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FAとなって「1億ドル以上の大型契約」を手にした選手の「1年目」は期待どおりだったのか

宇根夏樹ベースボール・ライター
コリー・シーガー(左)とマーカス・シミエン Apr 12, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 昨オフ、FA市場に出て、総額1億ドル以上の契約を手にした選手たちは、どんな契約1年目を過ごしたのだろうか。

コリー・シーガー/SS

テキサス・レンジャーズ

10年3億2500万ドル(2022-31)

年平均:3250万ドル

BA.245/OBP.317/OPS.772

HR 33/SB 3

 それまで最も低かったシーズン出塁率.335(2019年)を18ポイント下回った一方で、ホームランは自己最多だった26本(2016年)を7本も上回った。33本塁打は、出場試合の50%以上で遊撃を守った左打者のシーズン最多記録を更新した。追い抜かれたのは、チームメイトのブラッド・ミラーだ。タンパベイ・レイズ時代の2016年に、30本塁打を記録した。

 もともと、左投手をあまり苦にしておらず、今シーズン、左打者から打ったホームランは14本を数える。これは、アーロン・ジャッジ(ニューヨーク・ヤンキース)と並び、対左の両リーグ最多。ちなみに、ジャッジは右打者だ。一方、ホームの22本塁打とOPS.901に対し、アウェーではあまり打てなかった。

 また、4月には、満塁の場面で敬遠四球を申告され、打点を挙げた。それについては、「「満塁で敬遠四球」は史上初ではなく…。エンジェルスのマッドン監督は過去にも」で書いた。

クリス・ブライアント/OF・DH

コロラド・ロッキーズ

7年1億8200万ドル(2022-28)

年平均:2600万ドル

BA.306/OBP.376/OPS.851

HR 5/SB 0

 故障者リストに3度入り、8月以降は欠場。出場は42試合にとどまった。7月5日にシーズン最初のホームランを打ったのを皮切りに、5試合で4本塁打を記録したが、その後は7月24日の1本のみ。打者天国のホームでは、まさかの0本に終わった。シーズン25本塁打以上は5度を数え、2016年は39本、2019年は31本を記録している。

マーカス・シミエン/2B

テキサス・レンジャーズ

7年1億7500万ドル(2022-28)

年平均:2500万ドル

BA.248/OBP.304/OPS.733

HR 26/SB 25

 昨シーズンの45本塁打やOPS.873と比べると、今シーズンは物足りない。ただ、5月27日までの43試合はホームランがなく、OPSも.498と低かったものの、その後の118試合は26本塁打とOPS.816を記録した。5月28日以降に限ると、ホームランはア・リーグで3番目に多く、45本のアーロン・ジャッジ(ニューヨーク・ヤンキース)と28本のマイク・トラウト(ロサンゼルス・エンジェルス)に次ぐ。

 9月13日には、自分の打順が次に迫っていることに気づかず、ダグアウトから慌てて出ていき、この試合3本目の二塁打を打った。盗塁は、2年続けて自己最多を更新。昨シーズンは15盗塁だったので、一気に10盗塁も増やした。二塁の守備は、今シーズンも優れていた。

フレディ・フリーマン/1B

ロサンゼルス・ドジャース

6年1億6200万ドル(2022-27)

年平均:2700万ドル

BA.325/OBP.407/OPS.918

HR 21/SB 13

Oct 5, 2022
Oct 5, 2022写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 アトランタ・ブレーブスとは再契約を交わせなかったものの、ロサンゼルス・ドジャースへ移っても、安定したパフォーマンスは変わらなかった。出塁率.370以上は10年連続、OPS.890以上は7年連続。また、ここ3度の偶数年は、いずれもナ・リーグ最多の二塁打を打っている。2018年は44本(最多タイ)、短縮シーズンの2020年は23本、今シーズンは47本だ。その前の偶数年、2014年と2016年も、それぞれ43二塁打を記録した。

 出塁率.407はナ・リーグで最も高く、打率.325はジェフ・マクニール(ニューヨーク・メッツ)と1ポイント差の2位に位置した。

 移籍1年目にして受賞したロイ・キャンパネラ賞――ドジャースの監督やコーチ、選手の投票により、ロイ・キャンパネラの精神とリーダーシップを最もよく体現した選手に贈られる――に加え、2年ぶり2度目のリーグMVPを手にする可能性もなくはない。

ハビア・バイエズ/SS

デトロイト・タイガース

6年1億4000万ドル(2022-27)

