平野紫耀&神宮寺勇太の合流で注目されるTOBEは、日本のアイドル応援文化を変えるか
滝沢秀明さんが立ち上げたTOBEに、元King & Princeの平野紫耀さんと神宮寺勇太さんの合流が発表され、大きな話題となっています。
合流発表自体はYouTubeライブで実施されたのですが、同時視聴者数はなんと102万人を突破。
これは、日本におけるYouTubeライブで、これまでジャニーズの嵐が持っていた78万人という記録を大きく上回り、同時接続の歴代2位の記録になったようです。
さらに当然のように、公式ハッシュタグがツイッタートレンドで1位となり、他にもさまざまなキーワードがトレンド入り。
実際にグラフを見て頂くと、いかにその投稿の盛り上がりが凄まじかったか良く分かると思います。
さらに、平野さんと神宮寺さんで行ったインスタライブも同時接続が50万人超え。公式ファンクラブは一時720分待ちの表示がされるほどの混雑を極める結果となったようです。
参考:平野紫耀&神宮寺勇太「TOBE」合流に大反響 100万人視聴→FC発表でID登録は一時720分待ち
今後、TOBEにはまだまだ新しいアーティストが参加することが予定されているようですが、ここで注目したいのは、TOBEが挑戦している新しいアプローチです。
明確に芸能事務所機能を持つことになったTOBE
滝沢秀明さんが3月に新会社TOBEの設立発表をした際には、「誰も見たことのない次のエンターテイメントのかたち」というキャッチフレーズのみが発表され、実際にどのような事業に取り組むのかは謎に包まれていました。
ここに来て三宅健さん、そして平野紫耀さんと神宮寺勇太さんが合流し、ファンクラブもセットとなる公式サイトが開設されたことで、TOBEがジャニーズと同様にアーティストの事務所として運営されることは明確になったと言えます。
三宅健さんはジャニーズ事務所を退所してから、2ヶ月。
そして、平野紫耀さんと神宮寺勇太さんは1ヶ月半での移籍発表ということで、従来のジャニーズ退所メンバーの移籍としては非常に早い展開となり、業界には驚きの声が多数聞こえます。
ただ、通常の企業人の転職を考えれば、これまでのジャニーズ出身者のいわゆる謹慎期間の常識が異様に長かっただけで、ある意味「普通」の転職と同様になりつつあると考えるべきなのかもしれません。
そういう意味でTOBEのアプローチで最も注目したいのが、ネットやSNS上におけるアーティストの写真の扱いも「普通」にしようとされている点です。
滝沢さんが生配信のスクショOKを明言
これまでジャニーズ事務所というと、ネット上のアーティストの画像の扱いに非常に厳しいことで有名でした。
さすがにこの数年は、ある程度メディアでの写真の活用を許容するようになったものの、その厳しい姿勢はジャニーズファンの間にも浸透しており、SNSアカウントでも、アーティストの写真を投稿するアカウントはフォローしない旨を明言しているファンアカウントを多数見つけることができる状況です。
しかし、今回滝沢秀明さんは、平野紫耀さんと神宮寺勇太さんの生配信の二日前にTikTokライブを開催し、生配信中の画像付き拡散を推奨。
「スクショは何でも大丈夫です。こちらがユーチューブとかそういうので発信しているものは、すべてOKです」と、TOBEのアーティストについては画像付きの拡散がOKであることを明言されたのです。
参考:滝沢秀明氏 7日のTOBEユーチューブ生配信は「ぜひ画像付きで拡散していただけたら」
さらに実際の生配信の最中には、明確にスクショタイムと銘打って写真撮影のためのサービスショットも提供。
こうしたTOBEのメンバーのサービス精神満載の姿勢が、ファンの画像付きツイートをより促進し、冒頭のようなトレンド1位の結果を生み出し、同時接続102万人という記録を打ち立てる結果となったのは間違いありません。
同様の記録は、元SMAPのメンバーがABEMAの72時間テレビに出演した際にも発生しましたが、改めてファンが事務所を退所したメンバーに注ぐ熱量の凄さを再確認する結果になっていると言えるでしょう。
参考:元SMAP72時間テレビで振り返る、SMAPファンの凄さ
また、さらに印象的なのは、平野さんと神宮寺さんが開設したインスタグラムのフォロワー数が急増しており、平野さんのアカウントは260万超えと、なんと5人のメンバーで運営していたKing & Princeの公式アカウントの234万を大きく超える結果となっている点です。
平野さんや神宮寺さんが1からインスタグラム活用を学び、素の自分をファンに見せていく姿勢を見せたことが、従来よりも多くのファンをインスタグラムに導く結果になっていると言えるかもしれません。
K-POPやBMSGがリードするファンのSNS活用
ファンによるSNS上の画像や動画のツイートを禁止するのではなく、逆に許容することで躍進した存在としては、K-POPの成功事例のシンボルであるBTSと、そのファンであるARMYの事例が有名です。
参考:BTSのさらなる躍進に必要な「ARMY」の存在、そしてミッション
日本でも、そうしたBTSやK-POPの成功事例を参考に、さまざまなアーティストがファンによるアーティストの写真や動画の投稿を許容したり、促進するようになってきています。
その象徴の代表と言えるのが、SKY-HIさんが設立し、BE:FIRSTやMAZZELなどのアーティストを生み出しているBMSGでしょう。
