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コメ価格上昇のワケ:4割の水田を休ませている国でなぜ米の品薄や価格上昇が起きるの? #専門家のまとめ

松平尚也農業ジャーナリスト、龍谷大学兼任講師、AMネット代表理事。
(写真:イメージマート)

 コメ価格の上昇がメディアで話題です。コメの品薄は解消されつつありますが価格が高止まりしており、消費者は困惑しています。一方でコメ農家はコスト高と低米価で生産が継続できない状況が続いていると言われます。
 日本の水田は、約4割を休ませて生産を抑制している状況です。その背景にはコメ消費が戦後減少してきた食卓の現実があります。まとめ記事では令和の米騒動の課題を、最近のコメに関するニュースを読み解きながら解説します。

ココがポイント

円安による食料品の値上がりで(中略)小麦が大幅に値上がり。パスタなど麺類やパンが(中略)値上がりし、(中略)消費が減り続けていたコメに消費者が回帰した。
出典:大阪日日新聞 2024/9/20(金)

長年にわたるコメ減らし政策が続けられ、かつ、流通までもが規制されるという歪んだ政策により、生産現場が衰退している。
出典:Wedge 2024/9/19(木)

茶わん1杯(中略)当たりの値段を算出すると、約40円となる。カップ麺が1個約200円、(中略)、ペットボトル飲料が1本(中略)150円などとなる中、「米は値頃な良い食材」
出典:日本農業新聞 2024/9/13(金)

エキスパートの補足・見解

 コメの品薄と価格高騰の原因は、その需給を市場に任せている点、そして備蓄米の運用に柔軟性がないという点にある。このままではさらなる市場化や輸出による増産論そして政府と農協批判論が拡大し需給や価格の混乱が深刻化する可能性がある。令和コメ騒動を今後の教訓にするためには、主食のコメが安定供給できるよう政策を修正していく必要がある。具体的な改善策としては、コメ価格高騰が起きた際に備蓄米が柔軟に運用できるようにすること、コメ市場の安定性を確保しつつ備蓄米放出ができるような体制を整備することなどが上げられる。現状のままでは来年以降も同様の混乱が起きる可能性がある。農水省は、10月の関連会議で現状の深刻さを受け止め改善策を示すべきである。そこでは、コメ政策を食料安全保障の根幹に据える必要性について集中的に議論すべきと言えるだろう。

農業ジャーナリスト、龍谷大学兼任講師、AMネット代表理事。

農・食・地域の未来を視点に情報発信する農業ジャーナリスト。龍谷大学兼任講師。京都大学農学研究科に在籍し国内外の農業や食料について研究。農場「耕し歌ふぁーむ」では地域の風土に育まれてきた伝統野菜の宅配を行ってきた。ヤフーニュースでは、農業経験から農や食について語る。NPO法人AMネットではグローバルな農業問題や市民社会論について分析する。有料記事「農家ジャーナリストが耕す「持続可能な食と農」の未来」配信中。メディア出演歴「正義のミカタ」「めざましテレビ」等。記事等に関する連絡先:kurodaira1974@gmail.com(お急ぎの方は連絡先をご教示くだされば返信します)。

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