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拳で人生を変えた男、YA-MANが立ち上げる、全試合オープンフィンガーグローブマッチの大会とは?

清野茂樹実況アナウンサー
FIGHT CLUBに参戦表明したYA-MANと山口兄弟(筆者撮影)

今月19日、格闘家のYA-MANが新たにペイ・パー・ビュー格闘技イベント「FIGHT CLUB」をプロデュースすることを発表した。全試合オープンフィンガーグローブで対戦するキックボクシングで、第1回大会には自身も出場を明言している。今、格闘技界で最も勢いのある男の一人、YA-MANが作り上げるこの大会が生まれた背景と今後の展開について解説したい。

2年で興行の主役に成長

そもそも、YA-MANが最初にオープンフィンガーグローブマッチで試合をしたのは、2021年5月に開催されたRISEの無観客大会「RISE on ABEMA」であった。当時はまったく無名だったYA-MANは初戦をKOで勝利すると、その後も白星を積み重ね、今年8月にはRISEに新設されたオープンフィンガーグローブ王座を手に入れる。この試合はRISEのビッグマッチでメインイベントに組まれた。これは、当初は脇役と見られたオープンフィンガーグローブマッチの価値がこの2年で大きく跳ね上がったことを意味している。ついに、オープンフィンガーグローブマッチが主役になる機が熟したのだ。

理屈抜きの伝わりやすさ

では、なぜオープンフィンガーグローブマッチの人気は跳ね上がったのか?第一は、KO決着の多さだと考える。試合をするのは「勝ちたい」ではなく「倒したい」と考える選手たちばかりで、膠着は皆無。しかも、薄いグローブは拳によるダメージをダイレクトに伝えられるため、ダウンの回数が通常のグローブマッチに比べて圧倒的に多い。もちろん、キックボクシングの魅力には高度な戦略や技術も含まれるが、KO決着は見る側には伝わりやすいことは事実だ。リングサイドに座る解説者たちもオープンフィンガーグローブマッチに「解説の必要がない!」と口を揃えるのはその表れだろう。

YA-MANの言葉の力

そして、第二の要因として、オープンフィンガーグローブマッチを牽引してきたYA-MANの言葉の力も大きい。例えば、19日の記者会見でも「普通のグローブでのキックボクシングよりもオープンフィンガーの方が面白い」と断言したうえで「この大会をきっかけにバズる選手が出て来て欲しい」と広く参加を呼びかけている。現役格闘家がプロデュースする格闘技と言えば、朝倉未来のBreaking Downが挙げられるが、YA-MANは「こっちは本当の格闘技」と対抗意識を燃やす。父の薬物中毒、祖父母の蒸発など、生い立ちも含めて語られる赤裸々な言葉が、オープンフィンガーグローブマッチの持つ「生々しさ」「一発逆転」のイメージにピタリと合致したのである。

予想できない進化

さて、現時点で来月の第1回大会に出場が決まっているのはYA-MANとともにRISEのリングでオープンフィンガーグローブマッチを牽引してきた山口裕人、山口侑馬を加えた3人のみ。試合はRISEのルールを基本とすることも発表されたが、YA-MANは「KO以外は引き分けとしたい」との意向も示す。格闘技はルールが結果を左右する面があり、始まったばかりの大会が今後、どんな進化を遂げるのかは誰にも予測できない。奇しくも今年11月は、米国でUFCが生まれてからちょうど30年。これから動き出す「FIGHT CLUB」が格闘技界に新たな潮流を生んでくれることを楽しみにしている。

※文中敬称略

実況アナウンサー

実況アナウンサー。1973年神戸市生まれ。プロレス、総合格闘技、大相撲などで活躍。2015年にはアナウンス史上初めて、新日本プロレス、WWE、UFCの世界3大メジャー団体の実況を制覇。また、ラジオ日本で放送中のレギュラー番組「真夜中のハーリー&レイス」では、アントニオ猪木を筆頭に600人以上にインタビューしている。「コブラツイストに愛をこめて」「1000のプロレスレコードを持つ男」「もえプロ♡」シリーズなどプロレスに関する著作も多い。2018年には早稲田大学大学院でジャーナリズム修士号を取得。

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