Yahoo!ニュース

台風15号 洪水で溺れないために 注意すべき点を緊急にまとめました

斎藤秀俊水難学者/工学者 長岡技術科学大学大学院教授
台風の大雨による急な増水・河川の決壊に注意(写真:ロイター/アフロ)

 台風15号の大雨が関東地方を中心に観測され始めて、関東南部では大雨警報や洪水警報が発令されています。日付が変わるころから明け方にかけて大雨による洪水に警戒しなければなりません。洪水で溺れないように、次の点を注意しましょう。

田畑の様子を見に行かない

 用水路や排水路の水の流れ、収穫間近の稲の様子、様々な心配事があるかもしれません。でも、今夜は絶対に見にいかないように。夜の暗がりで足元がよく見えない中、田畑の冠水が始まっていると、道路から一段下がっている田畑の水深が深くなっていても気が付きません。そこに足を踏み入れ、いっきに沈水してしまうことも。溺水トラップのうちの田畑トラップです。毎回の台風や集中豪雨で犠牲者が発生しています。

道路が冠水したら、外に避難しない

 道路には、ふたのあいたマンホール、側溝があります。こういったところは冠水しているとその存在に全く気が付きません。しかも大雨の中、そして夜間であるとさらにわからなくなります。そういったマンホールトラップや側溝トラップも溺水トラップとなります。過去に台風のさなかの避難中にこのようなトラップに落ちて命を失っている人が多くいます。

参考  危険!冠水時の避難 溺水トラップが事故を招きます 

避難途中に水がきたら

 避難を始めたときには全く冠水していなかったのに、付近の河川の堤防が決壊したとなると、その周辺は30分もたたずに冠水します。そのとき大量の水が押し寄せてくるわけで、流れを伴っています。流れを伴う洪水は大変危険です。人は膝をこえる水深で流されてしまいます。また、車も同様で、流れが秒速1 mを超えて、水深50 cmを超えると流され始めます。従って、徒歩でも車でも水深50 cmを超える流れが来襲してきたら、すぐに高台や屋内の2階以上に避難しなければなりません。

参考  流れのある洪水 歩いて避難できるか? その判断基準は 

部屋閉じ込め

 押して開くタイプのドアは水深が50 cmを超えると人力で押しても開かなくなります。つまり閉じ込められます。どうやっても外には出られないので、その建物の2階以上に避難します。寝ている時に急に浸水した場合、1階の部屋に閉じ込められないように、心配であれば2階以上で睡眠をとるようにします。

あなたの命を最後に守るのは、浮力体です

 いずれにしても、今晩は様々な方法により緊急情報を入手して、すぐに命を守る行動に移れるようにしてください。寝ている時の警報であれば、目が覚めるまでの時間的遅れも考慮して、どうしたらよいかわからなかったら、屋内の2階以上への垂直避難を選択します。

 ダウンジャケットは、ライフジャケット並みの浮力を持ちます。水位がどんどんあがってきたら、ダウンジャケット着用、浮いているカバンなどをしっかり抱えるなど、浮力を得てください。そして水面に浮いて生還のチャンスを得てください。

水難学者/工学者 長岡技術科学大学大学院教授

ういてまて。救助技術がどんなに優れていても、要救助者が浮いて呼吸を確保できなければ水難からの生還は難しい。要救助側の命を守る考え方が「ういてまて」です。浮き輪を使おうが救命胴衣を着装してようが単純な背浮きであろうが、浮いて呼吸を確保し救助を待てた人が水難事故から生還できます。水難学者であると同時に工学者(材料工学)です。水難事故・偽装事件の解析実績多数。風呂から海まで水や雪氷にまつわる事故・事件、津波大雨災害、船舶事故、工学的要素があればなおさらのこのような話題を実験・現場第一主義に徹し提供していきます。オーサー大賞2021受賞。講演会・取材承ります。連絡先 jimu@uitemate.jp

斎藤秀俊の最近の記事