきます。

低気圧の接近と温かい雨

 4月6日は、晴天をもたらした高気圧が日本の東海上に移動し、前線を伴った低気圧が接近中する見込みです(タイトル画像参照)。

 西日本は寒冷前線の前面の南から暖かくて湿った空気が入りやすくなり、西~東日本は寒冷前線の前面で、強い南よりの風が吹き、雨の所が多い見込みです。

 また、温暖前線が接近する北日本は雲が多く、東北北部~北海道では昼前頃から雨が降るでしょう。

 西~東日本と北日本は、雨が降る理由は違いますが、ともに植物の成長を促す暖かい雨が降る見込みです。

 24時間降水量は西日本の太平洋側で100ミリと、かなりまとまった雨となるでしょう(図2)。

図2 24時間予想降水量(4月6日6時~7日6時までの24時間)
図2 24時間予想降水量(4月6日6時~7日6時までの24時間)

 日本の東海上の低気圧の勢力が強いため、寒冷前線は6日夜から7日にかけてゆっくり東進しますので、南から暖かくて湿った空気が入りやすい状態は長く続きます(図3)。

図3 予想天気図(4月7日9時の予想)
図3 予想天気図(4月7日9時の予想)

 雨の中心は近畿から東海地方で、24時間雨量は100ミリを超えるところもある見込みですが、寒冷前線通過後の寒気の南下は弱い見込みで、再び気温の高い状態が続くと思われます。

今後の天気

 4月5日は二十四節気の「清明(せいめい)」です。

 万物が清らかで生き生きとした様を示す「清浄明潔」の略といわれてます。

 空は青く澄み渡る頃とされ、4月22日の穀物の成長を助ける雨が降るとされる「穀雨(こくう)」まで続きます。

 各地の天気予報を見ると、低気圧と前線通過後の今週末から来週前半は晴れて気温が高い日が続く見込みです(図4)。

図4 各地の天気予報(4月6日~12日は気象庁、13日~15日はウェザーマップの予報)
図4 各地の天気予報(4月6日~12日は気象庁、13日~15日はウェザーマップの予報)

 つまり、今年の晴雨は、植物の生育を促す暖かい雨で始まり、来週末の低気圧通過で西日本から雨域が広がるまでは、晴れて気温が高く、かといって暑すぎない日々が続く見込みです。

 雨の季節は始まるまでの晴天を有効的に使いたいものです。

タイトル画像、図1の出典:ウェザーマップ提供資料に筆者加筆。

図2、図4の出典:ウェザーマップ提供。

図3の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

饒村曜の最近の記事