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「やべぇ!」ひき逃げから1年、犯人は今も逃走中 信号無視の自転車にはねられた女性は今…

柳原三佳ノンフィクション作家・ジャーナリスト
防犯カメラに記録されていた自転車と歩行者の衝突事故の瞬間(Aさん提供)

「ひき逃げ事故に遭ってから、今日で1年になります。青信号で横断歩道を歩いていただけなのに、猛スピードの自転車にはねられたあのときの恐怖は今も消えません。犯人は、『このまま捕まらなければ罪は消える』とでも思っているのかもしれません。でも、犯した罪は決して消えることはありません」

 語気を強めてそう語るのは、2022年10月18日、横断歩道で信号無視の自転車にはねられた被害者のAさんです。

 この事故については昨年12月、以下の記事で取り上げました。

【ひき逃げ】瞬間映像公開 自転車が歩行者に衝突「やべぇ」男は現在も逃走中 - エキスパート - Yahoo!ニュース

 事故から1か月半後、Aさんが自らビルのオーナーに頼んで入手した以下の防犯カメラの映像には、自転車に衝突される瞬間がはっきりと記録されていました。

 事故が発生したのは、午後3時半頃。現場は、池袋駅からほど近い、南池袋3丁目の横断歩道です。

 歩行者用信号が青に変わり、横断歩道を渡り始めたAさんに、信号を無視して走ってきた自転車が激しく衝突。二人は絡み合うように路上に転倒します。

 ところが、自転車でぶつかってきた若い男は、全身を強打して起き上がれずにいるAさんを救護しようともせず、さらに、「警察を呼ぶから待ちなさい!」というAさんの叫び声をも無視して、そのまま自転車にまたがり現場から逃走したのです。

 Aさんによると、男はとっさに「ごめんなさい」と謝罪。また、すぐそばを通りかかった人は、その直後、「やべぇ」と言いながら逃走した姿を目撃したそうです。

 アスファルトに激しくたたきつけられたAさんは、すぐに救急車で搬送されました。幸い骨折はなかったものの、全身打撲で全治4週間と診断されました。

 防犯カメラの映像を見ると、相当のダメージを受けていることがわかります。もし頭を強打していたら、危険な状況になっていたかもしれません。

 衝突の衝撃で強打した右腕と腰は、1年経っても鈍痛が続き、Aさんは今も自費で整体院へ通う日々だといいます。

事故現場となった南池袋3丁目の横断歩道(Aさん提供)
事故現場となった南池袋3丁目の横断歩道(Aさん提供)

■SNSやテレビでも事故動画が繰り返し流されたが…

 その後、ひき逃げの瞬間映像を見た多くの読者がSNS等を使ってこの動画を拡散。また、テレビ局からも相次いで連絡があり、さまざまな報道番組で何度もこの瞬間映像が取り上げられました。おそらく、この事故のことは、テレビで目にしたことがあるという方も多いのではないでしょうか。

 人通りの多い白昼の都心で発生した事故だけに、『必ず犯人は見つかるはず』といった激励コメントが多く寄せられ、Aさんも期待していました。ところが、事故発生から1年経った今も有力な手掛かりはなく、残念ながら未だに犯人逮捕には至っていません。

 Aさんは事故からの1年をこう振り返ります。

「事故の動画をメディアで取り上げていただくたびに、『今度こそ、犯人逮捕に繋がるかも』『自首するかも』と淡い期待を抱いては、落胆……、の繰り返しでした。それでも、何度も取り上げていただけたことには心から感謝しています。悪質なひき逃げは今も起こり続けています。交通事故は決して他人事ではないということを多くの人々に知って欲しいと思います」

事故現場に立てられた看板(Aさん提供)
事故現場に立てられた看板(Aさん提供)

■自転車もれっきとした「車両」 自覚をもって運転を

 自転車は小さな子どもから大人まで、運転免許なしで気軽に乗ることのできる便利な乗り物です。その一方、「道路交通法」においては「軽車両」と位置づけられている、れっきとした「車両」です。事故を起こしたにもかかわらず現場から逃げるというのは、ひき逃げの罪に当たります。

 しかし、現実には本件のような未解決のひき逃げ事件が多数発生しており、Aさんのように、治療費すら受け取れず、泣き寝入りを強いられている被害者がいます。

 ひき逃げは、「助かる命をも助けずに見捨てる」極めて悪質な行為です。万一の場合は、必ず被害者を救護し、警察に届け出てください。

 事故現場には、現在も目白警察署によって『目撃者を捜しています』という看板が立てられています。逆に、これだけはっきりした映像があっても、犯人に逮捕に至らないことには不安を覚えますが、心当たりのある方は、些細なことでもぜひ情報をお寄せ下さい。

<池袋/ひき逃げ事件詳細と犯人&自転車の特徴>

●発生日時/2022年10月18日午後3時27分頃

●事故現場/東京・南池袋3丁目の横断歩道

●犯人のルート/池袋駅方面から目白方面へ走行中に事故。『ごめんなさい』と言い残し、そのまま目白方向へ。その後、路地に入って逃走

●犯人の特徴/20歳くらいの男性

●自転車/赤色のスポーツタイプの自転車

●着衣/黒い上着

●連絡先/目白警察署 03(3987)0110 (内線4252)

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ノンフィクション作家・ジャーナリスト

交通事故、冤罪、死因究明制度等をテーマに執筆。著書に「真冬の虹 コロナ禍の交通事故被害者たち」「開成をつくった男、佐野鼎」「コレラを防いだ男 関寛斉」「私は虐待していない 検証 揺さぶられっ子症候群」「コレラを防いだ男 関寛斎」「自動車保険の落とし穴」「柴犬マイちゃんへの手紙」「泥だらけのカルテ」「焼かれる前に語れ」「家族のもとへ、あなたを帰す」「交通事故被害者は二度泣かされる」「遺品 あなたを失った代わりに」「死因究明」「裁判官を信じるな」など多数。「巻子の言霊~愛と命を紡いだある夫婦の物語」はNHKで、「示談交渉人裏ファイル」はTBSでドラマ化。書道師範。趣味が高じて自宅に古民家を移築。

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