【ランナーはどのくらい怪我をしやすいの?】87ヶ国7605人のGPS時計のデータを用いた追跡調査から
秋になり、いよいよマラソンのシーズンが始まりました。涼しくなって練習量を増やしているランナーがいる一方で、怪我や故障で練習量を増やせないランナーもいます。そして不思議なことに、いくら走っても怪我と無縁のランナーもいます。では、ランナーが怪我をする頻度はどの程度なのでしょうか。最新の文献でみてゆきましょう。
累積走行距離と、怪我をするランナーの関係
一番新しい文献は2024年1月のもので、87か国の計7605人のランナーからアンケートをとり、さらにGPS時計で有名なGarmin社のアプリ「Germin connect」のデータを用いて結果を解析したものです。この文献ではランニングの怪我について、「ランニングが原因の筋骨格系の障害で、痛みや不快感を生じ、ランニングの量や強度、頻度の減少につながるもの」としています。つまりランニングに支障が出ない程度の軽い怪我は、ここに含まれていません。
調査の結果、累積走行距離が680kmになった時点で怪我をしていないランナーは50%を切りました。さらに1000kmでは42.4%、2000kmでは30.2%にまで怪我のないランナーは減ってしまいました。ですが少数ですが、5000kmに及んでも怪我をしないランナーもいるのです。調査対象とされたランナーの走力をみると、5kmのベストタイムを階層化したとき、一番多いのが20~23分ということです。研究対象のランナーの走力がやや高めという印象はありますが、おそらく想像以上に怪我をしやすいと思われたのではないでしょうか。
ではどんなランナーが怪我をしやすいのでしょうか。ランニングと怪我についてはいくつかの総説論文があるのですが、広く言われているのは若いランナーや男性ランナー、過去に怪我をしたことのあるランナーや、月間走行距離の多いランナーは怪我をしやすいということです。またランニングを始めたばかりのランナーや、トレーニングの強度や量を急激に増加させると怪我をしやすいとも言われています。一つ例を挙げてみていきましょう。
2021年の論文より224人のランナーを1年間追跡した研究より
論文は2021年のスウェーデンからのもので、224人の市民ランナーを1年間追跡調査したものです。平均年齢40歳で走歴は10年程度、週間走行距離は25kmとのことなので、先ほどの研究よりも、ゆっくり走るランナーを研究対象にした印象です。
結果をみると1年の追跡調査で75人が怪我をして、全体的な累積発生率は45.9%になりました。怪我の経験のないランナーは91人中22人(24%)であったのに比べ、怪我の経験のあるランナーは133人中53人(40%)で、ハザード比でみると1.9倍高かったようです。先の研究の怪我の発生率より少なめですが、それでも結構多いと感じたのではないでしょうか。
ランナーの多くは怪我との戦い
10月末から様々なマラソン大会が開催され、マラソンはシーズンインとなります。大きな目標をたててシーズンに挑まれるランナーは多いと思います。ですが怪我で思うようなトレーニングができず、残念な思いをするランナーも決して少なくありません。文献では680kmや1年で、約半数のランナーが怪我をするようです。自分も何度も怪我を経験しながら、体をメンテナンスをして少しずつ記録を更新しました。
ランニングに怪我はつきものです。怪我をしてしまうからこそ、乗り越えて叶えた目標に価値があるのです。怪我を負っても乗り越えて、その先にある大きな目標を絶対絶対に叶えて下さい。