STAP細胞の小保方晴子さんから学ぶ「やる気の心理学」:負けず嫌いとおばあちゃんのかっぽう着
■大発見STAP細胞、小保方晴子さん
ユニットリーダー小保方晴子(おぼかたはるこ)さん。30歳。生物学の世界に驚きを与えるSTAP細胞に関する大発見で、世界が注目です。発見自体もちろん素晴らしのですが、この若き女性研究者自身にも注目が集まっています。
早稲田大学からハーバード大学留学。研究ユニットのリーダー。優秀なのは言うまでもありませんが、頭が良いだけでは成功はつかめません。その秘密を、「やる気」の心理学の観点から探ります。
■努力家、がんばり屋、そして人間関係の良さ
やる気は、心の中で思っているだけでは意味がありません。「もっとも努力する研究者」ということから、小保方さんのやる気の高さがわかります。ただし、ただやみくもに活動すれば良いわけではないでしょう。
小保方さんは「頑張り屋」とも言われています。頑張り屋とは、負けず嫌いということでしょう。研究者でもスポーツマンでも、「負けず嫌い」は大切です。
人は成功したり、報酬がもらえれば、やる気(動機づけ)が高まります。失敗したり、罰を受ければ、やる気が下がります。報酬と罰はやる気に大きな影響を与えます。しかし、難しいことにチャレンジするほど、失敗は多くなります。私たちは失敗を恐れます。やる気を失いそうになります。
そのとき、負けず嫌いの頑張り屋は、失敗や罰の意味を変えてしまうのかもしれません。イチロー選手は、4千本安打を達成したとき、誇りに思うのは8千回の悔しさと向き合ってきたことだと語っています。
発明王エジソンは言っています。「わたしは、今までに、一度も失敗をしたことがない。電球が光らないという発見を、今まで二万回したのだ。」
何とも負けず嫌いの発言ですね。失敗ですら、次のチャレンジへのバネにするやる気があるのでしょう。
頑張り屋も負けず嫌いも、悪口ではありません。その人への愛情を感じる呼び名です。小保方さんも、みんなに愛される魅力的な人なのでしょうし、がんばる様子は、応援する人を増やしたのでしょう。彼女自身の真摯な態度と思いやりが、人間関係を良くしたのでしょう。
■泣くこと、そして今日一日がんばろう
行動派で、負けず嫌い。それでも力を失うことはあります。そんなときは、感情を表すことも必要です。泣く事は、ストレス発散です(多くの男性は、弱さを出せないという弱さを持っています)。
それでも、いつまでも泣いてはいられません。悲しさ悔しさに負けず、逆境を乗り越え、やる気を保つために必要なのは、目の前のゴールです。これから先、何十年と苦労しなくてはならないと思うと、気力が下がります。今日一日、明日一日がんばろうと思えることが、やる気を生みます。
小保方晴子さんも、そうして研究を続けてきました。
マラソンランナーも、もう走れないと思うとき、ゴールまでがんばろうではなく、とりあえずあの先のカーブまでがんばろうなどと、目の前の目標を持つそうです。そこまで走れば、また次の目標が見えてきます。
うつ病で自殺を考えている人も、ともかく今日一日は生きていこうと思うことによって、自殺の危機を乗り越えることができます。
■誰も信じてくれない、でも信じてくれる人もいる
形のあるものを作るのであれば、少しずつ完成に近づくのがわかります。でも、研究のように形のないものは、進んでいるのかどうかわかりません。
きっと発見できる、きっと完成できるという強い信念が必要です。やる気が出るためには、努力はきっと報われるという信念が必要なのです。でも、みんなからだめだといわれたら、その信念も揺らぎそうです。
そんなとき、支援してくれた人がいたことは、幸運でした。いえ、小保方さんが「信じてくれる人」という幸運を作り出したとも言えるでしょう。
みんなが信じてくれないとき、自分まで意見がふらついたらだれもついてきません。信じているといっても行動が伴わなければ、やはり応援者はでません(少数派が多数派を動かす「革新」に関する社会心理学の研究成果)。
小保方晴子さんは、信じ続け、行動し続けました。その頑張り屋の彼女の姿を見て(もちろん研究のすばらしさも理解して)、支持者が現れ、小保方さんのやる気と研究活動が続いていったのでしょう。
■遠くの大目標
やる気を持続させるためには、近くの小目標だけではなく、遠くの大目標が必要です。人は、自分の行動に意味を感じることができれば、苦しいときにも、がんばってやる気が出せます。
大きな夢や目標があるからこそ、筋トレに励み、登山の一歩一歩を踏み出すことができます。ケプラーは、「神の作った宇宙にはきっとすばらしい調和があるはずだ」という信念をもって、膨大な天文観察データの分析を続けます。その結果、複雑な地動説ではなく、太陽を中心に惑星が回っている美しい太陽系の姿を描き出します(現代の科学者も、きっと法則性があると信じて大量のデータ分析を行ったりします)。
ノーベル賞を受賞した女性科学者キュリー夫人も、信念を持って、みすばらしい倉庫の中で、毎日毎日実験用小皿を並べ続け、ついに放射性元素を発見しました。
こんなこと、大目標、信念がなければできません。小保方晴子さんは、必ず人の役に立つ技術だ、人の役に立てたいと信じて、データを集め続けました。そして今も、100年先の人類への貢献という大目標を持ち続けています。
■おばあちゃんのかっぽう着:家族の役割
私も最初に映像を見たとき、驚きました。「え? 何を着てるの!?」。その後で、この割ぽう着の由来をニュースで読みました。
内発的動機づけなど、やる気に関する心理学の研究によれば、やる気を出すためには、両親や、家族、先生、上司など、重要な人から受け入れられているという感覚が必要です。
愛され、信頼され、守られていると感じるとき、人はのびのびとしたやる気を発揮するのです。小保方晴子さんは、おばあちゃんや家族、両親から、努力は必ず報われるという教えを受けてきたのでしょう。それは、彼女の信念になっていきます。
でも、努力がいつもすぐに報われるわけではありません。どんなときも、おばあちゃんやご家族は、結果だけを見てがっかりすることなく、愛し続け、支え続けたのでしょう。その愛が、晴子さんのやる気につながります。
すぐに成果が出なくても、「とにかく一日一日、頑張りなさい」。その教えを信じて、やる気を失わなかったその土台には、努力を認めてくれる存在であり、たとえ成果が出なかったとしても愛し受け入れてくれる家族の存在があったことでしょう。
キュリー夫人も家族に支えられてきましたし、子供のころからユニークだったエジソンも両親(特に母親)に支えられてきました。
動機づけ関する心理学の研究によれば、人はみんなやる気を出したいと望んでいます。若き研究者小保方晴子さんの活躍を通して、子供も若者も大人も高齢者も、新しい目標とやる気をつかみたいと思います。そうなれる環境と支援を、両親として教師として上司として、みんなで作っていきましょう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
■補足(20140402)
とても残念なことに、この論文への大きな疑問が出されています。
論文捏造:小保方晴子氏STAP細胞論文から考える科学と私たちが抱える根本的問題
補足(20140409)
小保方晴子氏反論記者会見:論文捏造の真偽は?天才かペテン師か?:Yahoo!ニュース個人「心理学でお散歩」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「8000回の悔しさ」の心理学:あなたもイチローのようになるために:Yahooニュース個人「心理学でお散歩」
運命と努力の心理学:ローカス・オブ・コントロール(統制の所在):Yahooニュース個人「心理学でお散歩」
私たちの人生は運命で決まっているのか、努力はきっと報われのか。