無能な政治家に対し官僚は資料を隠し持ち「自爆テロ」を窺う
フーテン老人世直し録(363)
卯月某日
「不存在」とされてきた陸上自衛隊のイラク派遣の日報が今頃になって「発見」されてから初めて安倍総理の出席する国会審議が参議院決算委員会で行われた。
「森友疑惑」を巡る財務省の公文書改ざんと言い、防衛省による海外に派遣された自衛隊の日報の隠蔽と言い、日本の統治機構を巡る一大スキャンダルなのだが、参議院決算委員会の審議からはそうした危機感があまり感じられなかった。
与党議員の質問はすべてを官僚のせいにして政治への責任追及をかわそうとする狙いがありありで、一方の野党の質問は安倍総理の退陣を迫ることに終始し、なぜこのような事態に至ったかの追及に欠けるきらいがあった。
そして安倍総理は「膿を出し切る」、「極めて遺憾」、「行政府の長として国民にお詫び申し上げる」を連発するのみで、何が「膿」なのか、統治機構の中で何が起きているのか、自らの責任をどう考えているのか全く分からない。
むしろフーテンの目に付いたのは与党と財務省、防衛省の連係プレイが密なることであった。自民党の西田昌司参議院議員は財務省に「馬鹿か」と怒ってみせ、それに対し財務省の太田理財局長は頭を下げ、財務省が森友学園側に「口裏合わせ」を依頼していた事実を認める。この日のニュース・ポイントの第一は自民党と財務省のやりとりから出てきた。
次に公明党の若松謙維参議院議員の質問に対し、小野寺防衛大臣が「新たに報告させていただく、先ほど南スーダンPKOの日報が確認されたと事務方から第一報が入った」と答弁し、それが二つ目のニュース・ポイントになる。自民党と公明党にニュース・ポイントを振り分けるあたりまるで田舎芝居だと思った。
このように財務省、防衛省と与党との連携プレイを見せつけられると、14年前のイラク派遣の日報が今頃になって突然「発見」されたことも田舎芝居の一つではないかという気がしてくる。追い詰められた安倍政権が攻撃の矛先を変えるため「何でもあり」の世界に入ったのである。
誰に攻撃の矛先を変えるかと言えば、イラクに自衛隊を送り込んだ小泉元総理に対してである。イラク派遣の日報が「発見」されたというニュースが流れた時、テレビ各局は小泉総理が「自衛隊の行くところが非戦闘地域だ」と国会で答弁する姿を放送した。
イラク派遣の日報は「発見」されただけでまだ内容は「公開」されていない。それが「公開」されることになれば「自衛隊の行ったところは本当に非戦闘地域だったのか」に注目が集まる。そして今更ながら「自衛隊のイラク派遣」の検証が行われることになる。
安倍政権下で問題となった「南スーダンPKOの日報」を探すうちに「イラク派遣の日報」が見つかったというのはいかにも意図的な感じがする。誰がどのような意図で行ったかは判然としないが、しかし意図がなければ出てこなくても良いものが出てくるはずはない。
前回のブログでフーテンは第一次安倍政権を終わらせた要因の一つに「消えた年金記録」があり、それは安倍政権の進める「霞が関改革」に反発する官僚の中からリークされた官僚による「自爆テロ」との見方があることを紹介した。
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