『バンドリ!』有明アリーナで初の4連日ライブ 業界初を目指し続けるブシロードの挑戦
音楽活動に青春を燃やす女子高生達を描いた『BanG Dream!』(バンドリ!)。総合エンターテイメント企業・ブシロードグループが展開するメディアコンテンツで、スマートフォンゲームやアニメ、そして音楽ライブなど多岐にわたって展開しています。
音楽ライブにおいては、キャラクターを演じる声優達が実際に演奏し、歌っているのが『バンドリ!』最大の特徴といえます。作中には主に7つのバンドが登場(2022年11月現在)し、このうちPoppin'Party(ポッピンパーティ)、Roselia(ロゼリア)、Morfonica(モルフォニカ)、RAISE A SUILEN(レイズアスイレン)の4バンドは、声優自身が楽器を演奏し、リアルバンドとしても活動しています。
バンドとしての人気も高く、発売したCDが各種売上チャートで一桁上位を取ることも珍しくありません。1位に輝くこともたびたびあり、例えばPoppin'Partyが2021年1月6日に出したシングルCD「Photograph」が週間シングルランキング1位、Roseliaが22年5月18日にリリースしたミニAlbum「ROZEN HORIZON」がデイリーアルバムランキング1位に輝いています。
四者四様のバンドの個性やライブ演出
こうした中、9月22日(木)から25日(日)の4日間、東京の有明アリーナで音楽ライブ「BanG Dream! 10th☆LIVE」が開かれました。日ごとに4つのバンドがそれぞれ単独ライブを行う形で、1日目がRoselia、2日目がMorfonica、3日目がPoppin'Party、4日目がRAISE A SUILENの演奏が披露されました。バンドごとに楽曲の個性が際立っており、全く異なるライブ演出なのも特徴です。
初日に演奏したRoseliaは、「頂点を目指す」ことを基本方針としているバンドです。そのため、作中屈指の高い技術を持つバンドとして描かれており、リアルでも高い人気を誇ります。全体的にゴシックな曲調が特徴で、楽曲の世界観が統一されているのも魅力となっています。
声優も含めたリアル人気が高いこともあり、ライブ中の幕間の演出では、声優が様々な企画に対し、演じるキャラを崩さないまま取り組めるかを競う「キャラ設定をくずしちゃいけない!!(通称:キャラくず)」の映像が流され、今回は4バンド中唯一実写映像が使われています。22日(木)は4日間で唯一平日にもかかわらず、全国から大勢のファンが会場に集まりました。
2日目のMorfonicaは2020年に結成されたばかりのバンドです。ボーカルやギター、ベースやドラムといったパートに加え、バイオリンが入っているのがMorfonicaの強みで、このバイオリンが幻想的な世界観を彩っているのが特徴です。作中ではボーカルの倉田ましろが描く独特の世界観を音楽で表現している側面があります。今回のライブでは、朗読によるストーリー仕立ての演出が展開されました。
3日目のPoppin'Partyは『バンドリ!』で最初に結成されたバンドで、2015年から活動を続けています。等身大の女子高生を描いているバンドで、全体的に明るくコミカルな曲調が多いのが特徴です。作中でもリアルでも、音楽の楽しさを多くの人に伝えています。
シリーズで一番長い歴史から、楽曲はオリジナルのものだけで60曲近くあり(22年10月末時点)、ライブではどの曲が演奏されるのかというワクワク感も際立ちます。また、7年以上にわたる活動期間から演奏技術も完成されてきており、CD音源に対しリアルの演奏のほうが驚くバンドといえるかもしれません。幕間の映像ではスマートフォンゲーム『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』の様式に合わせたオリジナルストーリーが描かれ、Poppin'Partyファンだけでなく、『バンドリ!』ファンが唸るような映像が流されました。
4日目のRAISE A SUILENは、主に『バンドリ!』シリーズでもリアルバンドではない他の3つのグループ「Afterglow(アフターグロウ)」「Pastel*Palettes(パステルパレット)」「ハロー、ハッピーワールド!」のバックバンドを務めていたメンバーによって2018年に結成されたバンドです。
メンバーの一部はプロのミュージシャンとしての活動実績もあり、一般の音楽アーティストと比較しても遜色ない高い技術が特徴です。楽曲の特徴としてはロックを基調としながらも、電子音楽による打ち込み音も混ざるエレクトリックサウンドが魅力的です。
幕間は、チュチュ役の紡木吏佐によるDJパフォーマンスに乗っかって各楽器がアドリブ演奏をするというもので、楽曲間も自分達の演奏で魅せようという演出になっています。会場のファンが振るペンライトの色を見ても、キャラクター一人一人の色より、バンド全体のカラーを振っている人が多い傾向にあります。
業界「初」にこだわるブシロードの戦略
今回の4連日ライブの狙いは何でしょうか。ブシロードグループの木谷高明社長は、業界初の取り組みを目指し続けることについて、筆者の取材に対し以前こう話しています。
「エンタメって出てくるのは作品なんですけれども、ファンはある意味で『作り手の生き様を見ている』と思います。それが最も形として現れるのが、アーティストのライブといえます。ライブイベントに来てくださるお客さまは、その作品のファンであると同時に、その目の前で歌っているアーティストの生き様をまさに見ていると思うのです。なので、そのドラマを生み出すためには挑戦し続けなきゃいけません」
筆者も数多くの音楽ライブに参加してきていますが、『バンドリ!』をはじめとしたメディアコンテンツの中でも、音楽ライブは一同にリアルにファンが集まり、情報を瞬時に共有できる空間として機能しています。例えば演者が何か演奏を失敗してしまった場合、声援を送ったり、コロナ禍の中では代わりに盛大な拍手を送ったりして、双方向にコミュニケーションが取れる空間として成り立っています。ライブの終盤でファン待望の新情報が発表されれば、その喜びを知らない人同士で分かち合うことになります。
これはコロナ禍で音楽ライブ配信が普及し、どんなにオンライン化が進んでいようと何一つ変わっていません。そしてこうした一つ一つの出来事は、ブルーレイなど映像記録として保存され、そのコンテンツの歴史として永遠に刻まれることになります。こうしたコンテンツの歴史的空間に立ち会えるのも、音楽ライブの醍醐味といえます。
初の発声可能なドームライブ
そして新たな「業界初」といえる試みが、11月にも展開されます。11月13日(日)には埼玉県所沢市の西武ドームで「ブシロード15周年記念ライブ in ベルーナドーム」が開かれます。このライブはブシロードではコロナ禍となって以降初の声出し可能なライブとして催されます。アニメエンタメ業界全体を見渡しても、ドームライブ規模のものでは例がないと筆者はみています。
この前日の12日(土)には、同じくベルーナドームで「BanG Dream! Special☆LIVE Girls Band Party! 2020→2022」が開かれます。これは2020年5月3日に同地で開催予定だったライブの2年半越しの開催となります。こちらもまさにコロナの雪辱を果たすライブイベントといえるでしょう。
海外ではマスク生活も過去のものとなり、国内もコロナ禍前の日常を少しずつですが取り戻そうとしています。ドームライブで発声ありでも大きなクラスター源にならないことがわかれば、非常に大きな一歩になることは違いありません。ライブでのコールは貴重なファン文化の一つであっただけに、その復活に期待しています。
「BanG Dream! Special☆LIVE Girls Band Party! 2020→2022」や「ブシロード15周年記念ライブ in ベルーナドーム」のライブチケットは、11月8日現在でも販売中です。
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