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ゲーム「ポケモン」ニンテンドースイッチだけで累計1億本目前 なぜここまで好調なのか

河村鳴紘サブカル専門ライター
2023年に米ニューヨークで開催された感謝祭イベントに登場したピカチュウ(写真:REX/アフロ)

 「ポケモン」の愛称で人気のゲーム「ポケットモンスター」シリーズ。ニンテンドースイッチ向けに展開したソフトが好調で、累計出荷数が9900万本となり、1億本の大台突破が目前です。これまでアニメの放送があり、ゲームソフトも売れていましたが、なぜここにきて「さらに」売れるようになったのでしょうか。

◇スイッチで各1000万本“上乗せ”

 「ポケットモンスター」シリーズは、不思議な生き物「ポケモン」を集め、冒険するRPGで、ポケモンを交換したり、対戦できるのが特徴です。1996年に発売された「ポケットモンスター 赤・緑」(ゲームボーイ)が出て以降、シリーズ累計4億8000万本以上を出荷しています。

 「ポケモン」の本編シリーズは、ニンテンドーDSやニンテンドー3DSで展開したとき、それぞれの出荷数は各1500万本前後で推移していました。ところがニンテンドースイッチ向けの「ポケットモンスター ソード・シールド」や「ポケットモンスター スカーレット・バイオレット」は各2500万本前後に急増。1000万本も“上乗せ”しています。

 ニンテンドースイッチ本体が売れたことも大きいでしょうが、それならばニンテンドーDSのときも同じように売れても良いはず。ニンテンドースイッチ向け全ソフトの累計出荷数が13億610万本(9月末時点)ですから、実に8%弱を「ポケモン」が占める計算になっています。何が違うのでしょうか。

任天堂の決算補足プレゼンテーション資料で明かされた「ポケットモンスター」シリーズの累計数
任天堂の決算補足プレゼンテーション資料で明かされた「ポケットモンスター」シリーズの累計数

◇「ポケモンGO」で中高齢者“ゲット”

 ターニングポイントは、社会的現象になったスマホゲーム「ポケモンGO」(2016年配信開始)でしょう。特に同作は、スマートフォンの特性上簡単な操作で楽しめるため、中高齢者への人気が高く、長期にわたって遊ばれていることが分かっています。既存のゲームソフトでは手に届かなかった層を“ゲット”し、「ポケモン」の認知度・好感度を全年齢に押し広げる役割を果たわけです

 コンテンツに触れて認知すると、好感を持つようになるのは当然。そのうちの何割かは、スマホゲームだけでなく、ニンテンドースイッチのソフトに手を延ばす流れになりました。しかも全世界で展開するコンテンツの話です。

 そして、毎年のように何かしらの「ポケモン」コンテンツが出ています。今年であれば、先月サービスを始めたばかりにもかかわらずダウンロード数が3000万を突破したスマートフォン用ゲーム「ポケモントレーディングカードゲームポケット(ポケポケ)」もそうですし、7月に配信した睡眠にフォーカスした「ポケモンスリープ」もあります。同じポケモンをテーマにしても、それぞれ内容が違うため、好みのものが選びやすいのも利点です。

 2025年にはニンテンドースイッチ向けに「ポケットモンスター LEGENDS Z-A」が発売予定です。いろいろなタイプの作品が出ることについて「タイトルの乱発」という批判もあるのは確かです。ただし「充実」と「乱発」は主観的な要素が大きく、判断が難しいところ。ともあれ「ポケモンGO」で得た人気を多くのコンテンツが「受け皿」になって受け止め、本編ゲームの売上拡大につながっています。「数字」だけを見れば、ゲームソフトの購入者が激増しているのは明らかです。

◇現実世界の取り組み

 さらにリアルイベント、ラッピングの乗り物、地方自治体とのコラボ企画、伝統工芸とのタイアップ、子ども食堂の支援など、現実世界でのさまざまな取り組みをしていることもコンテンツのブランディング向上にプラスでしょう。

 アニメやゲームはデジタル(仮想)の中にすぎず、人気が目に見える形になりづらい面があります。しかし実際の世界で自分の好きなコンテンツを見たり、触れることがあれば、コンテンツへの愛着が一層高まるわけです。

 こうした取り組みは、短期の利益にはなりませんが、お金で買えない思い出になり、ブランドをさらに強化。二世代三世代で楽しむ素地が整うのです。アニメ、ゲーム、スマートフォンのアプリ、そして現実世界での企画。世代を超えたファンを獲得すると共にコンテンツの充実を図り、「ポケモン」の魅力を高めることでさらに多くの支持を集めていると言えそうです。

サブカル専門ライター

ゲームやアニメ、マンガなどのサブカルを中心に約20年メディアで取材。兜倶楽部の決算会見に出席し、各イベントにも足を運び、クリエーターや経営者へのインタビューをこなしつつ、中古ゲーム訴訟や残虐ゲーム問題、果ては企業倒産なども……。2019年6月からフリー、ヤフーオーサーとして活動。2020年5月にヤフーニュース個人の記事を顕彰するMVAを受賞。マンガ大賞選考員。不定期でラジオ出演も。

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