回転寿司がNYに上陸、地元客で賑わう。3段レーンの寿司テロ対策についても聞いてみた
満を持して、ニューヨークのマンハッタンに回転寿司店がオープンし、地元客で賑わいを見せている。
7月10日に営業を開始した「回転寿司ノマド(Kaiten Zushi Nomad)」は、5000sf(464平米)の広々としたスペースに125席がある。客席数の多さに合わせて、レーン(ベルトコンベア)も3連(上下3段)だ。店内にはJ-POPが流れ、一瞬ここが海外であることを忘れてしまう。
日本にあるような回転寿司店は以前マンハッタンにあったのだが、いつしかグループ企業ごと、当地から撤退してしまった。よって、ニューヨーカーには待ちに待ったオープニングである。
筆者が訪れたのは平日の午後、ランチタイムを外した時間だが、女子同士やカップル、家族連れの客が次々に入店して来た。コリアタウンに近いため、観光客も多い。オペレーションマネージャーのデービッド・リーさんによると、週末は入店のための行列ができるほど盛況だとか。
では早速注文。テーブルには当地では珍しいタッチスクリーンのタブレットが置かれていて、そこからオーダーする。
誤って大量注文されないように、4皿ごとに注文ボタンを押すシステムだ。
5分ほどすると、オーダーした寿司が高速レーンに乗ってピュッと直進で運ばれ、テーブル横で静かに止まった。回転寿司店でもっともワクワク感が高まる瞬間だ。
周りを見渡すと、物珍しいのかケータイで写真を撮っている客がちらほら。
寿司を握っているのは台湾から取り寄せた専用マシーンという。ネタは新鮮、シャリは小ぶりでふんわり柔らかく、日本の回転寿司屋でいただくものと遜色ない美味しさだ。
寿司テロ対策は?
回転寿司と言えば、今年始めに日本で「寿司テロ」が多発し、社会問題になった。中には訴訟に発展したケースもある。別のマネージャーのクリス・ヨドヴィシトサクさんも、日本で発生した寿司テロについて知っていると頷いた。ニューヨークでも起こり得るのだろうか?
その疑問に対して、彼は「心配はしていない」と言った。
「ニューヨーク市の法律(衛生法)ではレストランで提供する食品の設定温度が厳しく定められているため、ベルトコンベアでぐるぐると食品を巡回させ続けることができないのです。
そこで、ベルトコンベアで寿司を運ぶ方法が規制に沿うようにするため、当店ではオーダーが入った時点で寿司を握り、注文が入ったテーブルまでベルトコンベアで『高速』で運んでいます。これにより、ほかの客の食品へのイタズラは起こりにくいと考えています」
3レーン(段)もあるのはそのためだった。客が多い時は3レーンが同時に稼働する仕組みだ。
この店はロボットや機械によるオペレーションが主流だが、稼働している従業員も意外と多い。
キッチンには日本人を含む3人のシェフがおりサイドディッシュを担当。ホールにはサーバーが数名いて頻繁に空き皿を下げに来てくれた。テーブルに置かれている醤油は醤油さしに、ガリは入れ物にそれぞれ入っていて、自分たちで取り分ける。ワサビは個包装。無料のお茶はなく、飲みたければ缶の冷たい緑茶をオーダーする。スタッフが度々テーブルに様子を見にやって来るというのも、日本で多発したイタズラが起こりづらい仕組みになっているようだ。
気になる会計だが、ランチ時に遠慮せず好きな皿を次々とオーダーした結果、お茶を含めて2人で100ドル(約1万4000円)を少し超えるほどだった(チップ別)。ラーメンやサンドイッチのランチが2800円とも3000円とも言われる当地で、一人7000円+チップを高いと見るか安いと見るか?
帰りに出口で一緒になった20、30代くらいの女子3人組に感想を聞いたら、「楽しい体験だった。リーズナブルだし美味しいし気に入った」と笑顔で答えた。「そうよね、ちゃんとした寿司屋で食べるより随分リーズナブルだった。ロボットがいてキュートなのも良いわ」と言い、この日のインスタグラムにでもアップするのか、店の外で楽しそうに記念撮影をしていた。
同店は9月にも市内の別の地区(ロングアイランドシティ)とニュージャージー州に支店を構えるそうだ。別会社だが、日本のくら寿司も、市内(フラッシング)にオープンすることが発表されている。
また6月末には、日本の「カワイイ」がテーマの、ピンク色の回転寿司レーンをカウンターに備えた飲食店「スシデリック(Sushidelic)」も、マンハッタン(ソーホー)にオープンし話題だ。
今後次々に増えていく回るお寿司(厳密には元祖回転寿司に影響を受け、新技術を採用した近未来店)がニューヨークの食文化の1つとして定着していくか、注目したい。
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(Text and photos by Kasumi Abe)無断転載禁止