SKY−HIさんは、最近では書籍を出版したり、ビジネス系の番組にも出演したりと、日本の音楽業界が変化する必要性を訴えつづけているのが印象的です。
そんなSKY-HIさんは、早期にアーティストの応援を目的とした投稿であればアーティストの写真や動画の投稿は歓迎であることをファンに宣言。
その結果、BMSG所属のアーティストの写真や動画がSNS上に多数投稿されるようになっているのです。
参考:BE:FIRSTは日本の音楽業界のSNS活用に革命を起こすかもしれない
ただ、現時点では日本のアイドル文化の中心の一つであるジャニーズが、非常に厳しい画像活用のポリシーを引いてきたことが影響し、日本におけるアーティストの応援では、画像のキャプチャや投稿が控えられる空気になっていたのが現実です。
そういう意味で、元ジャニーズのメンバーが中心となっているTOBEの代表である滝沢秀明さんが、アーティストのYouTube配信のキャプチャや拡散を明確にOKと宣言したということは、大きな意味があります。
今後TOBEのアーティストを応援するファンも、積極的に画像投稿をする文化を学んでいくことになるわけで、日本の応援スタイルの重心が、大きく転換する可能性があるのです。
ジャニーズやメディアも変われば、日本が変わる
現時点では、King & Princeがジャニーズに残った永瀬廉さん髙橋海人さんと、今回TOBEに合流した二人と9月に退所する岸優太さんで違う道を歩む形となっているため、引き続きテレビを中心に活動しているメンバーと、ネットが活動の中心になるであろう退所したメンバーという二つに大きく分かれる形になります。
両方を応援している元々のKing & Princeのファンである「ティアラ」の方々からすれば、複雑な状況になっているのは間違いありません。
両者が同じ場所で活動する機会というのは、しばらく見られなくなるのが現実でしょうし、ファンの間でも意見が分かれるシーンが多々あるはずです。
ただ、性加害問題で揺れるジャニーズ事務所も、当然今後時代に合わせて変化することが必須となります。
将来的には真剣にファンによるネット活用の姿勢を変換する必要があるはずです。
また、ジャニーズ事務所に忖度して、元ジャニーズのメンバーの番組などへの起用を控えてきたメディアにも変化が求められるのは間違いありません。
元SMAPのメンバーがテレビ番組に復帰するのには、公正取引委員会の問題提起があっても数年の月日がかかりましたし、中居さんと香取さんが共演するまでに6年も時間がかかっています。
参考:元SMAP「中居正広」と「香取慎吾」が6年ぶりに共演…収録後に明かされた「現在の関係性」に衝撃
しかし現在では、メディアのジャニーズ事務所への忖度が、ジャニーズ事務所の性加害問題が放置される一つの要因だったのではないかと社会から厳しい目が向けられるようになりました。
普通に考えれば、YouTubeの同時接続数で記録を打ち立てられるアーティストを、テレビ番組に起用しないのはおかしいということになるはずです。
そういう意味で、今後TOBEの所属アーティストが、いつテレビ番組に出演できるようになるのか、という点も注目です。
そして、ジャニーズ事務所が、いつファンによるアーティストの写真や動画の投稿をBMSGやTOBEのようにOKと明言するのか、という点も大きな注目点と言えます。
その二つが変われば、King & Princeの違う道を選んだメンバーを隔てている、大きな溝が埋まっていくことにもなります。
既に変化は、はじまっている
実は、そんな変化の兆しは既にあります。
例えば、平野紫耀さんは5月にジャニーズ事務所を退所していますが、出演しているファブリーズのテレビCMは6月も放送がされていましたし、TOBEへの合流が発表された現時点でも、YouTubeに動画がアップされたままです。
おそらくP&G側が、平野紫耀さんのジャニーズ事務所退所に合わせて契約内容を調整したものと想像されますが、従来のジャニーズ所属アーティストのテレビCMは、契約終了後に動画が削除される事が普通だったことを考えると、大きな変化と言えるでしょう。
また、SKY-HIさんと日テレがはじめたD.U.N.K.というプロジェクトでは、事務所を横断したダンス&ボーカルの様々なアーティストが、一つのイベントに集まっています。
D.U.N.K.は、「もうダンス&ボーカルシーンに垣根も差別も必要ない」と明確に銘打たれており、BMSGやHYBE、LDHなど、様々な事務所に所属するアーティストが同じステージの上で踊り、ファンの写真や動画に一緒におさまってネット上に拡がっているのです。
既に事務所横断でライブの撮影OKに合意したグループが増え、それを体験したファンが増えていることになります。
TOBEで滝沢秀明さんや、所属アーティストが新しい挑戦を続け、成功を収めていくことができれば、当然メディア側も何かしらの形で起用を考えるのが当然だと思いますし、ジャニーズ事務所もネット活用を真剣に考える必要が出てくるはず。
その時には日本のネットを活用したアイドルの応援文化は、大きく変わっているはずです。
実はKing & Princeの5人のメンバーを再び、ファンが同じ舞台で応援できるようになる日は、それほど遠くないのかもしれません。
まずはTOBEに合流したアーティストたちの活躍に注目したいと思います。