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2024年のゲーム業界展望 本命は任天堂の後継ゲーム機 対抗はPS5の年間出荷数

河村鳴紘サブカル専門ライター
中国のゲームイベントで盛り上がる参加者たち(写真:ロイター/アフロ)

 「ゼルダの伝説」や「スイカゲーム」のヒット、「モンスターハンター」シリーズの最新作発表などが話題になった昨年のゲーム業界。今年は何が注目を集めるのでしょうか。展望を考えてみます。

◇任天堂の次のゲーム機は?

 今年の注目は、何といっても、「ニンテンドースイッチ」の後継ゲーム機は出るのか? という点に尽きるでしょう。後継ゲーム機の存在そのものは、任天堂の決算発表などで少し出てくるものの、内容はもちろん、時期も何も発表されていません。しかし、5~7年でゲーム機が“代替わり”するゲームビジネスの仕組みなどから、大手メディアの記事で「24年度中の投入が有力視」などと予想されたりしています。

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 情報の信頼性が高い大手メディアとは違い、PV増を重視する一部のネットメディアでは、うわさと事実のラインをあいまいにして、過激に脚色する傾向にあります。うわさは止めようがなく、事実と区別して理解していれば問題ないのですが、困ったことに混同する人がいるわけで、やっかいなのです。

 そして、SNSでのリーク(機密漏洩とされる情報)は、PS5の発売前(2019~2020年)でも過熱、時期や価格について常時飛び交って、関係者が苦笑するほどでした。つまるところ、うわさのターゲットが、任天堂の後継ゲーム機になっただけとも言えます。多くの予想が出れば、そのうちのどれかは(概ね)的中するでしょう。そして「この情報は当たった」として盛り上がるので、これまたややこしくなります。

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 話を戻します。順当にいけば、「今年、任天堂の新型機が出そうだ」という予測が出るのは、前述した通りゲームビジネスのサイクルを考えると、理解できます。ただし、興味深いのは、任天堂が後継ゲーム機の発売をなるべく「後ろ倒し」にしたい様子を見せていることです。任天堂のゲーム機の売り上げ自体は、既に右肩下がりですが、2023年に「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」が大ブレークしたようにソフトは依然として売れています。決算を見ても、とても下り坂とは思えません。

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 ゲーム機の“世代交代”は、リスクがあるのは確かです。しかし、ソニーがPS4からPS5への“世代交代”を(転売に苦しめられたものの概ね)成功させたように、任天堂も同種のオンラインサービスを展開していることから、“世代交代”のリスクは、以前よりは軽減されるでしょう。「Wii」や「ニンテンドーDS」の後継ゲーム機では出荷数が激減した経験のある任天堂としては、今度こそしっかりとした“世代交代”をしたいところです。

 そして、“世代交代”が、本当に今年になったとしても、予想外の展開になったとしても、そのまま話題になるのは必至でしょう。商品をヒットさせるのは、多くの人の話題になるほうが有利。そう考えると、現時点では任天堂の思惑通りかもしれません。

◇PS5の年間出荷数 計画に届くか

 今年の話題の“対抗”は、春に発表される見通しの、PS5の今年度(2023年4月~2024年3月)出荷数でしょう。

 計画では2500万台で、達成すればもちろんソニーのゲーム機としては最高記録ですが、計画を上回るのは高いハードルです。ただし、仮に計画未達だったとしても、これだけ高額なゲーム機が世界で売れるのは、恐ろしい限り。PS5は日本市場ではいまだにニンテンドースイッチの勢いに押されていますが、欧米では売れており、大勢に影響はないでしょう。

 いずれにしても年間でゲーム機が2500万台近くも売れるとその後は、鈍化・右肩下がりになる未来が待ち受けます。そうなると、PS5の性能をアップさせた強化版が、同じく今年に出るのか……というのは、これまた注目の一つになります。

 ゲーム機の開発は、数年先を見通しながら進めるもの。後はどこで発売するタイミングを決めて、部材を調達するか……というところにかかってきます。PS5は、悪質な転売に苦しめられた経緯があるため、需要を正確に把握して潤沢な出荷数を用意するなど、念入りな対策が必要になりそうです。

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◇「FF7リバース」の話題は見事

 ゲーム機の話ばかりになりましたが、ソフトのビジネスとして興味深いのは、2月発売予定の「ファイナルファンタジー7リバース」です。同作は、1997年の初代PS向けに発売された「FF7」が元になっていて、全3部作で現在の技術でリメークされたのが特徴。今回は2作目になるのですが、タイトルに「再生」や「復活」を意味する「リバース」を入れたこともあってか、ゲームファンがざわついています。

 FF7では、ヒロインの一人が非業の死を迎えるのですが、もしかしたら「何か違う展開があるかもしれない」というわけです。もちろん、その期待が外れて原作(PS版)のストーリー通りであれば、それはそれでいろいろ言われる気がするのですが、これはもう「FF」シリーズの宿命なのかもしれません。いずれにしても、結果はプレーしてのお楽しみ……となるのですが、話題の提供という意味では見事な手法です。

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 期待という意味では、「モンスターハンターワイルズ」(PS5、Xbox Series X、PC)の及ぼす影響も興味深いところ。発売は2025年なので、今年の話ではない……と考えていたのですが、発表直後から、実質的な前作の「モンスターハンター:ワールド」で、プレー人数が大幅に増えたそうです。同作の発売で、日本市場で後押しを受けそうなのがPS5で、少なくともプラスの効果が期待できるでしょう。

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 目立つのは、どうしても家庭用ゲーム機なのですが、ゲーム産業の市場規模でいえば、スマホゲームの動きも無視できません。今では中国の開発したゲームの評価は高く、資金力もあるため、新たなブレークもありうるでしょう。また「スイカゲーム」のように、想定外の話題もぜひ出てほしいと願う次第です。

サブカル専門ライター

ゲームやアニメ、マンガなどのサブカルを中心に約20年メディアで取材。兜倶楽部の決算会見に出席し、各イベントにも足を運び、クリエーターや経営者へのインタビューをこなしつつ、中古ゲーム訴訟や残虐ゲーム問題、果ては企業倒産なども……。2019年6月からフリー、ヤフーオーサーとして活動。2020年5月にヤフーニュース個人の記事を顕彰するMVAを受賞。マンガ大賞選考員。不定期でラジオ出演も。

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