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梅雨前線上に低気圧が発生し大雨が降った東北を含めてほぼ全国的に雨、記録的な猛暑から平年並みの暑さへ

饒村曜気象予報士
梅雨前線に流入する湿った空気と西日本から東日本太平洋側の晴天域(7月18日9時)

記録的な猛暑

 令和5年(2023年)7月中旬は、太平洋高気圧の強まりとともに、東北南部から東日本・西日本では晴れて気温が記録的に高い日が続いています。

 これまで、今年の最高気温は7月16日に群馬県・桐生で観測した39.7度ですが、7月17日には愛知県・豊田で39.1度、7月18日には三重県・桑名で39.0度と、連日40度近い気温を観測しています。

 7月18日の最高気温が35度以上の猛暑日は163地点(気温を観測している全国915地点の約18パーセント)、最高気温が30度以上真夏日は573地点(約63パーセント)、最高気温が25度以上の夏日は774地点(約85パーセント)でした(図1)。

図1 夏日、真夏日、猛暑日の観測地点数の推移(4月1日~7月18日)
図1 夏日、真夏日、猛暑日の観測地点数の推移(4月1日~7月18日)

 令和5年(2023年)は、7月17日の猛暑日195地点(約21パーセント)と真夏日647地点(約71パーセント)、7月10日の夏日884地点(約97パーセント)が最多ですが、7月18日はこれらを更新できませんでした。

 北日本から北陸の気温が上がらなかったのが、最多にならなかった理由ですが、平年より気温が高い、記録的な猛暑が続いていたことには変わりがありません。

 ただ、7月19日の全国最高気温は36度程度と40度に迫ることもなく、猛暑日は10地点程度、真夏日は375地点程度と、前日より大きく減りますので、記録的な猛暑も一服というところです。

 とはいえ、夏日が740地点程度とあまりかわらず、記録的な猛暑から平年並みの暑さになったということができるでしょう。

 これは、梅雨前線が活発化したことによるものです。

活発になった梅雨前線

 太平洋高気圧の強まりによって押し上げられた梅雨前線によって、7月15日は秋田県を中心として記録的な大雨となりました。

 平年7月分の雨が半日で降るという大雨により大きな被害が発生したのですが、そのあと、梅雨前線は弱まって一時的に天気図上から消えました。

 しかし、7月17日に朝鮮半島から日本海で顕在化した梅雨前線が東北地方に伸びて停滞し、7月18日は、秋田県から山形県で再び大雨となっています。

 これまでの大雨により地盤が緩んでいる所では、少しの雨でも災害が発生するおそれがありますので、土砂災害や河川の増水等に警戒してください。

 そして、7月19日から20日は、梅雨前線の上で発生した低気圧が北陸から東北地方を通過する見込みですので、北陸地方でも雨量が多くなる可能性があります(図2)。

図2 予想天気図(左は7月19日9時、右は7月20日9時の予想)
図2 予想天気図(左は7月19日9時、右は7月20日9時の予想)

 また、梅雨前線に向かって、暖かくて湿った空気が流入して大気が不安定となり、そこに上空の寒気が入ってきますので、7月19日は西日本を中心に広い範囲で激しい雷雨となるでしょう(図3)。

図3 発雷確率(7月19日昼過ぎの予想)
図3 発雷確率(7月19日昼過ぎの予想)

 東北南部では、24時間に100ミリ以上のまとまった雨となると予想されています(図4)。

図4 24時間予想降水量(7月19日6時~7月20日6時)
図4 24時間予想降水量(7月19日6時~7月20日6時)

 7月20日は低気圧が通過し、上空の寒気が南下してきますので、東北南部から関東を中心に大気の状態が不安定となり、発雷の可能性が高くなっています(図5)。

図5 発雷確率(7月20日昼過ぎの予想)
図5 発雷確率(7月20日昼過ぎの予想)

 長い梅雨の中休みの地方が多かったのですが、ほぼ全国的に梅雨空が戻る見込みです。

梅雨明けはいつ?

 令和5年(2023年)は、現時点で梅雨明けしたのは沖縄地方と鹿児島県奄美地方だけです(表)。

表 令和5年(2023年)の梅雨入りと梅雨明け
表 令和5年(2023年)の梅雨入りと梅雨明け

 各地の天気予報をみると、梅雨明けをした沖縄・奄美地方の名瀬と那覇はお日様マーク(晴れ)が続く予報ですし、梅雨がないとされる北海道の札幌も傘マーク(雨)の予報は1日しかありません(図6)。

 梅雨期間の鹿児島(九州南部)から秋田(東北北部)では、7月19日~7月20日の雨のあとは晴れますので、7月21日に梅雨明けの可能性があります。

 もし、梅雨明けが7月21日なら、東北・北陸は平年より早く、その他の地方は平年より遅い梅雨明けということになります。

 ただ、週末から週明けに傘マーク(雨)が予想されていたり、雲マーク(くもり)が多く予想されていたりという予報ですので、このことにより、梅雨明けがさらに遅くなる可能性があります。

 今年は梅雨明けがはっきりしない年になりそうです。

 過去に、梅雨明けがはっきりしない年は、不順な夏になることが多い傾向があります。

 また、現在は、冷夏になりやすいとされる東部太平洋赤道域の海面水温が平年より高い現象(エルニーニョ現象)が発生しているにもかかわらず、現在は記録的な猛暑となっているなど、天気予報が難しい年となっています。

タイトル画像、図3、図4、図5、図6の出典:ウェザーマップ提供。

図1の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図2、表の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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