フードジャーナリストが実食して厳選! 絶対に食べるべき「逸品」5選!【2024年12月】
フードジャーナリストが心揺さぶられた逸品とは
フードジャーナリストとして活動を始めて早四半世紀。これまで累計で10,000軒以上の飲食店を食べ歩いてきた。何十年も毎日のように外食をしていると、少しずつ感動が薄れてくるのも事実。どこかで食べたような料理と出会うことも増えてきた。それでも日々外食を続けているのは、美味しさの先にある感動を求め続けているからかもしれない。
作り手の顔が見える料理を食べたい。その店でしか味わえない一皿と出会いたい。そんな思いを持って日々食べ歩きをする中で、驚きや感動がある料理と出会うと嬉しくなるものだ。日々食べ歩きの中で出会った、また食べたくなるような心を揺さぶられた一皿を毎月厳選してご紹介していきたい。なお掲載順は地域別に並べているだけで優劣を示すものではない。
ワイン好きな洒脱な大人の隠れ家『呑み屋 ぺりどっと』の「〆麺」(東京・西麻布)
西麻布の路地裏に一歩入った、大通りの喧騒が嘘のように静かな街並みの一角に馴染むように佇む店。まるでもう何年もこの場所にあるような雰囲気の『呑み屋 ぺりどっと』(東京都港区西麻布2-16-5)は、2024年7月にオープンしたばかりのワインバー。10席の小さな店をマダムが一人で切り盛りする。
マダムは都内の人気ブラッスリーや予約困難のフレンチなどで、長年サービスを務めてきたプロフェッショナル。つかず離れずの絶妙な距離感。だからこの店はとても居心地が良い。ワインのアテももちろんマダムの手作り。『〆麺』は築地で仕入れた海苔の佃煮とシラスが良いアクセントに。ワイン好きならずとも、またマダムに会いに行きたくなる店だ。
厳選ポイント:居心地の良い大人のための隠れ家
タレがしっかり染みた東京の天丼『松竹庵』の「天丼」(東京・人形町)
創業は1955(昭和30)年と、長年にわたり人形町で愛され続けている老舗蕎麦店が『松竹庵』(東京都中央区日本橋人形町1-15-5)。こちらは淡路町にある老舗の暖簾分け。買い物客や観光客も多い人形町で中休みなく通しで営業しているので、ランチ終わりの同業者なども訪れる地域密着店だ。
東京の天丼は伝統的に黒い。しっかりとタレが衣に染み込んでこそ東京の天丼。衣のサクサク感よりもしっとり感を好むのが江戸っ子。そんな東京の天丼を出してくれるのが嬉しい。しかしながら『松竹庵』は天ぷらそのものも定評があるので、天ぷらのサクサク感も少し残してあるのがまた良い。
厳選ポイント:しっとりサクサクの衣がたまらない
ナポリタン発祥の伝統を受け継ぐ『ザ・カフェ』の「ナポリタン」(神奈川・山下町)
横浜山下公園に面し、横浜の港を長年見守り続けてきた横浜のランドマーク的存在のホテルが、1927(昭和2)年創業の『ホテルニューグランド』(神奈川県横浜市中区山下町10)。本格的な欧風料理をいち早く出した日本の洋食の草分け的存在で、「シーフードドリア」や「ナポリタン」「プリンアラモード」など、このホテルから生まれたメニューは少なくない。
そんな伝統のナポリタンはホテル内の『ザ・カフェ』で今も楽しむことが出来る。戦後、GHQによって接収されていた時に米兵が茹でたスパゲッティに塩胡椒とトマトケチャップを和えた物を食べているのを知り、アレンジを加えて生み出した一品。しっかりと濃厚な味わいでありながら、軽やかな食後感が残るバランスはお見事。
厳選ポイント:戦後に生まれた伝統のナポリタンを今も味わえる
ソース不要の美味しさ『うまい屋』の「たこ焼」(大阪・天満)
天神橋筋六丁目駅から程近い、天五中崎通商店街に佇むたこ焼き店。創業は1953(昭和28)年と、70年以上にわたり愛されている老舗が『うまい屋』(大阪府大阪市北区浪花町4-21)。店頭で屋台のようにたこ焼きを焼く光景は、この商店街には欠かせない風景になっている。
銅板のたこ焼き器で焼き上げられた熱々のたこ焼きは、持ち帰りでも良いがやはり店内で出来たてを食べたい。ソースや青のり、ネギなどは乗らずにシンプルな素焼きのまま提供される。卓上に置かれたソースをつけても美味しいが、やはりまずはそのままで。カリッと焼き上げられたたこ焼きをかじれば、中からカツオ出汁がふわっと香るもちもちとろとろの生地が。気がつけばソースの存在を忘れて食べきってしまう。
厳選ポイント:ソース不要の生地が美味しいたこ焼き
火災から10ヶ月経って復活『焼肉 味一番 しょうちゃん』の「カルビ」(福岡・小倉)
2024年11月にオープンした焼肉店『焼肉 味一番 しょうちゃん』(福岡県北九州市小倉北区魚町1-4-15)は、2023年11月に小倉の『鳥町食道街』にオープンするも、2024年1月に起こった商店街の火災に巻き込まれて一旦閉店。10ヶ月を経てようやく近くの場所に再オープンを果たすこととなった。
七輪を使った昔ながらのスタイルのタレ焼肉。肉は九州産を中心とした黒毛和牛で注文を受けてから手切りして、自慢のもみダレに合わせる。厚めに切られた牛肉をまとうタレが炭火で香ばしく焼き上がる。こちらの店では酒も進むしご飯も進む。良質な黒毛和牛を使っているのに価格はリーズナブル。酒場のような活気のある雰囲気も心地良い。
厳選ポイント:手切りの黒毛和牛がリーズナブルに楽しめる
食べ歩きの楽しさとは、他では食べたことのないような新たな料理と巡り会えること。今回ご紹介したお店の逸品は、私が個人的に印象に残った料理を選んだものなので、もちろん他にも美味しいメニューがたくさんある。まずは気になったお店に足を運んで頂いて、メニューの中から自分だけの逸品を見つけてみて欲しい。
※写真は筆者の撮影によるものです。
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