すでに就活していない学生が多数!「就職内定率7割」突破で過去8年の最高値を記録
年々早期化を続けていた新卒採用だが、マイナビが調査した2019年6月15日時点の大学生・大学院生の内々定率は72.0%で、これは前月比で見ると10.2pt増。前年同時期比で見ても内定率は上昇した。
学生の属性別に見ると「理系女子」の就職内定率は高まっているという。
リクルートキャリアの就職みらい研究所の調査(6月1日時点)でも、2019卒→2020卒の同時期で見て就職内定率は2%ほど上昇している。リクルートキャリアが同調査を行ってきた過去8年間の中で、2020卒の内定取得率は過去最高値となっている。
内定率の伸び率こそ鈍化しているものの、注目したいのは内定率の上昇以上に「学生の活動量」が減っているということだ。
リクルートの調査の中で「5月に就活生が何をしていたか」という調査項目があるのだが、注目したいのは、「就職に関する情報収集をした」という学生が2019卒生では61.8%だったところ、2020卒生ではなんと43.0%まで低下した。
つまり、半数以上の学生は「もう情報収集は十分」と5月時点で判断していたという事だ。今受けている企業が落ちた時に保険で受ける企業を探すというような動きも少なくなったという事だろう。
筆者の肌感覚としては、ゴールデンウィークの休みに入った段階ですでにその傾向は出ていたように思われる。2019卒の学生はゴールデンウィーク中にも「5月中に就活を終えるために対策しよう」と動いていたのに対し2020卒ではそのような動きや危機感が希薄であったようだ。
「内定を取ったが、納得が行かないから就活している」という学生も以前より減ってきている。「内定取得者」の就職活動実施率が2019卒では6月1日時点で54.3 %であったのに対し、2020卒では大幅に減少して42.3 %となった。
なぜこのような結果になったのか?
これを2つの観点から説明したい。
【インターンは「意思決定の早期化」も促進している】
こうした傾向が出てきているのは、インターン経由の内定が増えている事も一因であると考えられる。インターンに参加した学生は内定を取った時点でその企業の雰囲気をある程度理解することができており、ある程度納得した上で内定を受けている。
そもそもインターンに参加する学生が年々増えている事は他の記事でも言及している通りだが、そういった意味では「インターン経由の選考で採用の確度を高めよう」という企業の狙いはある程度達成できていると見て良いだろう。
マイナビの調査によると、2020年卒学生のインターンシップ参加率は79.9%となっており、逆に言えばインターンに参加していない学生は就活生全体の2割だという事になる。
なお、インターン参加者とインターン未参加者とを比較すると、両者の内定取得率は4月時点で2倍程度の開きがあった。
企業を理解し、納得してスパッと就活を止める…そんな学生がインターンによって増加しているのだ。
「インターンは採用選考や内定の時期を早期化している」とも指摘されることが多いが、それだけではなく「学生の意思決定」も早期化させるために一役買っているということだ。
【大手企業が内定出しを前倒し】
もう1つの観点だが、「大手企業の動き方が変わった」という事も挙げられる。
2019卒採用以前の時点で、「10月1日以降に内定」という経団連ルールはすでに形骸化していたが、昨年の経団連の発表により、この流れはより決定的なものとなった。
経団連の中西会長による「経団連が採用日程を采配すること自体に極めて違和感がある」という発言は大きな波紋を投げかけ、「就活ルールはすでに形骸化した」という認識を改めて採用市場の関係者に植え付けたのだ。
結果として2019卒採用時に比べて、2020卒採用においては「内定を前倒し」する大手企業が散見されたのだ。経団連は「現行ルールは2020卒採用まで」と宣言したものの、「すでに完全に形骸化した」と判断し、行動に移した人事担当者も多い。
外資系企業やベンチャー企業ばかりではなく、日系大手企業でもインターンに参加した学生に早期内定を出していたという報告をチラホラと聞いている。
今や早期内定が出ているのはITなどの若い業界ばかりではなく、金融や不動産、メーカーやインフラなどのお硬い業界でもインターンやリクルーターを介した早期内定事例がある。
こうなってくると、例年なら「大手企業の選考を待ってから就活を終える」予定だった学生が予定していた本選考を前に活動する必要がなくなる。結果として就活終了も前倒しされたということだ。
【2021卒は更にインターン経由の採用が増える?】
内定辞退に悩む企業が「2020卒の夏採用」にあくせくしている中、早期採用に力を入れている企業はすでに2021卒向けのインターンを開始している。中には、2020夏採用と2021インターンを並行して実施する企業も含まれる。
来年はいよいよ東京オリンピックが夏にあり、「オリンピック開催中はまともに就活ができないのでは」と考えている学生も多い。インターン経由での採用はより活発になるだろう。