ノルウェー総選挙 右派勝利で首相再選か、現地より写真レポート
11日に国政選挙を迎えたノルウェー。現地時間21時から開票された各地の投票用紙は95%が集計済み。
アーナ・ソールバルグ首相が率いる中道右派政権4党が89議席、野党で中道左派陣営5党が80議席を記録。
ソールバルグ首相は勝利宣言をした。
今選挙では、複数の小政党が4%という「しきい値」を超えるかどうかが焦点となった。小政党の乱立で国会が混乱することを防ぐために、4%を超えることができなければ、議席数を大きく増やすことができない。
連立・閣外協力する小政党が4%を超えない限りは、大政党は国会で大多数を維持することが難しい。
ベルゲンでは開票が大幅に遅れているため、全ての票が集計されるまでは、安心できない状態だ。
どちらの陣営が勝利するか予測が難しかったため、現地では「ぞっとするような夜」と例えられた。
各地の票数が発表される度に、ハラハラと数字を見つめる3時間が続いた。
開票日の夜はどの政党を訪問するか迷ったのだが、直感で首相の保守党を選んだ。もし、事前投票結果が発表された時に、労働党が勝利しそうであれば、すぐに会場を移動しようと計画。右派陣営が健闘しそうだったので、保守党で開票結果を取材し続けた。
保守党は減税、労働党は増税政策を唱えたが、人によって、選挙の重要ポイントは異なっていた。今回の結果を簡単にまとめる。
最大規模の政党「労働党」が歴史的な大敗
4年前の国政選挙と比較して、労働党の支持率は現時点で27.4%と、3.4%も大幅に下落。直前の世論調査も不調だった。「最大の敗者」となった。
党は、「選挙運動や、国民への政策の伝え方をミスした」と指摘されている。ストーレ党首は辞任するべきではないかと問うノルウェー人記者もいる。
右派・左派ポピュリスト政党が好調
「極右・右派ポピュリスト政党」とされる与党・進歩党は15.3%で1.1%と小さな下落。減税政策や厳しい移民政策が支持されたことになる。
一部から絶賛されている、物議を醸すリストハウグ移民大臣効果もあったようだ。
「実は左派ポピュリスト?」と指摘が強まった野党・中央党は10.3%。4.8%と最も支持を伸ばし、「最大の勝者」となった。
石油開発の縮小を唱える緑の環境党が健闘せず
どうなるか予測がつかないとされていたのが石油開発の縮小を絶対条件とした緑の環境党。世論調査では4%を超えそうだったが、3%台と伸び悩んだ。
首相を支える2つの小政党
保守党と進歩党だけでは過半数は維持できない。小政党であるキリスト教民主党と自由党の2党の閣外協力が必要となる。この2党が4%を超えることができなければ、政権維持はほぼ不可能。現時点の開票結果では両政党はぎりぎり4%を超えている。
しかし、気候変動対策に消極的で、移民や難民に対して物議を醸す言動が目立つ進歩党と、これら2党は相性が悪い。
4党がどう協力しあっていくかはこれからの話し合いで決まるが、キリスト教民主党は、進歩党がいる政権の手助けをすることを拒否している。
4党をまとめる「母親役」の首相が、これから交渉のテーブルで家族をどうまとめていくかで政権続投が左右される。
社会主義政党が支持を伸ばす
格差問題の改善や気候変動対策に積極的な左派社会党が、6%と支持率を1.9%伸ばす。
極左政党とされ、教育現場や老人ホームなどの民営化、金持ちが利益を得ることを極端に嫌がる赤党も、支持を伸ばし、国会議員が1人誕生することに。
両党とも与党とはなれなさそうだが、共に民営化を嫌い、経済格差の改善を目指しており、「社会主義」政党たちが健闘した。
首相は4党からなる中道右派政権をまとめきれるか
今選挙は右派・左派ともに小政党が結果を左右するという、ハラハラさせられ状況となった。
開票率はまだ95%。小政党が4%を確実に超えるかどうか、議席数は最終確定していない。
中道右派側の勝利とはなりそうだが、4党がどのように協力体制をとるかは、これからの話し合いで決まる。
Photo&Text: Asaki Abumi