ジェット&デトネーション切替エンジンを開発したPDエアロスペース、航空機が宇宙を往復する将来に期待
11月14日、名古屋大学とJAXAが中心となり開発した「デトネーションエンジン」の宇宙実証に成功したことで話題となりました。本記事では、世界で初めて「ジェットエンジン」と「デトネーションエンジン」を切り替える単一エンジンを開発している、日本企業のPDエアロスペースをご紹介します。
■衝撃波を利用して進むデトネーションエンジン
デトネーションエンジンとは、火炎の速度が音速を超える爆発的な燃焼現象「爆轟」で発生した衝撃波を推進力とすることで、小型軽量、かつ既存のエンジンよりも低価格で安く高速飛行をさせることができるのです。このエンジンが実用化されれば、従来のロケットより効率の高い宇宙往還機の実現が期待されます。11月14日には、名古屋大学とJAXAが開発したデトネーションエンジンの宇宙実証に成功しています。
■ロケットエンジンの課題
従来のロケットエンジンは酸化剤を搭載し、飛行中に燃料を燃焼させています。そのため、空気中を通過する際も酸化剤を使用する必要があり、重量増加の大きな要因となっています。それでは、空気中で飛行している航空機はどうでしょうか。従来の航空機に搭載されているジェットエンジンは、空気中の酸素を利用するため、酸化剤を搭載する必要がありません。しかし、高度30km以上の空気が薄い領域では燃焼をさせることができず、ジェットエンジンのみでは宇宙空間に到達することができないのです。
そのため大気中と宇宙空間をまたがって飛行するには、打ち上げた瞬間からロケットエンジンを使用するか、もしくは途中の高度までジェットエンジンで上昇し、それ以降は別のロケットエンジンを使用するしかありませんでした。まさに、飛行中の航空機からロケットを宇宙へ空中発射させる、ランチャーワンのような方式です。しかし、一つのエンジンでジェットとロケットを切り替え、地上と宇宙を往還する完全再利用型宇宙往還機は、いまだ実用化には至っていなかったのです。
■ジェット/ロケット単一エンジンの開発に成功
日本の企業「PDエアロスペース」では、大気圏内はジェットエンジン、宇宙空間ではデトネーションエンジンと、燃焼モードを切り替えることのできる単一のエンジンの開発を続けています。
2021年、PDエアロスペースは新たにデトネーションエンジンを搭載した、ジェット/ロケット切り替えエンジンの燃焼試験に、世界で初めて成功しました。しかし、当時の推進力は小さく、宇宙往還機が行き来できるほどのパワーを持ち合わせていませんでした。そこで、2024年5月にはさらに発展した単一エンジンの開発し、実用レベルの推力を得ることに成功しました。
将来的には、航空機のように離着陸し、宇宙を往復する有人宇宙船の開発を行っていくとのことです。こちらも今後の開発が楽しみですね。
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