安倍総理の「改憲アドバルーン」の真意を読み解く
フーテン老人世直し録(208)
弥生某日
国会で安倍総理が憲法改正に踏み込む発言を繰り返し注目されている。その真意を巡って見方は様々だが、フーテンは次の選挙での野党共闘を分断したい思惑と、自らの願望を表明して周囲の反応や世論の動向を探る「アドバルーン」と見ている。
これまでの安倍政権は選挙前には決して憲法問題を前面には出さず、経済対策をテーマにしてアベノミクスで票を稼ぎ、大量議席を得てから改憲作業に着手するという手法を繰り返してきた。
2013年の参議院選挙はアベノミクスで勝利し、「ねじれ」が解消されると直ちに麻生副総理が「ナチス的改憲」に言及、年末には集団的自衛権行使の前提として米国から要請されていた「特定秘密保護法」を強行可決した。14年には消費増税延期を争点に解散・総選挙を行い、勝利すると集団的自衛権の行使容認を閣議決定し、15年通常国会で関連法を強行可決した。
経済を訴えて選挙に勝ち、勝てば改憲に手を付ける。安倍政権のやり方は国民の幅広い階層から怒りを買い、それを受けて日本共産党は他の野党との選挙協力に乗り出す方針を表明した。それは自公両党に深刻な危機感を与えている。
なぜなら自民党は2005年の郵政選挙をピークに得票数を減らし続けているからだ。民主党に政権を奪われた09年の総選挙より政権を奪還した12年の総選挙が小選挙区で166万票、比例で218万票減らし、さらに14年の総選挙も得票数は09年を下回っている。
得票数の減少は投票率が戦後最低レベルに下がったためでもあるが、投票率を最も下げているのはかつて自民党が圧倒的に強かった北陸や山陰などの選挙区で、安倍政権誕生以降の選挙にはかつての自民党支持者が自民党に投票しない傾向がみられるのである。
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