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「5人で体をまさぐり」若い女性狙う北朝鮮の新たな問題

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
北朝鮮の女性(デイリーNK)

北朝鮮第2の都市、咸興(ハムン)では最近、強盗事件が相次いでいる。それも若い女性をターゲットにした強盗が相次いでいるという。

今月15日のことだ。20歳前の若い女性2人が裏通りを歩いていたところ、6人の若い男たちに出くわし、しつこくナンパされた。女性が拒否すると、「家に帰さない」と言われ、1時間あまりにわたって足止めされ、3万北朝鮮ウォン(約300円)の現金の入ったカバンを奪われた。

18日の深夜には、沙浦(サポ)市場の近所にある親戚の家に向かっていた20代女性が、裏通りで5人の若い男に体をまさぐられ、携帯電話を奪われそうになったが、なんとか逃げ出す事件が起きた。

このような事件の話が咸興市民の間で広がり、殺伐とした空気が流れている。人々は、彼らを急に現れるという意味合いで「黒い影」と呼んでいる。強盗に加えて性暴力のリスクもあることから、若い女性やその親にとっては恐怖そのものだ。

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「金持ちの親たちは、娘が単に強盗の被害に遭うだけでなく、強姦されるかも知れないと心配している」(情報筋)

黒い影の正体は10代、20代の若者で、学校や職場に行っておらず、群れて行動するチンピラだ。咸興市安全部(警察署)は通報を受けても一向に動こうとしないため、不安心理がさらに広がっている。

情報筋は、若者が強盗に走る原因について、食糧難と経済難、そして政府の無策を挙げた。

(参考記事:美女2人は「ある物」を盗み公開処刑でズタズタにされた

「食べるものが充分になく家を飛び出した若者が集団化して、このような犯罪を犯している。犯罪者を処罰するのも重要だが、これは個人の問題ではなく、食糧難という現実が生み出した社会問題であるため、根本的な対策が必要だ」

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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