年平均:2333万ドル

BA.238/OBP.278/OPS.671

HR 17/SB 9

 選球眼の欠如と守備のうまさは変わらず、パワーはダウンした。2018年と2021年は30本塁打を超え、2019年も30本にリーチをかけた。それでも、今シーズンのホームランはチームで最も多く、その10本目は義弟のホゼ・ベリオス(トロント・ブルージェイズ)から打った。彼らは、それぞれの妻が姉妹だ。

マックス・シャーザー/SP

ニューヨーク・メッツ

3年1億3000万ドル(2022-24)

年平均:4333万ドル

W-L 11-5/ERA 2.29/K 173

IP 145.1/K9 10.71/BB9 1.49

Sep 25, 2022
Sep 25, 2022写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 昨年11月に「37歳の投手が3年1億3000万ドルの契約を得る。「年4000万ドル以上」は史上初」で書いたとおり、史上最も高い年平均額の契約を手にし、年齢を感じさせない投球をした。故障者リストに2度入り、規定投球回に届かなかったこと以外に難点を挙げるなら、自責点4を記録した4登板の半数がアトランタ・ブレーブス戦だったことか。自責点5以上の登板はなかった。

 ちなみに、5月から7月にかけて離脱したのは、愛犬が原因ではない(「サイ・ヤング賞3度の大投手が、飼い犬に手を噛まれる」)。

ロビー・レイ/SP

シアトル・マリナーズ

5年1億1500万ドル(2022-26)

年平均:2300万ドル

W-L 12-12/ERA 3.71/K 212

IP 189.0/K9 10.10/BB9 2.95

 サイ・ヤング賞を受賞した昨シーズンから、QS率は71.9%から56.3%に下がり、防御率は87ポイント悪化した。奪三振率10.10も、ア・リーグ6位ながら、2016年以降の自己最低だ。過去6年は、イニングの多少はあるものの、いずれも11.25を超えていた。また、ヒューストン・アストロズ戦は、3登板の計10.2イニングで自責点13。6本のホームランを打たれた。ア・リーグ西地区の他3チームに対しては、いずれも防御率3.45以下を記録した。

 9月25日の試合前には、アリゾナ・ダイヤモンドバックス時代のチームメイト、ルーク・ウィーバー(カンザスシティ・ロイヤルズ)と競い合い、国歌が終わってからも、それぞれのダグアウトの前に立ち続けた。ウィーバーが先に動き、「ラストマン・スタンディング」となったレイが勝利。2人とも、退場を宣告された。

ケビン・ゴーズマン/SP

トロント・ブルージェイズ

5年1億1000万ドル(2022-26)

年平均:2200万ドル

W-L 12-10/ERA 3.35/K 205

IP 174.2/K9 10.56/BB9 1.44

Aug 14, 2022
Aug 14, 2022写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 契約の年数と総額は、トロント・ブルージェイズを去ったロビー・レイがマリナーズから得た契約とほぼ変わらない。1年目のパフォーマンスはレイを凌ぎ、昨シーズンの好成績が一過性ではないことを証明した。防御率3.35はア・リーグ11位ながら、BABIP.364は最も高く、FIP2.38とK/BB7.32は1位。シーズン初登板から136人続けて四球で歩かせず、全体でも28与四球にとどめた。

カルロス・コレイア/SS

ミネソタ・ツインズ

3年1億530万ドル(2022-24)

年平均:3510万ドル

BA.291/OBP.366/OPS.834

HR 22/SB 0

Sep 21, 2022
Sep 21, 2022写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 昨年12月に「「5年1億6000万ドル」に続いて「10年2億7500万ドル」も却下!? この遊撃手の希望額は…」で書いたとおり、3年1億530万ドルは望みどおりの契約ではない。この契約には、今オフと来オフに契約を打ち切ってFAになれるオプト・アウトの権利がついている。今オフにそれを行使し、再びFA市場に出るはずだ。今シーズンのスタッツは、昨シーズンと同水準。出塁率.366は同じだ。年齢は、28歳と若い。

ニック・カステヤノス/OF

フィラデルフィア・フィリーズ

5年1億ドル(2022-26)

年平均:2000万ドル

BA.263/OBP.305/OPS.694

HR 13/SB 7

 ホームランは昨シーズンより21本も少なく、OPSは245ポイントも下落した。チームメイトの打棒も、不振を際立たせる。4年7900万ドルで入団したカイル・シュワーバーは、46本のホームランを打ち、本塁打王を獲得した。9月に1ヵ月近く離脱しており、フィラデルフィア・フィリーズがポストシーズン進出を逃していれば、真っ先に批判されていたのではないだろうか。フィラデルフィアのファンは、手厳しい。もっとも、ポストシーズンで挽回のチャンスはある。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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