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タリーズ女性店員に迷惑取材で炎上からの記事削除と謝罪! 3つの問題点と事案が起きる理由

東龍グルメジャーナリスト
(写真:イメージマート)

飲食店の記事

飲食店の記事は日々たくさん配信されています。

世界で最先端のガストロノミーから日本国内の場末の居酒屋が取り上げられ、コースの全メニューが丁寧に紹介されたり、テーマ別にオススメ店がまとめられたりと、様々な記事が誕生しています。

どういった飲食店がオープンしたのか、どのような飲食店が流行しているのかと、飲食店の記事は消費者に興味をもって読まれ、消費されているのです。

最近物議を醸した記事

数多の記事が配信されている中で、最近物議を醸しているのが、ロケットニュース24の記事。該当記事は既に削除されており、お詫び文も掲載されています。

当社メディアにおける不適切な記事についてのお詫び/ロケットニュース24

J-CASTニュースやねとらぼが事案の詳細を記事にして、多くの人が知ることとなりました。

タリーズ店員に直撃し「心が折れた」 ロケットニュース記事に「迷惑行為」批判...運営が謝罪・削除/J-CAST ニュース

タリーズ女性店員に男性記者が執拗に取材で批判 ロケットニュース編集部「不適切だった」と認めて記事削除/ねとらぼ

記事を削除

問題になったのは、2023年7月7日に配信された「【ガチゆえに】タリーズの店員さんに『自腹で飲むくらいオススメのドリンク』を聞いたらスタバと対応が違い過ぎて心が折れた」という記事。飲食店のスタッフに、自分でオーダーするおすすめ商品を尋ね、それを試してみるという連載です。

編集部の記者がタリーズコーヒーに訪れ、「自分が飲んでいるドリンクを3つ」と訊いたところ、スタッフが戸惑いながら「私はドリンク飲まないので」と期間限定メニューを回答。記事では「そんなことありまっか?」「心が折れた」「少なくとも私の中でタリーズの印象は良くはならなかった」と、揶揄するような表現が踊ります。

記事が配信されたところ、批判が相次ぎ、削除と公式謝罪に至ったという次第です。

飲食店の取材

記事での表現だけではなく、取材手法に対しても苦言が呈されていますが、通常の飲食店の取材はどのようになっているのでしょうか。

私は、テレビや記事で飲食店を取材してきましたが、通常は以下のようになっています。

テレビであればディレクターが、紙やウェブでの記事であれば編集者やライターが企画を立て、飲食店に企画内容を伝えて取材依頼します。飲食店に承諾してもらえれば、具体的な取材の日時を決め、内容を詰めるという流れ。

テレビであればディレクター、カメラマン、音声、出演者とそのお付きの方が、記事であれば編集者、ライター、カメラマンが訪れて取材します。

取材時間は、飲食店が時間に余裕のある時間帯で、ランチ前の朝、ランチとディナーの間のアイドルタイム、ディナー後の遅い夜。企画内容や飲食店の希望によっては、営業時間中となることもあります。

広報が対応

法人化しているような飲食店であれば、専任ではないにしても、基本的に広報という役割の方はいるはずです。広報がいないようなら、主に飲食店のマネージャーや店主が取材対応にあたります。

広報はメディアからの取材依頼があれば、まずその可否を検討。取材を受けるのであれば、取材者と内容を相談し、何をどのように提供するか、どのスタッフに登場してもらうかを考え、事前に調整しておきます。取材時には最初から最後まで立ち会い、取材がスムーズに進行するように差配し、営業に支障がでないようにするものです。

取材者と被取材者がしっかりコミュニケーションをとって互いを理解し、その上で、飲食店はできるだけ自分たちの魅力が伝わるように尽くし、メディアはできるだけよいコンテンツを制作しようと努めます。

突撃取材

件の取材は、いわゆるアポイントメントなしの突撃取材。この手法には、大別して3つの問題があります。

まず、取材内容がわからないこと、および、取材だとわからないこと。飲食店は、取材依頼を受けていないので、当然のことながら、どういった企画なのかを知らず、事前の調整や周知もできません。スタッフは取材だということがわかっておらず、通常の客と思って対応するだけに、余計に戸惑うでしょう。オペレーションの妨げになるので、営業妨害といってよいかもしれません。

次は、取材を拒否できないこと。そもそも事前に取材依頼が打診されていないので、取材の可否を決められません。本来であれば断っていた内容であったとしても、突撃取材によって無理やり取材されてしまいます。その結果、不本意な形で紹介されることになり、飲食店にとってプラスにならない可能性が高いです。

最後は広報がいないこと。通常、取材であれば、広報もしくは広報に相当する方がいます。しかし、いきなり取材に訪れているので、広報は現場にいません。取材をスムーズに進めることは難しく、応対するスタッフもどのように対応してよいかわからず、困惑します。

最初からコミュニケーションがとれていない状況なので、取材後のやりとりも、できるかどうか不明です。テレビではもともと放送される映像を確認できませんが、記事であったとしても内容を確認できない恐れがあります。

客にも迷惑

飲食店だけではなく、客にも迷惑がかかります。

オペレーションが妨げられることによって、他の客に対するサービスが滞ったりしてしまうのです。件の記事であれば、不必要な問いかけをすることによって、オペレーションの時間を長引かせています。

店の雰囲気は客がつくるものなので、不自然なやりとりをしているおかしい客がいれば、雰囲気も悪くなり、飲食店の心象に悪い影響を及ぼしてしまうでしょう。

飲食店と客の犠牲のもと、自分たちのコンテンツを制作してお金を稼ぐのは、健全であるとはとても思えません。

取材対象者を大切にする

メディアはコンテンツを制作することによって売上を立て、収益を上げています。コンテンツを創るために協力してくれる取材対象者を蔑ろにすることがあってはなりません。

取材対象者は飲食店のコンテンツでは飲食店のことであり、件の記事ではタリーズコーヒーのことです。そして、取材対象者を大切にすると共に、取材対象者が大切にするものも大切にしなければなりません。取材対象者が大切にするものとは、飲食店であれば客のことです。

尊重し合う

カスハラ=カスタマーハラスメントは、客という優位な立場から理不尽な要求や言動を突きつけることですが、件の取材もスタッフを故意に困らせたということでカスハラに分類されるでしょう。

飲食店の取材において、取材者と被取材者は対等な関係であり、尊重し合うことが重要です。取材する側が取材される側をコンテンツの一部だけとしか思っていなければ、今回のような事件が起こってしまうでしょう。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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