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Facebookが火をつけた「メタバース革命」は、スマホの次の時代の扉を開くか

徳力基彦noteプロデューサー/ブロガー
「F8 2016」の開発者会議でのマーク・ザッカーバーグCEO(写真:ロイター/アフロ)

Facebookが、スマートフォン時代の後継者として仮想空間「メタバース」の開発に5000億円以上を投下すると発表し、業界での注目が俄然高まっています。

特に注目されるのは、先週末にβ版を発表したばかりの仮想空間の会議サービス「Horizon Workrooms」でしょう。

筆者も実際に体験してみましたが、従来のVRサービスの制約を明らかに大きく一歩クリアする完成度になっています。

大袈裟に例えるならば、これまでのVRサービスを日本でスマホ時代の前に流行ったiモードなどのガラケーのサービスとすると、今回Facebookがスタートした「Horizon Workrooms」とVRゴーグルのOculus Quest 2の組み合わせは、iPhone登場に近いインパクトをもたらすかもしれません。

今回の「Horizon Workrooms」のどこが革命的なのか、ポイントは4つあります。

■コントローラー不要で利用可能

■身振りを再現するハンドトラッキングの進化

■表情を再現するリップシンクの進化

■方向や距離を再現する空間音声技術の進化

1つずつご説明します。

■コントローラー不要で利用可能

個人的に「Horizon Workrooms」で最も大きい進化だったと考えているのが、コントローラー不要で操作が可能になっているところです。

従来のVRゴーグルにおいては、Oculusシリーズに限らず基本的に両手にコントローラーを持って操作するのが基本でした。

(出典:Oculus Quest公式サイト)
(出典:Oculus Quest公式サイト)

もちろん、それがなくても一部操作可能なものはありましたが、何だかんだとコントローラーを使う方が便利な設計になっていたのが現実だと思います。

それが「Horizon Workrooms」では、ハンドトラッキング技術をベースとして活用することで、コントローラー無しで基本的な操作が全て実施可能です。

そのため、コントローラーのボタンや操作などを覚えなくても、自分の手で自然なコミュニケーションをすることができ、メタバース内で自分のPCを操作するなど、現実空間と同じことが実現できるようになっています。

これにはボタン操作が基本だったガラケーに対して、タッチパネル操作を基本にしたiPhoneの登場が、携帯電話業界に大きな変化をもたらしたのと同じぐらい大きなインパクトがあると感じています。

■身振りを再現するハンドトラッキングの進化

さらに、前述のハンドトラッキング機能の進化で印象的なのが、「Horizon Workrooms」で仮想空間内における私たちの分身であるアバターの身振り手振りの仕草が、非常に人間らしく自然なものになっている点です。

先週、ニッポン放送のアナウンサーとしても有名なよっぴーさんが、おそらく世界初となる「Horizon Workrooms」内での落語の寄席に挑戦されていましたが、この動画を見ていただくと、その再現度の高さが伝わるのではないかと思います。

Oculus Quest 2のハンドトラッキングは、指の一本一本までかなり正確に再現してくれるため、細かい指のサインまでちゃんと伝わります。

これにより、仮想空間内で想像以上に相手のアバターを、相手自身として受け止めてコミュニケーションをすることができるのです。

■表情を再現するリップシンクの進化

さらに印象的なのがリップシンクと呼ばれる、喋る声と仮想空間内のアバターの口の動きの連動性の高さです。

Oculus Quest 2においては、本人の口や表情はカメラで追っているわけではないので、本人の表情をそのまま再現しているわけではないのですが、リップシンク技術の進化により、非常に自然な口の動きや表情が再現されています。

上のマーク・ザッカーバーグCEOの動画や、前述の落語の動画を見ていただくと、その完成度の高さが分かると思います。

あくまで仮想空間であり、アバターには下半身が存在しないという現実離れした状態なのですが、前述のハンドトラッキングとリップシンクの組み合わせにより、会議室で座っている状態で喋っていると、そこが仮想空間であることを少し忘れてしまうような不思議な錯覚も感じます。

■方向や距離を再現する空間音声技術の進化

さらに、これは実際に利用していただかないと体感できない点ですが、音声の再現技術が凄いです。

遠くの人の声は遠くに聞こえ、近くの人の声は近くに聞こえ、前後左右などの方向も感じることができます。

「Horizon Workrooms」内で席替えをすることも可能ですので、それにより喋りたい人の近くに移動するということが可能なのです。

これの何が凄いかというと、同時に一つの部屋の中で別々の会話が成立するという点です。

つまり飲み会同様に、8人いてもそれぞれがバラバラに会話をしたりしなかったりというのが可能なわけです。

Zoomのようなビデオ会議システムでも、クラブハウスのような音声チャットサービスでも、どうしても二つの別々の会話を同時に成立させるのが難しかったのですが、「Horizon Workrooms」内では現実世界と同様に距離と目線によって個別の会話を成立させることが可能になっているのです。

スマホにおけるiPhone登場に近いインパクト

これらの4つの機能により、「Horizon Workrooms」では、文字通り仮想世界の中に、かなり現実世界に近い空間を再現することができるようになっています。

もちろん、私自身がゲームになれていて、アバターに違和感を感じないというタイプなのは大きいと思います。

多くの方には、Oculus Quest 2や「Horizon Workrooms」がiPhoneと同じインパクトというと大袈裟と思われると思いますし、1人1台が当たり前の携帯電話を置き換えたスマートフォンに比べると、VRゴーグルという現実世界の日常生活には不要な端末が普及するペースは間違いなく遅いでしょう。

ただ、Oculus Quest 2は従来のOculusのVRゴーグル全ての販売数を足した数を上回る勢いで売れているそうですし、今後も「バイオハザード4」などの大作ゲームの発売によりさらに売れることが期待されています。

参考:「バイオハザード4」Oculus Quest 2版は、VRゲーム市場拡大の象徴になるか

そういう意味では、間違いなく「メタバース」と呼ばれるもののステージが、今回の「Horizon Workrooms」の登場で一つ大きく進んだのは間違いありません。

実名SNSのFacebookならではのメタバース

仮想世界や「メタバース」と言えば、フォートナイトのようなゲームが事例としてあげられることが多かったこれまでですが。

Facebookが取り組もうとしている「メタバース」の特徴は、現実世界と同じ空間を仮想世界に再現することであると言えそうです。

匿名が普通だったSNSの世界において、実名必須のSNSという世界観を持ち込んだFacebookならではのアプローチと言えるかもしれません。

映画レディ・プレイヤー1で描かれていたようなVRと共存する世界に、Facebookは本気で取り組もうとしているわけです。

日本では、Facebookというとおじさん用SNSと揶揄されることも増えており、その影響力を過小評価されている方も少なくないようですが、なんと言ってもFacebookは利用者数が29億人を超えるとも言われる巨大サービス。

そのFacebookがグループの総力を挙げて取り組んでいる「Horizon Workrooms」の登場は、今後VRや「メタバース」だけでなく、インターネットやITの歴史においても非常に重要な分岐点だったと振り返ることになりそうです。

noteプロデューサー/ブロガー

Yahoo!ニュースでは、日本の「エンタメ」の未来や世界展開を応援すべく、エンタメのデジタルやSNS活用、推し活の進化を感じるニュースを紹介。 普段はnoteで、ビジネスパーソンや企業におけるnoteやSNSの活用についての啓発やサポートを担当。著書に「普通の人のためのSNSの教科書」「デジタルワークスタイル」などがある。

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