なぜ「給料が安い」とばかり言う社員は騙されやすいのか?
「給料が安いなァ……」
世の中は賃上げ、賃上げと言っているが、当社はまったく賃上げする気配がない。こんな給料の安い会社では働きたくない。転職しようかな――?
今の時代、こんな風に思っている人が多いのではないか。給料の話題は、多くの人にとって切実な問題だ。
ただ「給料が安い」というフレーズは、あまりお勧めしない。思わぬ落とし穴があるからだ。単に「給料が安い」と言うだけの人は、実は自分の状況を正確に把握できておらず、結果的に騙されやすい傾向がある。
それは、なぜか?
今回は「給料が安い」というフレーズの問題点や、そういう表現をしていると、どうして騙されやすくなるのかを徹底解説する。新入社員や、これから就職を考える学生、家計を管理する主婦の方々にも参考になる内容だ。ぜひ最後まで読んでもらいたい。
■なぜ比較形容詞はダメなのか?
「給料が安い」の「安い」は比較形容詞だ。「安い」「高い」「強い」「弱い」といった言葉は、具体性に欠ける曖昧な表現。たとえば「営業力が弱いので強くしてほしい」と言われても、どの程度弱いのかがわからないし、どこまでいったら強くなるのかもハッキリしない。同じように給料が「安い」と言っても、どれくらい安いのかが不明確だ。
フルマラソンは、42.195kmというゴールまでの明確な距離がある。だからこそ、そこに到達するための戦略を立てられるのである。
給料についても同じことが言える。「安い」と言うだけでは、どの程度の給料なら満足なのかがわからない。結果として具体的な行動計画を立てることができないし、上司もどう支援したらいいかが分からない。問題解決の糸口が見つからないのである。
■騙されるからくり
「給料が安い」「営業力が弱い」「生産性が低い」と言う人が騙されやすい理由は、この曖昧さにある。具体的なあるべき姿、目標がないため、
「前より良くなればいい」
が判断基準になってしまう。
商品の価格交渉でたとえると分かりやすいだろう。いつも「もっと安くして」とばかり言うお客様は、とても騙されやすい。極端な話を書いてみよう。たとえば
「この業務システムは1200万円です。この見積額は絶対に下げられません」
と営業に言われ、
「そこを何とか!」
「少しでもいいから安くして」
と粘り、1100万円まで値切ったとしよう。おそらくこのお客様はご満悦のはずだ。なぜなら最初に提示された見積額より100万円も安くなったからだ。
しかし、もしも本来の見積額が1200万円ではなく、1000万円だったとしたら――?
明確な基準を言わず、前よりもよくなれば「〇」という判断をするから、巧みな交渉術の前では負けてしまう。
給料についても同じ。「安い」と言うだけでは、うまく交渉されてしまう。最初から安い賃金で働かせ、「安い」と言われたら給料を上げればいいのだ。給料が「今よりも」上がればいいと思っているのなら、意のままに操られるだろう。
■本来はどう言うべきか?
では、どのように考え、行動すべきか。もちろん、具体的な目標を設定することである。たとえば「年収を500万円にしたい」という明確な基準があれば、現在が、
(1)300万円
(2)400万円
(3)500万円
(4)600万円
のケースそれぞれで判断が変わる。もし300万円だったら、200万円の開きがある。おそらく「給料が安い」と言い続けても、なかなか目標は達成しないだろう。転職を本気で考えたほうがいいかもしれない。
現在が400万円なら、目標を目指しやすい。上司と相談して、どうしたらギャップを埋めることができるか考えたらいい。もし現在500万円の年収があるなら「安い」と思わなくて済む。給料に満足しているのだから、もっと別のことを考えればいい。やりがいのある仕事とか、もっと興味のある仕事ができるようにするとか、である。
もし600万円も年収があるなら、かなり余裕がある。貯金や投資をしてもいい。後輩や部下を食事に誘ってもいい。その余裕に感謝しながら仕事ができる。
大事なことは目標、基準をしっかり決めることだ。そうしないと騙されることも多いし、たとえ騙されなくても、もっと欲しい、もっと欲しい、という気持ちに支配されていく。いつまで経っても満足できないのだ。
私の知人で「もっと痩せたい。もっと痩せたい」と言っている女性がいた。その女性はどんなにスリムなボディを手に入れても満足しなかった。このような思考になってしまっては残念だ。
給料に限らず、人生の様々な場面で目標設定は重要だ。仕事のみならず、日常生活の中でも一緒。自分の目標を数字で表現し、それに向かって努力する習慣を身につけてほしい。そうすることで、単に「給料が安い」と言うだけの人とは違う、充実した人生を送ることができるはずだ。
<参考記事>