巨大宇宙船「スターシップ」の開発の歴史、スペースXに起こる数々の失敗とは!?
前回の記事では、スターシップの壮大な将来計画、そして月と火星への有人着陸を担う重要ミッションについて解説させて頂きました。
本記事では、一筋縄で行かず苦難の連続であったスターシップの開発を詳しく紹介していきます。
史上最強最大の宇宙船「スターシップ」が担う最重要ミッションとは!?
■知られざるスターシップ開発秘話
スターシップの開発が発表されたのは2016年。当時の名前はマーズ・コロニアル・トランスポーター「MCT」と呼ばれていました。この頃からすでに火星飛行を目標に据えていたんですね。そしてそのあとも、インタープラネタリー・トランスポート・システムや、ビッグファルコンロケット、など名前を変遷します。
そして2018年、現在のスターシップ、スーパーヘビーに落ち着いたのです。当初は白いボディであった外観も、カーボンからステンレスへ変更されることとなり、スターシップでは銀色となりました。
■完全に再使用可能な宇宙船
スターシップの特徴のひとつは「完全に再使用できるロケットと宇宙船」という点です。従来のロケットは、機体を打ち上げごとにすべて使い捨てており、それが高コスト化の要因のひとつとなっていました。スペースXはすでにファルコン9ロケットの再使用に成功していますが、第1段機体とフェアリングのみであり、コストダウンの幅は限られています。
そこでスターシップでは、ロケットにあたるスーパーヘビー、宇宙船にあたるスターシップともに、機体のすべてを再使用できるようにします。旅客機のように何度も飛ばせるようにすることで、打ち上げをはじめとする火星飛行のコストを大きく引き下げることを目指すとのことです。
■七転び八起きで成功した着陸試験
2019年には、最初の試験機であるスターホッパーが完成し、高度150mの飛行試験に成功します。それからは、実物大のスターシップによる高度10kmの飛行試験が実施されました。しかし、中々着陸に成功することができません。そして3回目の試験では、何とか着陸には成功するものの、燃料であるメタンが漏れてしまい、着陸から約8分後に爆発してしまいます。
そして、2021年ついに5回目の高高度飛行試験にて着陸に成功!機体も爆発することなく試験を終えています。
■まさかの環境問題による開発停止!?
着陸に成功したスターシップですが、次に新たな問題に直面します。それは、アメリカ連邦航空局 (FAA) の環境影響評価が終わらず、長らく試験は停滞してしまったのです。スターシップの開発拠点は、テキサス州ボカチカでSpaceXが所有している「スターベース」です。遅延してしまっている主な理由は、ボカチカでのスペースXのロケット試験が近隣の野生動物保護地区などに、環境面で重大な影響を与えないかどうかの判断が争点となっていたからでした。さらには、環境保護団体からは既に1件訴訟を起こされているという状況です。
そのような背景から、打ち上げは幾度となく延期され続けていました。マスク氏からは、「スターベースはロケットの試験場として利用し、実際の主要な打ち上げは、ケネディ宇宙センターが有力と考えています。」という旨の発言もあった程です。
そして2023年、何か月にも及ぶ遅延と議論の末、FAAは遂にスペースXに対し、スターシップの打ち上げに必要な環境許可を発行したのです。技術的なチャレンジ以外にも、ロケットの打ち上げにはたくさんの課題があるんですね。
本記事では、スターシップの開発の始まりと、打ち上げの準備が整うまでを解説させて頂きました。次回から、いよいよスターシップの打ち上げ結果について解説していきます。
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