「ソニーは任天堂を見習え」は本当? 起きた誤解とイメージ戦略
任天堂は家庭用ゲーム機「ニンテンドースイッチ」の後継機種(発売時期未定)で、ニンテンドースイッチ用ソフトが引き続き遊べること、有料ネットワークサービス「ニンテンドースイッチオンライン」も利用できることを発表しました。SNSで歓迎される一方、あることが話題になりました。
ターゲットは、ソニーと家庭用ゲーム機「PS5」。任天堂のように、ソニーもPS5で前のゲーム機のソフトを遊べるようにするべきで、「ソニーは任天堂を見習え」「学べ」という趣旨の指摘でした。ですが、実はこれは誤解。PS5でPS4用ソフトは遊べるのです。そして有料サービスを使えば、初代PSなど昔のソフトも楽しめます。
間違いや勘違いは、誰でもするもの。教訓としては、SNSで発言するときは、一呼吸置いたり、少しでも調べると失敗の確率が減る……ということでしょうか。
同時にSNSで間違いを指摘するにしても、他にやり方がある気がします。相手に落ち度があるとしても、罵倒(ばとう)することが第三者からどう見えるのか。他者への配慮があってもよさそうです。「そんなことは百も承知。ワザとやっているのだから黙れ」と言われると、何も言えませんが。
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それはそれとして、この出来事を別の視点から考えてみます。
PS5のブランディングを考えると、一連の誤解はPS5にとっては歓迎されません。誤解であっても、投稿をした人たちは、ソニーやPS5に悪いイメージを持っていることは変わらないでしょう。
PS5は、高額転売問題、数度の値上げ、PS5Proの高価格もあってか、「今のソニーには何を言っても良い」という雰囲気を感じます。なおニンテンドースイッチは、前世代のゲーム機「Wii U」や「ニンテンドー3DS」のソフトが遊べません。そう考えると、任天堂が持たれているイメージは相当良いのでしょう。
確かに任天堂は、ゲーム機の修理対応などの良さが「神対応」などとネットでよく話題になります。特にこの手の話は、SNSで自主的に語られるので余計にイメージアップになるでしょう。私も昔、ニンテンドーDSの修理依頼をすると、有償の予定が無償になって驚いたことがあります。同時期に、PS2の外付けハードディスクの修理で結構な費用がかかったので、余計にそう思いました。
ですが、PS5も当初は本体を赤字で売ったり、日本での発売時期を欧米と同時発売にするなど、ソニーもゲームファンのために懸命に対応していました。その結果、人気になりすぎて、品不足が加速して批判されたのは皮肉ですが……。
PS5はゲーム機本体(7万2980円~)こそ高額ですが、月額1300円の有料ネットワークサービス(PSプラスのエクストラ)に入れば、それだけで人気作も含めて数百本のソフト(PS4、PS5)が遊べます。新作にこだわらないのであれば、充実したサブスクが用意されているので、お得になる人もいるはずです。
誤解はいつでも受ける可能性がありえます。日本市場でのPS5のイメージアップを図ること、誤解を受けづらくし、かつ提供中の売りのサービスをより広く知ってもらうことも含めて、今一度販促に力を入れても良いのではないでしょうか。
誤解を減らして、サービスや利点を正しく知ってもらうことで、ゲーム機が売れる可能性も増え、市場の活性化が期待できるのですから。