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高校時代に数学・科学系で表彰歴も。トランプ氏銃撃の20歳の容疑者についてわかっていること

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
狙撃された後、自分の足で演壇を降りSSに守られながら車に乗り込むトランプ氏。(写真:ロイター/アフロ)

容疑者は、事件現場から南に40マイル(約64km)離れた同州ベセルパーク在住のトーマス・マシュー・クルックス(Thomas Matthew Crooks)という20歳の男だった。

クルックス容疑者は現場でシークレットサービス(SS)のスナイパー(狙撃兵)に射殺された。また集会参加者1人が死亡し、2人が重傷を負った。死傷者は全員男性。法執行機関は現場から容疑者が使用したとされるライフル(AR15型)を回収した。AR15型は殺傷力が高い半自動小銃として知られ、過去の銃乱射事件などでも使用されている。

アメリカでは通常ID(身分証明書)を携帯するが、CBSニュースによると容疑者はIDを携帯していなかったため、遺体のDNAを分析し身元を生体認証で確認したという。

容疑者の顔写真も公開されている。ニューヨークポストによると事件当時、銃系の話題を扱う人気のYouTubeチャンネル「デモリションランチ(DemolitionRanch)」のTシャツを着ていたという。

USAトゥデイによると容疑者は2003年9月20日生まれで、ペンシルベニア州の裁判記録と連邦裁判所の記録に、容疑者の犯罪歴は見当たらない。

ピッツバーグから南方へ車で20分強の場所にある緑豊かな郊外、ベセルパークにある自宅は3ベッドルームのレンガ造りで、1998年以来容疑者の両親とされるマシュー・クルックス氏とメアリー・クルックス氏の名義。同メディアが両親に電話したが、一晩中返答はなかったという。

容疑者は、トランプ氏に向け約135メートル離れた製造工場の屋根から複数回発砲したとされる。
容疑者は、トランプ氏に向け約135メートル離れた製造工場の屋根から複数回発砲したとされる。写真:ロイター/アフロ

容疑者は2022年、全校生徒約1300人の地元の公立高校を卒業している。この高校主催で毎年恒例の全米数学・科学イニシアチブ・スター賞(National Math & Science Initiative Star Award)の受賞者として表彰され、500ドルの賞金/奨学金を受け取ったようだ。同年の地元ニュースに掲載されていた。

また、容疑者は2021年1月のバイデン大統領の就任式の日に、リベラル派の政治活動のための資金調達プログラム、ActBlue(アクトブルー、民主党寄りとされている)に15ドルの寄付歴があったという。翌年にはペンシルベニア州アレゲニー郡で有権者登録をしており、「共和党員」として届け出ていた。なぜ共和党の大統領候補者を暗殺しようとしたのか、その理由や事件の動機について慎重に捜査が進められている。

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(Text by Kasumi Abe)無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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