Yahoo!ニュース

国連UNCTAD、ウクライナ侵攻後の途上国への影響と食料と政情不安の関係等についての緊急評価書発表

松平尚也農業ジャーナリスト、龍谷大学兼任講師、AMネット代表理事。
(写真:ロイター/アフロ)

 UNCTAD(国連貿易開発会議)は、3月16日に緊急アセスメント(評価書) “THE IMPACT ON TRADE AND DEVELOPMENTOF THE WAR IN UKRAINE(ウクライナの戦争が貿易と開発に与える影響)”を発表した。同評価書では、ウクライナ侵攻後の食料の国際価格高騰が後発開発途上国に与える影響や農産物価格と政情不安の関係等について分析され、さらに食料、燃料、肥料の価格上昇に支えられ、世界経済の見通しが急速に悪化していることが確認されたと結論づけられている。

 UNCTADのレベッカ・グリンスパン事務局長は声明で、「ウクライナでの戦争は人的被害という大きな犠牲を伴い、世界経済に衝撃を与えている」と述べ、「これらのショックはすべて、COVID-19(新型コロナ)の大流行からの回復に向けた成果を脅かし、持続可能な開発への道を阻むものだ」と指摘している。

 同事務局長はさらに「ウクライナとロシアは、ヒマワリ油と種子の世界貿易の53%、小麦の27%を占める、農業食品市場のグローバルプレーヤーである」「食料と燃料の価格高騰は、途上国の最も弱い立場にある人々に影響を与え、所得のうち最も高い割合を食料に費やす最貧困の家庭を圧迫し、苦難と飢餓をもたらす」と警告している。

 評価書ではCOVID-19の大流行による世界経済と途上国の脆弱な状況を考えると、内乱、食料不足、インフレによる不況のリスクは無視できない、と報告されている。記事では、その内容における食料・農業に関するポイントを紹介する。

 

 後発開発途上国の食料に多大な影響を与える可能性

 ウクライナ侵攻による食料の国際価格高騰で国連が懸念するのは、国連に認定された特に開発の遅れた国々とされる後発開発途上国(Least Developed Country: 以下、LDC)への影響だ。国連はLDCとして46か国を認定(2021年8月)しているが、その数はアフリカ地域が33カ国と集中しているのが現状だ。

 図 アフリカとLDC諸国のロシア・ウクライナ小麦への依存率

(UNCTAD2022、5頁)

この記事は有料です。
農業ジャーナリストが耕す「持続可能な食と農」の未来のバックナンバーをお申し込みください。

農業ジャーナリスト、龍谷大学兼任講師、AMネット代表理事。

農・食・地域の未来を視点に情報発信する農業ジャーナリスト。龍谷大学兼任講師。京都大学農学研究科に在籍し国内外の農業や食料について研究。農場「耕し歌ふぁーむ」では地域の風土に育まれてきた伝統野菜の宅配を行ってきた。ヤフーニュースでは、農業経験から農や食について語る。NPO法人AMネットではグローバルな農業問題や市民社会論について分析する。有料記事「農家ジャーナリストが耕す「持続可能な食と農」の未来」配信中。メディア出演歴「正義のミカタ」「めざましテレビ」等。記事等に関する連絡先:kurodaira1974@gmail.com(お急ぎの方は連絡先をご教示くだされば返信します)。

松平尚也の最近の記事